3月12日午後、いわき市文化センターで「福島原発事故12年 拡散する放射性廃棄物のゆくえと私たちの未来」が開かれ、会場とオンラインで約150名が参加しました。
集会は、福島原発事故から12年となり、いまだに政府の原子力緊急事態宣言は解除されず、廃炉の最終形態も法的に定義されず、困難な事故収束作業が続く中、タンク貯蔵汚染水=液体放射性廃棄物の海洋放出も重大な局面に入り、市民が事故処理と廃炉の現在を検証して、放射性廃棄物と汚染水をどうするのか、市民にとってのより良い未来を考え、集会アピールを参加者で確認しました。
集会は、まず犠牲者追悼の黙祷を行い、主催者から「事故処理から廃炉の課題、わたしたちはどう生きるか」との挨拶がありました。
第一部は、3人が「12年目の報告」として、現状を報告しました。
1「廃炉の現状をどう見るかー汚染水、放射性廃棄物」石丸小四郎 (双葉地方原発反対同盟)さん
第一原発が抱える問題点(リスクマップ)として、「3.11短周期地震動、津波、水素爆発、炉心溶融は原子炉建屋に激しく作用。更に2021年2月M7.3震度6強、2022年5月M6.0震度5弱も深い影を落としている」「建ててから52年の経年劣化、浜風、塩害、錆、腐食が重なり建屋に入ることさえ困難な実態にある」「第一原発の敷地は軟弱地盤・液状化・地すべりの危険性。原発を『破砕帯地すべり地』に建てたからである」「原子炉圧力容器を支えるペデスタルとそれを支えるスタビライザ熱膨張、1,500トンの燃料プール、建屋など崩壊の可能性」「敷地内には天文学的数値の放射性廃棄物の山・山・山」「汚染水問題は新たな問題に入った。・規制庁は昨年9月に「ALPSスラリー安定化処理設備に関する問題点」を発出し「HIC保管量のひっ迫」など4項目を提出。・ALPSの前処理段階で発生するストロンチウム90などドロドロの放射性廃棄物をHICに納入出来ず、海洋放出の絶対条件である「二次処理」が出来なくなる可能性。・そうなれば「海洋放出」は出来ない。・この問題は第一原発の今後を大きく左右する可能性」「地震・津波・地すべりが襲えば福島のみならず日本全体に禍根をもたらすであろう。廃炉など「夢のまた夢..」幻想に過ぎない」と報告。
2「拡散する放射性廃棄物をどうするか」和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)さん
「原発事故後始末における惨事便乗型ビジネス」に「仮設焼却炉は原発メーカー・ゼネコン、汚染土などゼネコン、家屋廃材・間伐材などバイオマス発電事業者、災害廃棄物ーコンクリ・金属など不燃物系ー地元産廃業者など、放射性物質汚染廃棄物処理の実態」があり、「仮設焼却炉発注金額は2012~2022年度 計1兆6千億円超」、「原発メーカーとゼネコンが受注し何重にも利益を上げる参事便乗型ビジネス」である。
中間貯蔵施設については、「中間貯蔵施設、途方もない量の汚染土を再利用?」「『ありえない』ことがゴリ推しされるのはなぜか?」「汚染土は『宝の山』である」として「中間貯蔵施設 受入・分別施設 + 土壌貯蔵施設(8工区)合計6,709億円 すべてゼネコンが受注」。また「汚染土再利用ゴリ押しの理由付け」として「中間貯蔵施設受け入れに対する総額3010億円の地域振興策」があり、内訳は「中間貯蔵施設交付金」(新規) 1,500億円⇒県、大熊町、双葉町、「原子力災害福島復興交付金」(新規) 1,000億円⇒県全域、「電源立地地域対策交付金」(既存) 510億円増額(毎年67億円程度+年17億円30年間増額、計2,520億円)⇒浜通り電源立地市町村など、と報道されていると説明。
3「ふえつづける放射性廃棄物、原発回帰でいいのか」澤井正子(元原子力資料情報室・核燃料サイクル担当)さん
高レベル放射性廃棄物について、「日本の放射性廃棄物区分」「日本基準では、原発が生み出した使用済み燃料は、リサイクル燃料(廃棄物ではない!)」とされ、日本の原発使用済み燃料プールの貯蔵状況は8〜9割貯蔵で満杯状態。「日本は原発廃炉の時代に突入している」「再稼働9基、設置変更許可6基、新規制基準審査中12基、未申請9基、廃炉決定済・検討中24基」という現状。
