9月20日、脱原発福島ネットワークなど福島県内の10市民団体による再開第74回東電交渉が行われました。
8月24日に汚染水の海洋放出が強行され、9月8日には、汚染水差止訴訟も提訴されました。「汚染水ではなく処理水」との言葉狩りが横行していますが、放出後始めての東電交渉となりました。
冒頭で、関係者の理解も国民の合意もないまま強行された汚染水の海洋放出に対して、断固として抗議し、将来にわたる環境と生態系への影響が懸念されるため、健康被害を起こしてはならないと、改めて汚染水の海洋放出の中止を要求しました。
交渉は、23年3月16日付「理解と合意なき汚染水の海洋放出の中止を求める要請書」の再質問への再回答と質疑のほか、これまで質問事項への未回答への回答をめぐって行われました。
以下は、主なやりとりの概要です。
1、「理解と合意なき汚染水の海洋放出の中止を求める要請書」(3月16日提出)への質疑に対する再回答
① 「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」とする福島県漁連等との文書約束を守り、理解と合意のない汚染水の海洋放出は中止すること。
[市民質問]
・理解は了解、と漁連がいっている以上、放出できないのではないか?東電の見解は?
[東電回答]
・当社は、廃炉作業の期間を通じ、風評を生じさせない、関係者の皆さまはじめ県民、国民の信頼を裏切ってはいけないという決意のもと、設備運用の安全・品質確保、迅速なモニタリング、国内外への情報発信、IAEAの継続的なレビューを通じた透明性の確保、風評対策並びに損害発生時の適切な補償など、実施主体の責任を果たして参ります。
[東電回答]
・対策を実施して責任を果たしていく。
[市民質問]
・責任を果たしていくというが、放射能を広げないのが責任ではないか?約束は守ったと思っているのか?
② 放出する全放射性核種の濃度、総量などの全情報を公開し、海底土や海浜砂、生物への吸着・濃縮による放射能の蓄積とフィードバックを再評価すること。
[市民質問]
・使用前検査は通っているというが、どこに公表されているのか?
[東電回答]
・既設ALPSは2022年3月23日、増設ALPSは2017年10月12日、高性能ALPSは2023年3月2日に規制委員会より合格証を受領している。規制委員会の HPに掲載。
[市民質問]
・規制委員会の特定原子力施設監視・評価検討会第102回の対策案はどうか?
[東電回答]
・次回、回答。
[市民質問]
・東電にはメリットでも流される側にメリットはあるのか?
[東電回答]
・国は、IAEAの安全基準に従って正当化プロセスを十分に検討し、遵守したものと承知している。関連する安全基準に沿って、ALPS処理水の海洋放出を含む福島第一原子力発電所の廃炉プロセス全体について、正当化に関する決定がなされるべきと理解している。
・国は、廃炉の便益と弊害を総合的に検討、便益に関しては2011年東日本大震災被災地の復興には、ALPS処理水の排出が不可欠と結論、2021年4月の国の基本方針に記載されている。
・弊害に関しては、国の基本方針を採択した際、いかなる放流も人々や環境に悪影響を及ぼすことは極めて低い。この見解は最高の国際基準に基づいて実施された当社の環境評価とIAEAの包括的報告書によって確認されている。
・IAEAの安全指針GSGの文書には、ここの国に対する便益は要求されおらず、計画されたものが社会全体に便益をもたらすかどうか、それがいかなる害よりも大きくなるかだ。
[市民質問]
・漁業者にはどのような利益になるのか?
[市民質問]
・IAEAの正当化プロセスを踏まえているか?
[市民質問]
・便益と弊害というが、現時点で1,400億円の費用支出があり、国民の税金ではないか?
[市民質問]
・炭素14の放出は大丈夫という根拠は何か?
[市民質問]
・IAEAの安全指針GSG8(GSG-8 「公衆と環境の放射線防護」)の和訳文は?
[東電回答]
・参考資料として機械和訳文を。
③地下水の止水、トリチウム分離技術の実用化、大型タンク保管案やモルタル固化保管案等の検討、スラリー安定化処理設備の設置など、汚染水についての抜本対策を確立すること。
[市民質問]
・スラリーの保管の逼迫時期、4年後満杯の見通し。27年3月、安定化処理施設の運転開始の内容は?
[東電回答]
・新HICへの置き換えは、HICの吸収線量が500k Gyを超過してから始め、順次実施する。底部での圧密したスラリーを回収するため、小流を用いて底部のスラリーを回収する装置を検討している。
[市民質問]
・27年3月、安定化処理施設の運転開始までの工程は?
[東電回答]
・次回、回答。
2、22年5月12日付「理解と合意なき汚染水海洋放出設備工事の6月着工の中止などを求める要請書」への東京電力の回答など、これまで質問事項への未回答への回答
○質問ースラリー安定化処理設備の稼働、設置は他に例があるのか?
[東電回答]
・他社での実施は答えられない。実規模試験はある。
○質問ースラリーの放射性物質は?前処理で出た沈殿物。処理後のストロンチウム等。
○質問ーろ布交換作業の線量、ろ布の濃度は?
○質問ー中国の3つの疑問(汚染水内の放射線核種、汚染水の中味、メルトダウン由来の放出水は他にない)への答えは?
[東電回答]
・原発を含む原子力施設からの排水の安全性は通常炉か事故炉か問わず、排水に含まれる全ての核種の放射線影響の合計が規制基準値を下回ることにより判断される。ALPS処理水を環境に放出する場合は、トリチウムと他の放射性物質を浄化処理し、通常の運転時の福島第一原子力発電所からの排水時と同じ規制基準未満の濃度であることを確認したのち放出を実施します。
[市民質問]
・トリチウムは100万bq/ℓ以上のものも流すのか?
[東電回答]
・100万bq/ℓ以上のものは流さない。
[市民質問]
・海底土の測定は?吸着は?
[東電回答]
・いつかは知らないが測定はする。