10月13日、文部科学省が旧統一教会に対する解散命令の請求を東京地方裁判所に行ったことに対する、日本弁護士連合会の談話を紹介します。
旧統一教会に対する解散命令の請求についての会長談話
本日、文部科学省は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令の請求を東京地方裁判所に行った。文化庁が質問権の行使を含む調査を行った上で、解散命令請求という大きな決断に至ったことについて、当連合会としても重く受け止め、今後を注視していく。
もっとも、宗教法人に対する解散命令請求は、それ自体が直接に霊感商法等の被害救済につながるものではなく、今なお多くの被害者がいる現実があることを忘れてはならない。
当連合会は、霊感商法等の悪質商法及び宗教問題による被害の深刻さが改めて顕在化する中で、関係機関と連携をするとともに、全国の弁護士会等の協力を得てフリーダイヤル等による無料法律相談受付を行ってきた。寄せられた約1500件もの相談から、事例を収集し分析する中で、旧統一教会による高額な財産的被害の申告が相当数あり、深刻な被害が長期間にわたり存在し続けてきたことを目の当たりにした。このような中で、当連合会は、全国から約350名もの弁護士が参加している全国統一教会被害対策弁護団の活動を支援している。同弁護団の集団交渉や集団調停申立等は始まったばかりであり、一日も早く被害者が救済されるよう、当連合会として、同弁護団と積極的に連携し、その支援を継続していく決意である。
宗教法人に対する解散命令は、宗教団体の法人格を失わせ、税制上の優遇措置をなくすなど、その事業活動に大きな影響を及ぼすものであり、裁判においては、慎重かつ適正な審理が求められることは当然である。もっとも、過去に法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと(宗教法人法第81条第1項第1号)を理由として行われた解散命令に係る裁判では、その確定までに長期間を要している。裁判が長期化すれば、その間に当該宗教団体の財産散逸の可能性があることなどから、迅速な進行が求められる。さらに実効的な被害救済を実現するためには、解散命令請求に合わせて当該宗教団体の財産保全等を現実的に可能とする仕組みが必要である。宗教法人法上にこのような規定がないことが課題として指摘されており、法改正又は特別法等の立法措置を検討することが望まれる。宗教団体には宗教的活動を行う権利が認められているとはいえ、個人の権利と自由を侵害することは許されない。国は、毅然とした態度で臨むべきである。
当連合会は、人権擁護を使命とする法律家団体として、信教の自由、個人の尊厳を守るべく、引き続き関係機関及び関係団体等との連携を緊密に図り、実効的な被害の救済及び防止に向けた提言と活動を行っていく所存である。
2023年(令和5年)10月13日
日本弁護士連合会
会長 小林 元治