4月25日、福島原発刑事訴訟支援団と福島原発告訴団は、「第4次最高裁署名提出行動」を最高裁判所前で行いました。
東電福島第一原発事故の責任をめぐり、東京電力元経営陣3名が業務上過失致死傷罪に問われている東電刑事裁判(強制起訴事件)は、全員無罪とした判決が下されましたが、上告され、現在最高裁に係属中です。
この不当判決の破棄と、日本における最大の公害事件であることを鑑み、大法廷に回付して審理が行われるよう求め、この刑事事件の係属部である最高裁第二小法廷の草野耕一裁判官が、東京電力と密接な利害関係のある西村あさひ法律事務所の代表を務めていたことから、草野裁判官にこの事件の審理から外れるように署名を集めてきました。
午前10時、最高裁正門前の署名提出行動には、弁護団も含めて多くの人が参集して、最高裁判事への呼びかけを行いました。告訴団長の武藤類子さんの挨拶、弁護団の海渡雄一、大河陽子両弁護士の力強いスピーチなどに続き、最高裁正門前から最高裁判事の部屋に向かって、「最高裁は口頭弁論を開け!」「草野判事は自ら身を引け!」「最高裁は原発事故の被害に向き合え!」とシュプレヒコールをあげました。
その後、草野判事の回避を求める署名の第3次分3,911筆(累計12,573筆)を担当官と面談して提出しました。また、弁護団は、被害者代理人として、昨年来の福島第一原発での汚染水の処理設備での労働者被曝事故や汚染水漏洩事故、能登半島地震、長期評価に関わる書面を提出しました。
午後からは、弁護士会館で集会「司法の独立を問う!元裁判官から見た東電刑事裁判の核心」が開かれ、弁護団の報告後、元裁判官の樋口英明さんが、「司法権の独立と裁判官の責任」と題して講演しました。
山内尚子さんが以下のようにレポートしています。
『東電刑事訴訟支援団の午後の集会は、原発を止めた裁判官・樋口英明さんの「司法権の独立と裁判官の責任」と題した講演でした。
まず能登地震に触れ、珠洲原発の計画が28年間の粘り強い住民の闘いによって白紙撤回されていなかったら、今頃日本は終わっていたかもしれず、このことに一番感謝しなければならないのは日本政府だというお話から始まりまりました。
原発や司法のとらえ方を簡潔に、ユーモアも交えてとても分かりやすく話してくださり、樋口さんの深い見識と人柄が伝わってくる内容でした。寝不足でしたが、まったく眠くならずにうなづくことばかりの面白い講演でした。
印象に残ったことを記しておきます。詳しくは樋口元裁判官のご著書をお読みください。
・・・・・
〇原発の本質はただ2つだけ。
・人間が管理しないと暴走する。
・暴走したらその被害はとてつもなく大きい。
⇒それがわかれば裁判も難しくない。
〇脱原発の最大の敵は、先入観による無関心。
〇福島原発4号機は東日本壊滅の危機を、神の技としか思えない奇跡の重なりが救った。
〇原発は自国に向けられた核兵器。
〇6.17最高裁国家賠償訴訟判決多数意見は、全く説得力がなく、司法試験なら確実に落ちるレベル。
〇裁判は普通の人間性で素直に考えればいい。
〇司法の独立とは、裁判官が良心と法に従うこと。もし、その結果が悪かったらそれは法律が悪いということ。しかし、裁判官が雑念に従った場合、全面的に裁判官が悪いという歴史的審判を受けることになる。
〇良心と法にのみ従う裁判官を多く見てきた。絶望することはない。
〇何事も成功するまでは不可能に思える(ネルソン・マンデラ)』