12月定例会 一般質問 項目 2023.12.11
1、いのちを守る、災害に強いまちづくりについて
(1)台風第13号を踏まえた災害に強いまちづくりについて
台風第13号の影響による県内初の線状降水帯の発生により、1時間に100ミリを超える豪雨が本市を襲い、死者1名、負傷者5名、住家被害1,783棟、公共施設被害1,142箇所、被害総額約4,943,87万円という大きな被害が発生した。
今次水害の検証すべき課題と今後の防災体制作りのため、以下伺う。
ア、台風第13号被害について、今次水害の検証すべき課題として、県内初の最高レベルの避難情報「緊急安全確保」の発令による住民避難と安全確保、令和元年東日本台風でも氾濫した宮川の治水対策、川沿いにある避難所指定の内郷二中体育館の浸水被害とハザードマップの問題なども指摘されているが、「災害死ゼロ」を目指す市長は、ハード、ソフトの両面でどのような総括をしているのか。
イ、今後の防災体制について、「誰も取り残さない防災体制」を目指す市長としては、本件を教訓に今後どのようにハード、ソフト両面の体制づくりを進めるのか。
ウ、流域治水プロジェクトについて、台風第13号被害を踏まえた、流域治水プロジェクトにおける河川改良事業及び河川等堆積土砂撤去事業などの事業の前倒しや新たな事業化などプロジェクト自体の見直しを行い、宮川など氾濫9河川や矢田川など中小河川の堆砂除去、樹木伐採なども含めた、計画的な事業推進を図るべきではないか。
エ、内水氾濫対策について、いわき市雨水管理総合計画の雨水管渠整備、ポンプ施設整備、雨水貯留施設等の整備などの施設の能力増強や貯留施設等の事業に関して、台風第13号被害を踏まえて見直し、事業を強化すべきではないか。
(2)常磐地区市街地再生整備事業に伴う災害リスクの回避と防止策について
常磐地区市街地再生整備基本方針に基づき、新・いわき湯本温泉まちづくりビジョンブックでは、3つの日帰り温浴施設の一つとして「みゆき山露天の湯」が計画され、整備にあたっては作業用の搬入路を造成し高台に温浴施設や芝生広場、公衆トイレを整備する予定であるが、予定地は天王崎地区急傾斜地等崩壊危険区域や土砂災害警戒区域に指定されている。また、湯本駅前は、駅前広場・交流拠点エリアとされ、駅前交流拠点施設に支所や図書館などが移転するが、令和元年東日本台風そして台風第13号でも冠水した区域である。
これらについて、住民から不安の声が聞かれるため、災害リスクの回避、災害の未然防止の観点から、以下伺う。
ア、御幸山公園の整備について、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」では第7条に「行為の制限」があり、「急傾斜地崩壊防止施設以外の施設又は工作物の設置又は改造」「のり切、切土、掘さく又は盛土」などは知事の許可を受けるものとし、第9条で管理者等に「土地の保全等」を求めているが、「福島県建築基準法施行条例」第5条「がけ』条項も含め、本市は法例を遵守し、作業用の搬入路造成工事や温浴施設工事における安全の確保、搬入路造成や温浴施設整備による災害リスクの回避など災害防止対策はどう進めているか。
イ、湯本駅前の冠水区域について、湯本駅前は、令和元年東日本台風そして台風第13号でも冠水常習区域であり、嵩上げ造成すれば地形改変により周辺区域の浸水リスクも高まることから、周辺住民に不安の声があり、公共施設移転の合理性を問う声もあるが、こうした災害リスクを回避する災害防止対策はどう進めるのか。
ウ、常磐地区市街地再生整備事業に伴う災害リスクの回避と防止策に関する住民の合意形成について、あらためて災害リスクの回避と防止策などを地権者はじめ周辺住民に説明・協議する開かれた場を設け、合意形成を図るべきではないか。
2、水産業の復興・再生について
本市の水産業は、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で大打撃を受け、これまで漁船・施設等の復旧、沿岸漁業の試験操業、生産・流通体制の再構築、放射性物質の自主検査体制の構築などに取組み、「常磐もの」の安全・安心の確保と情報発信を行い、令和3年3月末で試験操業を終了し、現在、本格操業へ向けた移行期間に入っている。
