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原発震災センター第13回総会&被災地スタディツアー

 5月23日と24日の両日、福島原発震災情報連絡センターの第13回総会&被災地スタディツアーが4年ぶりに対面で行われました。岐阜県内、新潟県内、静岡県内、神奈川県内、群馬県内、埼玉県内、東京都区、千葉県内そして福島県内から、被災者への支援活動を継続してきた全国の自治体議員が参加しました。
 福島原発震災情報連絡センターは、全国の自治体議員の有志によって、原発震災で放射能汚染と被曝を強制される人々の生存権を守ることを目的に、2011年10月26日設立されて以来、「(仮称)福島原発被曝者援護法」制定プロジェクトやウクライナ現地調査の実施、「『原発事故子ども・被災者支援法』推進自治体議員連盟」の結成、継続的な政府交渉や、「原発事故子ども・被災者支援法」の骨抜きに抗し市民団体と連携した「原発事故被害者の救済を求める全国運動 実行委員会」に参加し、国会請願署名などにも取り組んできました。
 この日の総会では、政府による原発回帰政策(GX法案)の強行、7年で1000億円の事業費の福島国際研究教育機構(エフレイ)の設置、復興と廃炉の両立という美名のもとで夏の汚染水海洋放出強行という状況下で、福島現地の現状と課題への認識を深め、被災者の「生存権」の確立・保障に向けた活動の継続、汚染水での意見書提出、海の日アクションへの参加、原発事故被災者支援施策等の改善を求める政府交渉の実施、さらに 再稼働・新増設・原発依存回帰批判と原発廃炉・核廃棄物処理の検証など活動の強化を確認しました。
 また、柏崎市議と刈羽村議から、柏崎刈羽原発重要書類紛失事件や再稼働議論の状況、UPZ議員研究会などの現地報告も行われました。
 総会後は、以下のテーマで講師を迎え研修を行いました。
(1)福島の漁業の現状と汚染水海洋放出:柳内孝之さん(小名浜機船底引網漁業協同組合)
(2)大熊町立学び舎夢の森の開校・海洋調査・福島第一原発の歴史:木村亜衣・大森透恵さん(いわき放射能市民測定室たらちね)
 また、2日目は、里見喜生さん(原子力災害考証館館長)のガイドで、沿岸部で津波被害にあい、全員避難した奇跡の学校・浪江町の「震災遺構 浪江町立請戸小学校」、福島県設立の福島イノベーション・コースト構想推進機構が管理運営し、政府、東京電力、福島県の責任や教訓の展示が不十分との批判が多い双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」、町民証言記録、原発事故の経験・教訓を伝える富岡町の「とみおかアーカイブ・ミュージアム」、「非核の火」が灯り原発事故の教訓を伝える楢葉町の宝鏡寺「伝言館」などを視察しました。

●以下は、承認された「2022年度活動報告」と「2023年度活動計画」の抜粋です。

■ 2022年度活動報告

<はじめに>
 東日本大震災と原発事故から12年。2011年3月11日に政府が発出した原子力緊急事態宣言が解除しない一方で、政府は避難指示区域の解除を進め、低線量の被曝を強制する帰還政策を続けた結果、移住した人や仕事で移り住んだ新住民が居住者の3分の1になりました。
 政府は、復興の切り札として、福島イノベーションコースト構想により7年間で約1千億円の事業規模を見込む福島国際研究教育機構などに巨額の復興予算をつぎ込んでいます。被災者の人間の復興とは乖離した復興政策が進む一方で、政府は福島原発事故など無かったかのように原発事故被害者・被災者を蔑ろにする、原発の再稼働、運転延長や建て替えなど原発推進政策に大きく政策転換しました。
 福島第一原発は、特定原子力施設の実施計画による「中長期ロードマップ」で廃炉完了は2051年とされていますが、2021年からの燃料デブリの取り出しも見通せず、廃炉の最終形態の法的根拠も確定できずいます。
 このような現状にも関わらず、「復興と廃炉の両立」という美名の下、政府と東京電力は『関係者の理解なしには如何なる処分も行わない』という漁業者との約束を反故にして、2023年夏にも汚染水の海洋放出を強行するために、テレビ等で安全宣伝を行い、被災者に一方的に犠牲を強いる被害前提の「風評対策」をゴリ押ししています。
 以下、このような1年を振り返り活動を報告します。

