脱原発福島ネットワークなど福島県内の10市民団体は、東京電力ホールデングス(株)の小早川智明代表執行役社長宛ての「理解と合意なき汚染水の海洋放出の中止を求める要請書」(下記掲載)を、同福島復興本社の担当者に対し、3月16日午後、いわき市内で行われた再開第71回東電交渉で提出しました。
本年1月13日、政府の「ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議」は、「設備工事の完了、工事後の規制委員会の使用前検査やIAEA の包括的報告書を経て、海洋放出の時期は、本年春から夏頃と見込む」としました。
これは、『関係者の理解なしには如何なる処分も行わない』という東京電力と政府の福島県漁連や全漁連に対する2015年の文書約束を反故にするもので、漁業者ばかりか、福島県内農林水産業・消費者4協同組合組織が反対し、福島県内自治体議会の多くが、海洋放出の反対・慎重の意見書を採択してきたことを無視するものです。
約束を守らず、被災者にさらなる負担と苦悩を強いる海洋放出は、多くの福島県民が不信感を抱いており、到底認められません。改めて、海洋放出の中止を要請し回答を求めました。
再開第71回東電交渉では、「理解と合意なき汚染水海洋放出設備工事の6月着工の中止などを求める要請書」への東京電力の回答(2022年5月12日付)などに対する質問への、未回答の質問事項のうち、第102回特定原子力施設監視・評価検討会等でのスラリー、HIC、被曝管理など、果たして2次処理できるのか?について質疑を行いました。
スラリーは、多核種除去設備の汚染水処理で発生する高線量の液体状二次廃棄物です。現在、ポリエチレン製のHIC容器に詰められ、コンクリート製ボックスカルバートに収納されています。使用済みセシウム吸着塔一時保管施設に保管されていますが、保管容量が2025年6月で逼迫します。長期保管に伴う漏えいリスク低減のための脱水によるスラリー安定化処理設備の設置も見通が立っていません。HICの保管場所なくなればスラリーの行先はなく、ALPSの稼働が不可能になり、汚染水の二次処理に影響します。
●主な質疑内容
第102回特定原子力施設監視・評価検討会等でのスラリー、HIC、被曝管理などについて
[東電回答]
・HICの水素対策は取られている。
・HIC45基中、44基まで入れ替えを順調に進めており、作業はその場で行なっている。
・第102回特定原子力施設監視・評価検討会の論点
①スラリー安定化処理の現実性
②HIC保管容量の逼迫ーボックスカルバート192基増設。2025年6月対策で更に192基増設。
③耐震クラス分類ー分類S,B+,B,C
④放射線業務従事者の被曝管理ー規制委からグローブボックス採用の指示。竣工時期は不明。
[市民質問]
・規制庁は早くと言っている。設計2023年、2024年安定化開始が遅れている、できないのでは?
[東電回答]
・フィルタープレス機で脱水しようとしたが、被曝管理、ダスト、メンテナンスなどから設計変更を指示された。2023年度中に設計完了を目指す。着工は2024年以降、処理開始は2026年以降。
[市民質問]
・スラリー安定化処理設備の稼働、設置は他に例があるのか?
→東電:次回回答
[市民質問]
・ベータ線管理は大丈夫か?
[東電回答]
・ガンマー線、ベータ線両方とも測定している。
[市民質問]
・スラリー安定化させないと、スラリーの行先がなくなるのでは?