福島県漁連によれば、昨年1年間の福島県沖の沿岸漁業の水揚げ高は、5,525トン、約34億9,700万円。また、いわき市漁協の水揚げ高は961.9トン、約7億1,061万円で震災後の最多を更新したが、震災と原発事故前と比較して、水揚げ量はおよそ2割、水揚げ金額は4割にとどまっている。漁業者が、漁獲量増大に向けて取り組んでいる矢先、ALPS処理汚染水の海洋放出が強行された。
そこで、市民の宝である、多彩な魚介類に恵まれた豊かな潮目の海を守り、本市水産業の復興・再生めざす観点から、以下伺う。
(1)本市水産業の現状について
ア、本市の漁業就業者は、震災前の平成22年と直近でどう変化しているか。
イ、本市の漁協別漁船隻数は、震災前の平成22年と直近でどう変化しているか。
ウ、沿岸漁業・沖合漁業別水揚、主要魚種別水揚、回船別水揚など、本市の水揚げ状況は、震災前の平成22年と直近ではどう変化しているか。
エ、本市の水産加工業協同組合数は、震災前の平成22年と直近ではどう変化しているか。
(2)第三期いわき市水産業振興プランの取り組みについて
本プランは、令和4〜7年度を計画期間として、震災からの復興に対応しながら、通常操業への移行を踏まえ、本市の水産業の振興に向け各施策を実施し達成状況を把握する数値目標を設定している。そこで、プランの進捗状況を伺う。
ア、第三期いわき市水産業振興プランの数値目標について、水揚量や沿岸漁業の新規就業者数など10指標の数値目標の令和4年度の中間達成状況はどうなっているか。
イ、重点施策 水産業担い手の確保・育成について、将来的な水産業後継者の確保・育成に関する本市の取り組みはどうか。
ウ、重点施策 ブランド力の向上・名産品の磨き上げについて、2010年の東日本大震災前の年間水揚げ量が1.6トン程度だったのに対し、2021年はおよそ6トンと3倍以上増え、「磐城イセエビ贅沢姿蒸し」のような商品開発もあり、「常磐もの」の新名物として脚光を浴びる伊勢海老も含めて、ヒラメなど本市の名産品の磨き上げ・ブランド力の向上に向けた取り組みはどうか。
3、いのちを守る、原子力災害対策について
(1)ALPS処理汚染水の海洋放出に伴う本市独自の海域モニタリング等について
本議会6月定例会は、2015年の国と東京電力の「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」という県漁連等への文書約束の履行を求め国に意見書を提出し、東京電力にも決議を手交してきた。しかし、国は、8月22日関係閣僚等会議で海洋放出を決定し、本市や本市議会への事前説明もないまま、8月24日強引に海洋放出を実施した。誠に遺憾極まりない。海洋放出は30年以上にわたるため、漁業者は子や孫など後継者が安心して漁業を継続できるか、不安を訴えている。
市長は8月22日、海洋放出の決定について「大変遺憾」「市として受け入れがたい」とし「国が放出に踏み切るというのであれば、市独自に検査体制をつくり、トリチウムの検査を行うことを検討」と表明し、これまでにトリチウムの監視体制をつくった。
本市の海域モニタリング等について、市民の安全・安心の確保の観点から、以下伺う。
ア、本市独自の海域モニタリング実施体制について、放出している核種はトリチウムだけではないため、最低限、測定方法が安定的に確立されているセシウム134、セシウム137、ストロンチウム90を含めたモニタリングを実施すべきではないか。
イ、海水のサンプリングについて、海面の表層サンプリングだけ実施しているが、海水のサンプリングは、1地点につき、海面の表層と採水機を使う海底付近の下層の縦2箇所のサンプリングが肝要であり、検査の実効性を高めるため改善すべきではないか。
