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約束を守れ!「理解は了解」の意と漁連ー東電交渉

 脱原発福島ネットワークなど福島県内の10市民団体は、7月19日午後、いわき市内で再開第73回東電交渉を実施しました。
 政府と東京電力は、福島第一原発事故により発生したタンク貯蔵汚染水を「ALPS処理水」として、この夏、海洋放出をしようとしております。今回も「理解と合意なき汚染水の海洋放出の中止を求める要請書」(3月16日提出)への回答に対する質疑への再回答と質疑が行われました。
 質疑では、市民側の「理解なしで夏8月に放出を実施するのか、政府に延期を進言するのか」との再質問に当初回答を繰り返し、市民側は「理解は了解、と漁連がいっている以上、放出できないのではないか」と迫りました。
 また、IAEAの安全指針GSG8(GSG-8 「公衆と環境の放射線防護」)の放射性物質が国境を超えて流された場合は「害よりメリットが上まわなければならい」とされ「このIAEAガイドラインに今回の放出が抵触するのではないか」との問いへの回答では「今回のALPS処理水の海洋放出の最適化とは、必ずしもALPS処理水による一般公衆の被曝のみの最小化を意味するものではないことがIAEAの安全基準文書にもある通り」などと開き直り、市民は「東電にはメリットでも流される側にメリットはあるのか」と質しました。
 夏の放出強行に対し、福島県漁連はじめ漁業者は反対を堅持しており、近隣諸国の反発も外交問題化しており、簡単ではありません。『関係者の理解なしには如何なる処分も行わない』という福島県漁連や全国漁連に対する2015年の文書約束を守れという声も全国に広がっております。
 市民は、政府と東京電力の夏8月の海洋放出の強行を許しません。

●東京電力の再回答と主な質疑内容は以下のとおりです。
 
1、「理解と合意なき汚染水の海洋放出の中止を求める要請書」(3月16日提出)への回答と質疑

① 「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」とする福島県漁連等との文書約束を守り、理解と合意のない汚染水の海洋放出は中止すること。
[当初回答]
・多核種除去設備等処理水(以下、「ALPS処理水」という)に関し、当社として、「2015年の漁業関係者の皆さまからの申し入れ」に対するご回答を遵守するとの方針に変わりはありません。
・当社としては、ALPS処理水の取り扱いに関し、安全な設備の設置や運用などの計画に基づく安全確保や科学的根拠に基づく国内外への情報発信、海域モニタリング強化などの政府の基本方針を踏まえた取り組みをしっかり進めるとともに、引き続き、漁業関係者の皆さま、地元をはじめとする皆さまのご懸念やご関心に真摯に向き合い、ALPS処理水の取り扱いに関する当社の考えや対応について丁寧に説明をさせていただく取り組みを重ねてまいります。

[市民質問] 
・理解なしで夏8月に放出を実施するのか、政府に延期を進言するのか?
[東電回答]
・当社は、21年4月に決定されたALPS処理水の処分に関する政府方針や関係閣僚等会議で確認された事項について重く受け止めています。計画に基づく安全確保や科学的根拠に基づく情報発信、放射性物質のモニタリング強化など政府方針を踏まえた取り組みを進めるとともに、引き続き、地元の皆さまはじめ関係する皆さまに対し、ご懸念やご関心に向き合い、ALPS処理水の取り扱いに関する当社の考え方や対応について、説明を重ねます。
[市民質問] 
・関係者に理解されたと考えているのか?
[東電回答]
・一概にはいえない。
[市民質問] 
・漁業者の反対あるのに理解されたと判断できるのか?
[東電回答]
・何を持って理解かは、むづかしい。
[市民質問] 
・陸上保管のために地権者に聞いたのか?
[東電回答]
・敷地内で完結する。海洋放出はモニタリングできるし、管理していける。
[市民質問] 
・タンクの方が管理しやすいのではないのか?
[市民質問] 
・理解は了解、と漁連がいっている以上、放出できないのではないか?東電の見解は?
[東電回答]
・次回、回答。
[市民質問] 
・事故責任の自覚あるのか?
[東電回答]
・責任は会社にある。主体的に廃炉を進めている。
[市民質問] 
・法は守るのか?約束は守るのか?破れば契約違反ではないのか?一方的放出しないのか?
[東電回答]
・2015年文書遵守の方針は変わらない。