「原発の廃炉とは、どういう状態」か、「JPDR (1万kWの小さな試験研究炉:東海村) は約10年かけて解体・廃止=グリーンフィールド」。「廃止措置計画認可の基準、『実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則』第百十九条1〜4項、一 廃止措置計画に係る発電用原子炉の炉心から使用済燃料が取り出されていること。二 核燃料物質の管理及び譲渡が適切なものであること。三 核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物の管理、処理及び廃棄が適切なものであること。四 廃止措置の実施が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上適切なものであること」だが、「福島第一原発では、現行法令に則った廃炉は不可能」「特定原子力施設・政府決定による「中長期ロードマップ」という誤魔化し」「『中長期ロードマップ』には、具体的な『廃炉後の状態』について何も明記されていない」「福島第一原発の現状は、事故の復旧作業。何か作業しているパフォーマンスだけ。デブリがどこにあり、どうなっているのか。10年以上経過しても分からない」、原子力緊急事態宣言の「解除はいつか、誰にもわからない」「F1は事故復旧作業中でほぼ解除は不可能。最低100年単位の廃炉計画の大転換が必要」と説明。
第二部は、「パネルディスカッション〜ふえつづける放射性廃棄物、どうする汚染水の海洋放出」。パネラーの3人のお話。
満田夏花 (国際環境NGO FoE Japan)さん
岸田内閣がGX(グリーントランスフォーメーション)の名のもとに、GX基本方針および推進法案を閣議決定し、原発の運転期間延長などを含む法改正を行うために、方針を決めてから、形式的にパブリック・コメントや各地での説明・意見交換会を開催して、十分な国民的議論もせず進めている。また、GXの内容は国債の発行も含み、消えゆく運命の原発を存続させるために、将来世代も含めた国民全体にコストを負担させる問題。運転期間制限を原子力規制委員会の所管から、経済産業省の所管に移し、利用政策と規制政策の分離という、福島第一原発事故の重要な教訓を蔑ろにするものと警鐘を鳴らしました。
鈴木薫 (いわき放射能市民測定室 たらちね)さん
いわき放射能市民測定室たらちねが実施した、福島県双葉郡大熊町の環境放射能調査について報告。昨年、大熊町の帰還困難区域のうち、 特定復興再生拠点区域と指定された860haの避難指示が解除され、居住を開始、産業施設の整備・準備などが進む。大川原地区に0歳から15歳の子どもたちが通う、認定こども園と小中学校が一体となった「学び舎ゆめの森」を本年夏に開校する。空間線量などが高い場所があり調査。
調査は、ホットスポットファインダーにより空間線量率を自動記録する走行サーベイと町内24ヶ所のピンポイント土壌調査。土壌調査は放射性セシウムとストロンチウム90の測定を実施。
走行サーベイの結果は、大川原地区では、林や田んぼなどで比較的高い線量を示し、特定復興再生拠点で毎時0.23µSvを下回ったのは、旧大野小学校周辺、旧双葉翔陽高校周辺、大野駅の東西出口のロータリーなどの一部で、ほとんどの場所で毎時0.23µSvを上回る。
土壌調査の結果は、放射性セシウム(Cs-137・134の合算値)は、24ヶ所中、19ヶ所で8,000Bq/kgを上回り、うち6ヶ所で50,000Bq/kgを超えた。最高値は、大川原地区の「学び舎ゆめの森」の建設予定地の裏山で200,818Bq/kg。「学び舎ゆめの森」周辺の、子どもの通学や遊びなどで通過・滞在しうる場所で、数万~数十万Bq/kgの汚染土壌がいまだに残留していることが判明したと報告。
織田千代 (これ以上海を汚すな!市民会議)さん
原発事故直後から放射能の海への影響を心配し声を上げ、事故により拡がった汚染をこれ以上拡げたくないと「これ以上海を汚すな市民会議」で活動。2021年4月13日の菅元総理の海洋放出発言以降、放射能の汚染を人為的に行うのはやめて、と抗議の声をあげ、科学者や専門家による講演会、国、東電、県、自治体への要請行動、毎月13日スタンディング、ハガキアクションなどを行う。最近は国際的に海で繋がる皆さんと海洋放出反対の声を広め、抗議の輪をつなぎ、海外の皆さんの意見や放射能の専門家学者の話を聞き、多様な点から放射能の拡散を止めようと活動している。毎月13日スタンディングを各地で行い、今年は、大々的な4・13global actionを、国内外一斉のスタンディングや抗議行動の呼びかけ。トリチウム以外の物質がタンクの7割から検出され、2次処理が必要と東電自らいっている水は、処理できていない、汚染水だ。私たちは、次の世代に少しでもまともな世の中を手渡すその時まで、諦めるわけにはいかないと話しました。