1. 被災者の「生存権」の確立・保障に向けた活動

・8月17日に「避難の協同センター」などの市民団体と連携し「原発事故子ども・被災者支援法」推進自治体議員連盟とともに、「原発事故被災者支援施策等の改善を求める政府交渉」を行いました。
2023年度復興予算案への反映をめざし、7月29日付提出の「原発事故被災者への支援施策等の改善を求める要請書」で要請した「避難者の実態調査と支援策、実効的な就労支援、必要な生活支援、住宅支援、支援団体への補助金削減や打ち切りにより多くの団体が存続の危機にある広域避難者支援、損害賠償の中間指針等の改定を行い被害者の救済、自然体験・交流活動支援事業、リアルタイム線量測定システムの配置、2021年度改訂版の放射線副読本」など9項目について、関係7省庁(21人)による回答を受けた上で、原発事故被災者支援施策等の改善を求めました。交渉には、窓口の山崎誠衆議院議員はじめ被災当事者や関係団体などの皆さんも参加しました。
 このうち、放射線副読本の2021年改訂版に、新たにALPS処理水の説明を盛り込み、「誤った情報に惑わされないために。誤った情報を広げて苦しむ人を出さないために」とする復興庁チラシ「ALPS処理水について知ってほしい3つのこと」が折り込まれた問題では、山崎誠衆議院議員から「世界で流していると書いているが、どこで流しているのか。福島と同じアルプス処理水を流している国を教えてください」という鋭い質問に復興庁職員も「ないです」と回答、山崎誠衆議院議員は「では完全に嘘を書いている」と指摘しました。
・保養については、本年1月17日、文科省との話し合いをFoeJapan、避難者、自由学園などの参加で実施しました。福島県教委に委託されている2億円予算が全国の保養団体に回るように主張しました。文科省の担当者は保養ボランティアの経験者でした。
・「原発事故子ども・被災者支援法推進自治体議員連盟」の強化、「支援法」の拡充や具体化、被曝者健康手帳交付など新たな法的措置に関する調査、研究、学習会については、コロナ下の制約も大きく、活動ができませんでした。
・「原発事故被害者の救済を求める全国運動」は形態をネットワークに変更しました。年4回ほどオンラインで会議を行います。呼びかけ、会議主催は各団体持ち回りとなり、震災センターも会議幹事を引き受けます。

2. 原発震災後の被災地域や全国の社会・経済・地域のあり方を問い直す取り組み

・福島第一原発事故のタンク貯蔵汚染水の海洋放出等に反対し、トリチウム分離技術の開発実用化、陸上保管の具体的検討、国際関係への配慮、国会論議、全国各地での公聴会実施などの国民的議論を求め、引き続き、意見書提出の働きかけや7月18日の福島現地「海の日アクション2022(いわき市)に参加するなど、反対する活動に取り組みました。
・放射線副読本問題については、8月17日の政府交渉でも取り上げ、文科省には再々質問状を提出しました。
・原発事故の刑事責任をめぐって、8月27日に東電刑事裁判「控訴審の弁論再開を求める!」オンライン報告会を開催しました。

3. 会員拡大をめざし、福島と全国の往還活動や情報発信、センター内部での情報交換の活性化、世論の喚起や社会の理解の深化へつなげる取り組み

・新型コロナ感染症対策で、幹事会はオンラインで行いました。
・会員間のオンライン意見交換会は実施しませんでしたが、MLでの情報発信、Facebookの活用を行いました。