② 放出する全放射性核種の濃度、総量などの全情報を公開し、海底土や海浜砂、生物への吸着・濃縮による放射能の蓄積とフィードバックを再評価すること。
[当初回答]
・情報公開については、正確かつタイムリーに処理水ポータルサイト等のホームページに好評を予定しています。
・人および環境への放射線影響評価については、国際原子力機関(IAEA)安全基準文書、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告に従って評価しており、2023年2月にはALPS処理水の海洋放出に係る放射線環境影響評価報告書(建設段階・改訂版」として公表しております。
放射能の蓄積等の考え方については、同報告書の中において、海水と海底土又は海産物の問題で、通常では放出開始数年経過しなければ到達することがない平衡状態(吸着と離脱がバランスした状態)に瞬時になることを仮定し、放出期間中に発生する最も高い被ばく線量を計算したものであることを明確に記載しております。
今後、放出を開始した後であっても、運用に関する検討の進捗、各方面からいただいた意見、第三者によるクロスチエックなどを通じて得られる知見を適宜適切に反映するとともに、必要な場合には評価を見直し、本報告書を改訂するとともに、さらに必要に応じて放出計画等に反映してまいります。

[市民質問] 
・ALPSの稼働、利用状況は?
[東電回答]
・1日平均100m3ーALPS1系統で済んでいる。1台か2台稼働。20年度は非稼働30日、21年度約60日、22年度約80日。
[市民質問] 
・既設、増設、高性能のALPS3種のうち、規格合格は増設のみではないか?
[東電回答]
・使用前検査は通っている。
[市民質問] 
・どこに公表されているのか?
[東電回答]
・次回、回答。
[市民質問] 
・2018年9月29日付け福島民友新聞には「保管8割基準値超」となっているが?
[東電回答]
・35%は告示濃度以下、65%が基準値超。
[市民質問] 
・IAEAの安全指針GSG8(GSG-8 「公衆と環境の放射線防護」)「放射性物質が国境を超えて流された場合、害よりメリットが上まわなければならい」、このガイドラインに今回の放出が抵触するのではないか。
[東電回答]
・環境への放射性物質の防護の最適化とは、IAEAの安全基準の中では、その施設の状況に応じて、どのような放出を行うことが施設全体をみて最適となるかを評価し続けることが、防護の最適化と定められています。今回のALPS処理水の海洋放出の最適化とは、必ずしもALPS処理水による一般公衆の被曝のみの最小化を意味するものではないことがIAEAの安全基準文書にもある通りです。また、GSG8の適用範囲は、GSG8のパラグラフ1.8〜1.10に示されており、パラグラフ1.9において、今回の事例については、GSG9、GSG10を適用するとされています。東京電力が実施した放射線環境影響評価報告書は、GSG9、GSG10に沿って評価しています。
[市民質問] 
・東電にはメリットでも流される側にメリットはあるのか?
[東電回答]
・次回、回答。
[市民質問] 
・GSG8の和訳文は?
[東電回答]
・次回、回答。