●福島原発事故12年 拡散する放射性物質のゆくえと私たちの未来 集会アピール
福島第一原発事故の始まりから12年、私たちは今も原子力緊急事態の中にいます。
廃炉の最終形態も法的に定義されず、被ばくを伴う困難な事故収束作業が続いています。政府はたった12年で原発事故の反省や教訓を手放し、原発の再稼働、リプレイス、運転期間の実質延長など原発推進政策に舵を切りました。また、復興の名のもとに、軍事転用可能な技術開発などを行う福島国際研究教育機構に巨額の予算をつぎ込み、さらに軍備拡大のために、復興税を防衛費に転用しようとしています。
事故後増え続ける小児甲状腺がんや災害関連死、切り捨てられる避難者、放射性物質汚染防止法や廃炉措置に関する法の未整備など、問題は山積しています。
タンク貯蔵汚染水の海洋放出問題も重大な局面を迎えています。政府と東京電力は『関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない』という約束を反故にして、今夏にも海洋放出を実施するために、多額の費用をかけテレビ等のメディアを使って安全宣伝を行っています。さらに除染によって集められ、中間貯蔵施設に運び込まれた汚染土を「再生資材」と名を変えて、全国へ拡散しようとしています。
住民が関与できないところで、さまざまな政策や方向性が決められていくことに、大きな疑問と憤りを持つ私たちは、今日、拡散されていく汚染水や放射性廃棄物、事故処理と廃炉の現状に向き合い、どうしたら良いのかを話し合いました。
私たちは、未曾有の核災害が生態系と人間社会にもたらしている重い現実を目の当たりにしています。私たちの選択が、すべての人々、とりわけ子どもたち、生態系、そして未来の世代に対して、原発事故による負荷を可能な限り小さくすることを真剣に考え、最善を尽くす責任を自覚し、以下の点を呼びかけます。
1. 脱原発:核廃棄物を大量に生み出し、戦争や地震によって破局的な事故を起こす危険性のある原子力発電を、次世代のエネルギーとして選択しません。
2. 可能な限りの被ばく低減:世界中の核被害者の犠牲を忘れることなく、内部被ばく、外部被ばくの可能な限りの低減をめざし、被ばく防護方策をとることが必要と考えます。被ばくに脆弱な人に対しての特別の支援と、被ばくを伴う作業に従事する人への徹底した被ばく防護を求めます。
3. 環境汚染の防止:これ以上深刻な放射能汚染が生態系に影響を与えないよう、放射性物質を環境中に投棄することに反対し、厳重な管理を求めます。
4. 未来世代への責任:現在の世代には、健全な地球を未来世代に手渡す責任があります。にもかかわらず、人類が核を使用してしまった事を深く反省し、未来世代が、拡散され残された夥しい放射性物質によってこれ以上健康被害や環境汚染にさらされないように、賢明な選択ができる議論の場をつくり、参加していきます。
5. 発生者責任と国の責任:これまで放射性物質を発生させてきた事業者および原子力を推進してきた国の責任が果たされるよう求めていきます。
6. 民主主義:これらを達成するために、政策決定・実施・検証への市民の参画や、情報公開、公正な手続き、透明性の確保など、民主主義的プロセスの実現を求めていきます。
7. 平和:原子力を利用することで生み出される危機を回避するために、世界の平和がなによりも重要であることを認識し、日本の軍備拡大に反対し、日本が武力によらない紛争解決に貢献することを求めていきます。
私たちは、広大な宇宙に抱かれる奇跡の星、地球に生きています。
この有限な美しい星が、これからも豊かな生命を育んでいくことができるよう、100年、200年、300年後の未来の人々が幸せに生きることができるよう、私たちは対立や分断を乗り越え、協力して、これからも努力し続けることを宣言します。
2023年3月12日
主 催:脱原発福島ネットワーク
賛 同:双葉地方原発反対同盟、ハイロアクション福島、いのちを守る三春の会、
会津放射能情報センター、放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会、
福島原発30キロ圏ひとの会、ふくしまwawawa-環・話・和-の会、
フクシマ・アクション・プロジェクト、フクシマ原発労働者相談センター、
「避難の権利」を求める全国避難者の会、いわき自由労働組合