9月8日午後、福島市で、ALPS処理汚染水の海洋放出差止訴訟の提訴行動が行われました。
東京電力福島第1原発事故由来のALPS処理汚染水の海洋放出を止めようと、漁業関係者や福島はじめ原発事故の被災住民151人が第一陣の原告となって、国には原子力規制委員会が行った放出計画の認可や設備の使用前検査の合格取り消しを、東京電力には放出の差し止めを求める請求を提訴したものです。
訴状では、海洋放出は、原発事故被災者への「二重の加害」であり、漁業者のなりわいの権利や周辺住民の平穏に暮らす権利を侵害するとし、国と東京電力が2015年に福島県漁連に対して「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」と文書で約束したことを無視する行為で契約違反である、としました。
台風の影響が懸念される中、福島県内はもとより、各地から100人を超える原告や支援者が集まり、福島市民会館で行われた提訴事前集会を皮切りに、福島地裁までのデモ行進、福島地裁への訴状提出、提訴報告集会及び記者会見が連続して行われました。
13時からの提訴事前集会では、弁護団共同代表の広田次男弁護士のあいさつ、原告共同代表の鈴木茂男さんの決意表明などに続き、原告団事務局長の丹治杉江さんが行動提起を行い、デモ行進に移りました。
雨の中、市民会館から福島地裁まで、「汚染水の海洋投棄反対」と元気にシュプレヒコールを上げながらデモ行進。13時半、弁護団3人と原告代表3人が福島地裁へ訴状を提出して受理されました。
14時10分からは、提訴報告会・記者会見が行われました、弁護団より広田弁護士が「この国の民主主義のあり方、社会正義がもっとも大きな課題となる」と提訴の意義を強調、北村賢二郎弁護士が訴状の骨子を紹介、河合弘之弁護士が「この闘いは『正義の闘い』だ」「政府と東電はマスコミを総動員して『基準値以下だから大丈夫』という大キャンペーンを5年にわたって展開してきた。そのせいで『しょうがないのかなあ』という雰囲気が漂っている。その間違いを私たちは正さなければいけない。でも、裁判だけでは政策は変わらない。広範な国民運動、世界的な市民運動も立ち上げていきながら海洋投棄を止めるところまでもっていかなければいけない」と今後の闘い方を話された。その後、司会の鈴木雅貴弁護士が、漁業者のメッセージを読み上げました。原発事故後、山にあるキノコ類の摂取制限が続く現状に触れ「魚も何年か後にはこうなるのではないかと恐れている」と、漁業者の困惑と苦悩を伝えるメッセージでした。
4人の原告からは、提訴の心境についてそれぞれの想いが語られました。
いわき市の織田千代さんは、「『ALPS処理』は完全ではないのに、『処理水』と名付けています。漁業者をはじめ、あれだけの多くの反対があり、『約束を遵守する』『ていねいに説明する』と言っていたにもかかわらず放出が始まったらその点には触れず、まるで約束などなかったかのような状態です。本当に酷いです。いつの間にか中国との外交問題が中心の報道が続いていますが、中国以外の世界中から心配の声が寄せられています。さまざまな勧告や提言も寄せられています。それについては、メディアはちっとも取り上げません。ここにも政府の意図を感じます」
「福島で原発事故を経験した私たちは、事故が起きるとどうなるのかを、この12年以上にわたって散々見てきました。私たちには『これ以上、放射能を絶対に拡げるな』と警告する責任があります。私たちの声をないことにはできません。一刻も早く海洋放出をストップさせる。希望を捨てずにがんばりましょう」と話しました。
その後、記者との質疑応答、会場参加者からの質疑応答があり、最後に丹治事務局長が第二陣原告の募集の案内を行い、閉会しました。
第二陣原告の募集を開始しています。以下、弁護団の呼びかけです。
●ALPS処理汚染水の海洋放出差止訴訟の第二次原告募集のお知らせ
2023年9月8日
ALPS処理汚染水差止訴訟弁護団
共同代表:弁護士広田次男、弁護士河合弘之、弁護士海渡雄一
1 今回の国と東電によるALPS処理汚染水の海洋放出は、政府が「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」という約束を遵守すると言いながら、福島県漁連だけではなく全国の漁連の強い反対の声を無視して行われており、決して許されるものではありません。
また同時に環境法規や条約に違反する可能性があるなど、様々な問題を抱えているものです。海洋放出をこのまま許すわけにはいきません。
2 我々、弁護団は、ALPS処理汚染水放出差止の第一次提訴を、漁業関係者を含む市民を原告として福島地方裁判所に行いました。
当弁護団としましては、多くの皆様とともに裁判を闘うことで、裁判所に対して民意を示し、差止を認めさせる判決を下してもらうためにも更なる原告の募集を行いたいと考えています。
つきましては、第二次提訴の原告の募集を行いますのでその旨をお知らせいたします。
なお、第二次提訴の予定日は、令和5年10月末日を想定しております。
3 今回、裁判所においての争いを極力避けるため原告となれる方については一定の基準を設けさせていただいております。裁判における争点を可能な限り減らすことで、速やかな放出の差止を実現するべく苦慮した結果ですので、何卒ご理解いただければ幸いです。
●原告として裁判に参加いただくための基準としては、福島第一原発付近の太平洋沿岸部に居住する、福島、茨城、宮城、岩手、千葉、東京の方、さらに原発事故により前記1都5県から避難中の方となります。また、訴訟費用として13,500円をご負担いただきます。
今回原告になれない方も、ぜひ共に裁判を闘っていただくため、今後正式に発足させる、ALPS処理汚染水差止訴訟を支援する会(仮称)にご参加いただきますようお願い申し上げます。
原告になりたい方、もしくは支援する会にご参加希望の方は、10月10日までに下記連絡先までEメールかFAXで、お名前と、住所(郵便番号を含む)と電話番号とパソコンのメールアドレスをお知らせください。原告団事務局より、委任状等の必要資料を郵送します。
ぜひ多くの皆様にご参加いただきたいと思います。何卒よろしくお願い申し上げます。
記
ALPS処理汚染水差止訴訟原告団事務局
〒970-8045 福島県いわき市郷ケ丘4丁目13-5
電話番号090-7797-4673
FAX0246-68-6930
担当 丹治杉江
Eメールアドレス: ran1953@sea.plala.or.jp