ウ、トリチウムの検出下限値について、目標値は10Bq/Lだが、国が定める公定法で測定を実施した場合、トリチウムは現在、0.02Bq/L〜0.4Bq/L程度まで測定値を下げることが可能であり、委託先のJAEAは公定法で実施できる。本市調査が年4回実施であることから、時間をかけて測定結果を出し、データの信頼性を高め、市民の安全と安心を確保すべきではないか。
エ、魚類、海藻類の分析実施の基準について、本市は「海水分析において、平時より高い値(20 ㏃/L)が検出された場合に魚類、海藻類の分析実施。」するが、福島県放射線監視室の令和4年モニタリング結果の概要報告よると、いわき市沿岸海域で小名浜港沖から0.53Bq/Lが検出され、あとは不検出、検出下限値は0.38~0.4Bq/Lである。20 ㏃/Lが検出された場合では、数値が高すぎるため、基準を見直し、県の令和4年データを基準として、魚類、海藻類の分析を実施すべきではないか。
オ、国と東京電力への要望について、放出を強行されても福島県漁連は反対の立場を堅持しており、30年以上とされる海洋放出に対して、本市は、漁業者の生きがいを守り安心して漁業を継続できるよう、国と東京電力において、速やかな損害賠償はもとより、あらためて海洋放出を中止し、地下水の止水対策の実施、モルタル固化などの代替案の検討を、国と東京電力に求めるべきではないか。
(2)増設ALPSの配管洗浄作業での洗浄廃液よる労働者被曝事故について
10月25日、福島第一原子力発電所で汚染水から放射性核種を濾し取り処理する、増設ALPSの配管洗浄作業中に洗浄廃液を被り作業員が身体汚染する事故が発生した。この洗浄作業は、配管内部に溜まった炭酸塩スラリー(放射性汚泥)を硝酸で溶解させるもので、ALPSの運用上、必要不可欠な作業とされ年1回実施している。今回は、前処理設備から吸着塔につながる配管内の洗浄を実施していた際、洗浄廃液を移送していた受け入れタンクから仮設ホースが外れ、洗浄廃液が飛散し、ALPSを通過するときに除去された、放射性物質が凝縮された炭酸塩スラリー(放射性汚泥)を含む約44億ベクレル/Lの高濃度の洗浄廃液をかぶり身体汚染するという、重大な汚染水作業の被曝事故である。
東京電力は当初、漏えい量は100mL公表したが、その後、数Lと変更、作業員の数も当初は1次請企業の5人としたが二転三転し、11月15日には10人になった。結局、元請の東芝が4人、2次請1社1人、3次請3社5人で、元請の東芝の設計担当者の弁操作が、3次請作業員の2人を高濃度の廃液で被ばくさせた事件だったことを1ヶ月間、隠していたことが判明した。
30年以上とされる海洋放出における重要な多核種除去設備での労働者被曝事故であり、多重下請け構造の中で、東京電力の責任は曖昧にはできず、福島第一原子力発電所の現場で作業員として働く多数の本市市民を守る観点からも、以下伺う。
ア、高濃度の洗浄廃液を被り身体汚染した労働者被曝事故について、現時点で、身体汚染による被曝の実効線量や皮膚の等価線量の評価は不明だが、原子力規制委員会の山中委員長は「今回の事案というのは東京電力の実施計画違反であると。特に今明確になっている部分については、東京電力が決めた業務マニュアルに従っていないという、アノラックを着てそういう溶液を扱うような場合には作業するという、そういう計画違反であるという認識」と記者会見で述べているが、原子炉等規制法に基づく実施計画違反事件であることも含め、本市はどのように認識しているか。
イ、国と東京電力への対応について、2013年にも汚染水を被り身体汚染した被曝事故があり、東京電力はその際も再発防止を誓っていながら、今回も装備の不備、作業計画が不完全のまま危険業務を実施させている。効率優先と情報隠蔽の企業体質が改善されない限り、事故の再発防止は不可能である。本市は、国と東京電力に対し、本件被曝事故の原因の徹底究明と情報の公開、装備の不備・作業計画の不完全のまま危険業務に従事させない・再発防止、身体汚染に関わる福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画の遵守、労働者被曝事故の根絶などについて、汚染水処理はじめ現場で働く市民を守るため、国と東京電力に強く求めるべきではないか。