4. その他

・ ウクライナ再視察の検討は、戦争より凍結しています。
・ 福島原発事故を検証する新潟県独自の「3つの検証」のとりまとめを注視しました。

■ 2023年度活動方針

 2011年の福島原発震災から12年、事故に対する風化が進む中、6月から夏ともいわれる事故汚染水の海洋投棄が強行されようとしています。廃炉計画のずさんさの中、改めて2011年3月11日の福島原発事故がどのような事故であったのか思い起こす1年となります。こうした中、国会においては多くの反対の声を押し切って原発「GX脱炭素電源法案」(原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の5つの改正案を束ねたもの)が可決されようとしています。
 一方、2022年2月にロシアのウクライナ侵略戦争が始まり既に1年と3か月、ロシアによるザポリージャ原発への攻撃が行われ原子力施設が核兵器に代わる現実を目の当りにさせられました。そうした中で、ベラルーシへの核兵器配備とウクライナ侵略戦争の中での核兵器使用と言う威嚇と核戦争の危機が眼前にあり、原発も核兵器も人類と共存することができないものであることを再認識させられています。
 そして、ロシア・ウクライナ戦争によりエネルギー危機が深刻になる中、フランスなどもともと原発依存の国だけでなく、原発回帰に逆流する動きが強まる中、ドイツにおいては、福島原発事故を真摯に教訓化したことによりこの4月15日に原発は停止しました。しかしながら日本においては、こうしたエネルギー危機を口実に原発再稼働、40年運転期限の解除、新増設を内容とする、また気候危機対策に有効と福島原発事故がなかったかのような原発依存政策への転換が始まりました。
 その意味において今年度の福島原発震災情報連絡センターの活動は新たな福島原発事故からの復旧・復興、原発に頼らない再生可能エネルギーを主体とした社会への転換を再提示する重要な年となります。
 
1. 被災者の「生存権」の確立・保障に向けた活動

(1)2022年度同様に市民団体と連携し「原発事故子ども・被災者支援法」推進自治体議員連盟とともに、8月をめどに「原発事故子ども・被災支援法」の拡充や具体化、被曝者手帳のなど新たな法的措置の実現に向けて「原発事故被災者支援施策等の改善を求める政府交渉」を実施します。(詳細は、昨年の活動報告に紹介されています)
(2)復興庁予算の執行の検証を行います。
(3)福島の子どもたちの応援や保養事業の意義を広め取り組みます。
(4)原発事故被害者の救済を求める全国ネットワークや東京電力の責任追及など様々な活動に連携していきます。

2. 再稼働・新増設・原発依存回帰批判と原発廃炉・核廃棄物処理の検証の活動

(1)総会を機会に現地ツアーを開催し、政府や福島県で推進されている避難区域指定の解除を前提にした「帰還と復興」の実情を把握し震災現場で起きている社会・経済・地域の実情を共通認識するとともに情報発信に取り組みます。
(2)「復興と廃炉」両立の美名のもとに推し進められる原発汚染水の海洋投棄がもたらす環境への負荷や漁業者への負担に向き合い福島現地での反対キャンペーンに連携して全国への情報発信を行い、福島―全国漁連とともに海洋投棄実施を中止に追い込みます。トリチウム分離技術の開発実用化、陸上保管の具体的検討、国際関係への配慮、国会論議、全国各地での公聴会実施などの国民的議論を求め、引き続き、意見書提出の働きかけや現地活動に連帯します。
(3)「新たな原発神話」を作り出している放射線副読本問題について文科省と継続して交渉します。
(4)原発立地・周辺自治体の情報を共有しながら、原発再稼働・新増設に反対する行動に積極的に取り組みます。また、そのために自治体での制度的枠組みの強化を求めて活動します
(5)原発の廃炉に向けた法律制定に向けての政策研究と提言に取り組みます。

3. 原発震災後の社会・経済・地域のあり方を問い直す取り組み

(1)帰還困難区域の解除が進む中で避難者と帰還者、残り続けている住民の方々との交流を続けながら自治体の在り方についての検討を行います。
(2)復旧・復興モデルの検証を行います。

4. 会員拡大をめざし、福島と全国の往還活動や情報発信、センター内部での情報交換の活性化、世論の喚起や社会の理解の深化へつなげる取り組み

(1)福島原発震災情報連絡センターの活動と組織を点検し、「原発事故子ども・被災者支援法」推進自治体議員連盟のありかたを検討し、原発回帰政策へと加速する流れに立ち向かう私たちの活動強化に努めます。
(2)全国の自治体議員の再加入運動を進め、そのために様々な自治体議員や市民団体との連携強化に推進します。平和立憲会議の呼びかけに対応していくことについても検討します。
(3)韓国はじめ汚染水の海洋投棄に懸念を示している北東アジア、太平洋諸島の人々との連帯活動を進めます。

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by kazu1206k | 2023-05-24 21:45 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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