[東電回答]
・前処理で出た沈殿物。処理後のストロンチウム等。核種と濃度は次回回答。
[市民質問]
・ろ布交換作業の線量、ろ布の濃度は?→東電:次回回答
●理解と合意なき汚染水の海洋放出の中止を求める要請書
東京電力ホールデングス(株)代表執行役社長 小早川 智明 様
2023年3月16日
福島第一原発事故から12年。政府の原子力緊急事態宣言は未だ解除されず、「1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」では廃炉完了を2051年としていますが、福島第一原発の廃止措置の完了形態は、法的に定められていません。
2021年実施予定だった燃料デブリ取り出しも不透明な状況で、貴社と政府は、「復興と廃炉の両立」の名の下、「廃炉を計画的に進める必要」「デブリ取り出し等に大きなスペースが必要」として、一昨年4月、汚染水の海洋放出を決定して以来、設備工事を進め、昨年8月以降、全国のテレビCM・WEB広告・全国紙の新聞広告などで、放出強行のために安全宣伝を実施し、被害発生を前提にした「風評対策」を公表しました。本年1月13日、政府の「ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議」は、「設備工事の完了、工事後の規制委員会の使用前検査やIAEA の包括的報告書を経て、海洋放出の時期は、本年春から夏頃と見込む」としました。
これは、『関係者の理解なしには如何なる処分も行わない』という貴社と政府の福島県漁連や全漁連に対する2015年の文書約束を反故にするもので、漁業者ばかりか、福島県内農林水産業・消費者4協同組合組織が反対し、福島県内自治体議会の多くが、海洋放出の反対・慎重の意見書を採択してきたことを無視するもので、約束を守らず、被災者にさらなる負担と苦悩を強いるもので、多くの福島県民が不信感を抱いており、到底認められません。
翻って、132万トンを超えるタンク貯蔵汚染水を、年間22兆ベクレルを上限に30年を超えて福島県沖へ放出する計画は、トリチウムや炭素14を含めた核種を、告示濃度限度以下に海水で薄めて流しても総量は同じであり、放出水に含まれる全ての放射性核種の定量確認もないまま、多量の放射性核種が福島の海に流され、太平洋が人工放射能で環境汚染されていきます。貴社は、海底土や海浜砂、生物への吸着・濃縮は「1年以内で平衡になる」と「放射線影響評価報告書」で放出による放射能の蓄積とフィードバックを過小評価していますが、検証が不十分です。
また、多核種除去設備の汚染水処理で発生する高線量の液体状二次廃棄物(スラリー)は、現在、ポリエチレン製のHIC容器に詰められコンクリート製ボックスカルバートに収納され、使用済みセシウム吸着塔一時保管施設に保管されていますが保管容量が2025年6月で逼迫します。長期保管に伴う漏えいリスク低減のための脱水によるスラリー安定化処理設備の設置も見通が立っていません。HICの保管場所なくなればスラリーの行先はなく、ALPSの稼働が不可能になり、汚染水の二次処理どころではないのです。
漁業者の反対、宮城県など周辺自治体の反対、アジアの近隣諸国はじめ昨年の国連総会で大統領が反対演説を行ったミクロネシア連邦やオーストラリアなど16ケ国が加盟する太平洋諸島フォーラムや全米海洋研究所協会などから安全性への懸念が世界に広がっており、貴社は、『関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない』という福島県漁業協同組合連合会等との文書約束を守ることが信頼回復の前提です。このまま強引に海洋放出を強行すれば将来に大きな禍根を残します。
以下、放出の中止を強く要請し誠意ある回答を求めるものです。
記
1、「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」とする福島県漁連等との文書約束を守り、理解と合意のない汚染水の海洋放出は中止すること。
2、放出する全放射性核種の濃度、総量などの全情報を公開し、海底土や海浜砂、生物への吸着・濃縮による放射能の蓄積とフィードバックを再評価すること。
3、地下水の止水、トリチウム分離技術の実用化、大型タンク保管案やモルタル固化保管案等の検討、スラリー安定化処理設備の設置など、汚染水についての抜本対策を確立すること。
4、本件の説明・公聴会を福島県内はじめ全国で開催すること。
命を守る三春の会 風下の会福島 脱原発の日実行委員会福島 脱原発福島ネットワーク
脱原発緑ネット ハイロアクション福島 福島原発30キロひとの会 双葉地方原発反対同盟
フクシマ原発労働者相談センター ふくしまWAWAWA―環・話・和―の会