4、いわき市政の課題について
(1)マイナンバーカードとの一体化による健康保険証廃止の見直しについて
本年6月、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案」が成立し、従来型の健康保険証を来年2024年秋までに廃止し、マイナンバーカードと健康保険証が一体化される。
一方、共同通信社の全国電話世論調査によると、現在の健康保険証を廃止しマイナンバーカードに一体化する政府方針に関し、延期や撤回を求める声が計72.1%に上り、医療現場に与える影響、高齢者・障がい者の医療へのアクセスに与える影響も極めて大きいと指摘され、マイナンバーカードとの一体化により高齢者施設・障がい者施設等で保険証を預かることができなくなることなどの弊害や、「他人の情報に紐づけられていた」ケースや資格確認できず窓口で10割の負担となったケースなどトラブル多い。
政府方針の延期や撤回を求める声が強い健康保険証の廃止について、以下伺う。
ア、本市においてマイナンバーカードを保険証として利用する申込数や申込率、利用率などマイナ保険証の運用状況はどうか。
イ、マイナンバーカードを持たない等の被保険者にプッシュ型で交付する資格確認書は、現在の保険証と実質的に同等とされるが、交付数、有効期限なども含め、本市の事務手続きなどの準備はどうか。
ウ、従来の健康保険証の廃止は、地域医療に重大な弊害をもたらし、国民皆保険制度の根幹を破壊しかねず、国民の医療を受ける権利を損なうことから、本市は、国民健康保険の保険者として、医療現場と医療を受ける患者の声に耳を傾け、国に対し従来の健康保険証の廃止を撤回し、併用できるよう求めるべきではないか。
(2)いわき花火大会に対する本市の対応について
8月、いわきの真夏の夜を彩る、いわき花火大会が4年ぶりに本格開催された。68回を数える今年も、アクアマリンパークをメーン会場に、音楽にシンクロさせて、スターマインの『創作花火』や市民が思いを込めた『市民花火』など約10,000発の花火が打ち上げられ、市民をはじめ県内外から多くの観覧者が来場し、花火大会を満喫していた。
いわき花火大会は、企業や地元住民の皆様から協賛をいただき、1954年から、市民ボランティアによる「大会実行委員会」が運営し開催してきた。実行委員会、ボランティアの皆様のご苦労に感謝しつつ、以下伺う。
ア、本市有数の大規模誘客イベント=いわき花火大会について、2023年決算見込みによると花火費約3,351万円、警備費と設営費の合計が約3,685万円となり、今年は花火単価がコロナ前に比して1.5倍といわれたが、設営・警備費用が花火打ち上げ費用より上回った。本市観光におけるいわき花火大会の役割、資材・人件費の高騰、駐車場の確保、ボランティアの高齢化などの課題を踏まえ、いわき花火大会の事業の内容、運営、財源などいわき花火大会の現状について、本市はどう把握しているか。
イ、観覧者の交通手段について、小名浜地区の公共交通はバス・タクシーのみであり、本年、当日は自家用車による交通渋滞が午後3時半頃から発生したとされる。他の公共交通機関として、1972年に旅客運行が廃止された福島臨海鉄道が、1997年12月に「常磐線全線開通100周年記念」「いわき・ら・ら・ミュウ」開館に伴う、お買い物ツアー臨時団体列車の経験、さらに、2004年と2005年の2回花火大会特別列車「アクアマリンライナー」をJR泉駅~福島臨海鉄道小名浜駅区間運行の実績があり、観覧者の交通手段の確保に向け、本市として、大会1日限定の旅客運行を働きかけてはどうか。
ウ、いわき花火大会に対する本市の補助金は、いわき花火大会、海遊祭及びいわきおどり小名浜大会の3事業部門を一体として補助対象としてきたが、直近の花火大会事業費のみの補助割合はいくらか。
エ、約10,000発の花火を打ち上げる花火大会への中核市など他市における補助額や事業費にかかる補助率など行政による補助の状況はどうか。
オ、本市は、事業費にかかる補助率の拡充について、今後どう対応するのか。