③地下水の止水、トリチウム分離技術の実用化、大型タンク保管案やモルタル固化保管案等の検討、スラリー安定化処理設備の設置など、汚染水についての抜本対策を確立すること。
[当初回答]
・汚染源を「取り除く」、汚染源に水を「近づけない」、汚染水を「漏らさない」の3つの基本方針に沿って、地下水を安定的に制御するための、重層的な汚染水対策を進めていきます。
○地下水の止水
・中長期ロードマップに記載されている「2025年内に汚染水発生量を、1日当たり100㎥以下に抑制」目標の達成を目指して取り組みを継続しております。中長期的な汚染水抑制対策については、局所的な建屋止水と並行して、建屋外壁の止水性をさらに向上させる方策の検討を行い、それらの工法の組み合わせを含めて2028年度までに準備してまいります。局所的な建屋止水の効果及び建屋外壁止水の検討結果や、建屋周辺の燃料デブリ取り出しなどの廃炉作業の状況も踏まえて、て2028年度までに中長期的な汚染水抑制対策(建屋外壁止水)の進め方を具体化してまいります。
○トリチウム分離技術の実用化
・ALPS処理水に対して実用のレベルに達しているトリチウムの分離技術は、現時点においては確認されていません。トリチウム分離技術の実用化について、幅広い調査の実施や提案を受け付け、第三者を交えた新たなスキームにより、現実的に実用可能な技術が確認できた場合には、積極的に検証を進め、取り入れていきます。
○大型タンク長期保管案
・タンクに長期間保管し続けることは、リスクの増加につながるものと考えております。
・2020年2月10日に取りまとめられた「多核種除去設備等処理水の取り扱いに関する小委員会(以下、「小委員会」という)報告書」において、大容量の地上タンクでの保管や、地中タンク、洋上タンクでの保管についても検討されており、これらの大型タンクなどの福島第一原子力発電所への設置を行うメリットはないと整理されております。
・また同報告書において、タンク保管の継続については、「敷地の中で行なっていくほかない」、「現行計画以上のタンク増設の余地は限定的」と整理されております。
○モルタル固化保管案
・2019年9月27日に開催された第14回小委員会において、当社から、固化により体積が3~6倍となり、貯蔵継続より敷地が必要になること、固化による発熱があるため、水分の蒸発(トリチウムの水蒸気放出)を伴うことを説明しております。
・2020年2月10日小委員会報告書において、処分方法については「地層注入、水素放出、地下埋設については、規制的、技術的、時間的な観点から現実的な選択肢としては課題が多く、技術的には、実績のある水蒸気放出及び海洋放出が現実的な選択肢」、特に固化については「固化による発熱があるため、水分の蒸発(トリチウムの水蒸気放出)を伴う」と整理されております。
○スラリー安定化処理設備の設置
・ALPSスラリー安定化処理設備は、設備を長期に使用することを踏まえると、メンテナンス時の被ばくリスクを考慮した設備構成とする必要があり、グローブボックス内で取り扱えるフィルタープレス機本体の小型・簡素化へ設計方針を変更することとしています。
・グローブボックス採用に伴う、フィルタープレス機本体の小型・簡素化に際し、機器設計ならびに成立性の検討状況ならびに設備の設計見直しに必要となる期間を踏まえ、運用開始は2026年度末予定です。

[市民質問] 
・スラリーの保管の逼迫時期は、4年後には満杯の見通し。
[東電回答]
・27年3月、安定化処理施設の運転開始。
[市民質問] 
・内容を説明してほしい。
[東電回答]
・次回、説明。
[市民質問] 
・トリチウムの分離、河北新報2022年11月10日付「京大チーム、多孔性材料、ネイチャー」については?
[東電回答]
・ラボベースの検討結果。工学的分離技術に発展すれば候補の一つにするが。1日500トンの処理が目標。

4、本件の説明・公聴会を福島県内はじめ全国で開催すること。 
[当初回答]
・2020年2月10日小委員会報告書を受け、2020年3月に「検討素案」を公表以降、これまで福島県民の皆さまへ、訪問、福島第一原子力発電所の視察を兼ねた座談会、福島県原子力発電所の廃炉に関する安全確保県民会議など様々な機会を捉えてご説明し、ご意見、ご要望等を伺ってきたところです。
今後も引き続き、あるゆる機会を通じて、地元の皆様はじめ、関係者の皆様、広く社会の皆さまへ当社の方針や取り組み等をしっかりと説明してまいります。


●理解と合意なき汚染水の海洋放出の中止を求める要請書

東京電力ホールデングス(株)代表執行役社長 小早川 智明 様  
                      2023年3月16日

 福島第一原発事故から12年。政府の原子力緊急事態宣言は未だ解除されず、「1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」では廃炉完了を2051年としていますが、福島第一原発の廃止措置の完了形態は、法的に定められていません。
 2021年実施予定だった燃料デブリ取り出しも不透明な状況で、貴社と政府は、「復興と廃炉の両立」の名の下、「廃炉を計画的に進める必要」「デブリ取り出し等に大きなスペースが必要」として、一昨年4月、汚染水の海洋放出を決定して以来、設備工事を進め、昨年8月以降、全国のテレビCM・WEB広告・全国紙の新聞広告などで、放出強行のために安全宣伝を実施し、被害発生を前提にした「風評対策」を公表しました。本年1月13日、政府の「ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議」は、「設備工事の完了、工事後の規制委員会の使用前検査やIAEA の包括的報告書を経て、海洋放出の時期は、本年春から夏頃と見込む」としました。
 これは、『関係者の理解なしには如何なる処分も行わない』という貴社と政府の福島県漁連や全漁連に対する2015年の文書約束を反故にするもので、漁業者ばかりか、福島県内農林水産業・消費者4協同組合組織が反対し、福島県内自治体議会の多くが、海洋放出の反対・慎重の意見書を採択してきたことを無視するもので、約束を守らず、被災者にさらなる負担と苦悩を強いるもので、多くの福島県民が不信感を抱いており、到底認められません。
 翻って、132万トンを超えるタンク貯蔵汚染水を、年間22兆ベクレルを上限に30年を超えて福島県沖へ放出する計画は、トリチウムや炭素14を含めた核種を、告示濃度限度以下に海水で薄めて流しても総量は同じであり、放出水に含まれる全ての放射性核種の定量確認もないまま、多量の放射性核種が福島の海に流され、太平洋が人工放射能で環境汚染されていきます。貴社は、海底土や海浜砂、生物への吸着・濃縮は「1年以内で平衡になる」と「放射線影響評価報告書」で放出による放射能の蓄積とフィードバックを過小評価していますが、検証が不十分です。
 また、多核種除去設備の汚染水処理で発生する高線量の液体状二次廃棄物(スラリー)は、現在、ポリエチレン製のHIC容器に詰められコンクリート製ボックスカルバートに収納され、使用済みセシウム吸着塔一時保管施設に保管されていますが保管容量が2025年6月で逼迫します。長期保管に伴う漏えいリスク低減のための脱水によるスラリー安定化処理設備の設置も見通が立っていません。HICの保管場所なくなればスラリーの行先はなく、ALPSの稼働が不可能になり、汚染水の二次処理どころではないのです。
 漁業者の反対、宮城県など周辺自治体の反対、アジアの近隣諸国はじめ昨年の国連総会で大統領が反対演説を行ったミクロネシア連邦やオーストラリアなど16ケ国が加盟する太平洋諸島フォーラムや全米海洋研究所協会などから安全性への懸念が世界に広がっており、貴社は、『関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない』という福島県漁業協同組合連合会等との文書約束を守ることが信頼回復の前提です。このまま強引に海洋放出を強行すれば将来に大きな禍根を残します。
 以下、放出の中止を強く要請し誠意ある回答を求めるものです。
        記
1、「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」とする福島県漁連等との文書約束を守り、理解と合意のない汚染水の海洋放出は中止すること。
2、放出する全放射性核種の濃度、総量などの全情報を公開し、海底土や海浜砂、生物への吸着・濃縮による放射能の蓄積とフィードバックを再評価すること。
3、地下水の止水、トリチウム分離技術の実用化、大型タンク保管案やモルタル固化保管案等の検討、スラリー安定化処理設備の設置など、汚染水についての抜本対策を確立すること。
4、本件の説明・公聴会を福島県内はじめ全国で開催すること。 

命を守る三春の会 風下の会福島 脱原発の日実行委員会福島 脱原発福島ネットワーク
脱原発緑ネット ハイロアクション福島 福島原発30キロひとの会 双葉地方原発反対同盟 
フクシマ原発労働者相談センター  ふくしまWAWAWA―環・話・和―の会

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by kazu1206k | 2023-07-26 21:31 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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