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第二セシウム吸着装置サリーでの汚染水漏洩事故で東電交渉

 脱原発福島ネットワークなど福島県内10市民団体の再開第78回東電交渉が、5月15日午後、いわき市で行われました。
 今回は、「増設ALPS配管洗浄作業での身体汚染による労働者被曝事故についての要請書」の再々回答と質疑から始まり、2月7日の第二セシウム吸着装置サリーでの汚染水漏洩事故についての説明と質疑などが行われました。
 東京電力の回答と質疑の主なやりとりは、以下の通りです。 
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1、「増設ALPS配管洗浄作業での身体汚染による労働者被曝事故についての要請書」の再回答と質疑応答

・前回の質問事項への回答と質疑

[市民質問]2014年第19回評価検討会の小坂福島地域統括の発言について再回答をお願いしたい。
[東電回答]当時のストロンチウム処理水よりも現在の放射性物質濃度は低くなっているため、作業場の雰囲気線量は大幅に低減していると確認している。引き続き、作業員の被曝低減に努めていく。
[市民質問]どのくらい低くなったと考えているか。
[東電回答]2014年(H26)から3万分の1に下がっている。
[市民質問]計算すると具体的にどのくらいの数値か。
[東電回答]H26年(2014年)3月10日におけるフィルタ取り換え作業時の線量は、フランジ表面線量で最大ガンマ線50mSv/h、ガンマ・ベータ線合わせて1500mSv/h。
[市民質問]サリーはどこにあるか。
[東電回答]サリーは高温焼却炉建屋の1階にある。サリーⅡはサイドバンカー建屋の2階にある。高台33.5mの方の増設ALPSに、クロスフローフィルターがついている。サリーはその前段にあるセシウム吸着装置。
[市民質問]1階にあるということは周り全体が汚染されていると考えてよいのでは。

*2月7日の第二セシウム吸着装置サリーでの汚染水漏洩事故に関連して
[東電説明]
【事故概要】(資料に基づいて説明)高温焼却炉建屋の中に、第2セシウム吸着装置(サリー)がある。吸着棟が7つあり、その上に点検対象弁がある。その弁の点検を行う必要があり、それに先立って、配管の中の線量低減作業を行う必要があった。配管の中を水道水で洗浄する。この部分を洗浄する時に、赤い点線の部分(ドレン弁)が開いていたため、注水したときに左上のベント口から水が漏れた。蛇口からも水が漏れた。
時系列で説明すると、2月5日(事象発生2日前)にサリーは運転を停止。運転管理部門で、フィルタ及び吸着のドレン弁を開けて注意札を付けた。2月7日に事象発生、8時7分ごろ作業開始。8:15に系統の確認実施。現場の確認漏れが確認した時間帯。その後水漏れ対応となっていく。
漏洩量は1.5トン。最大、セシウム137で6.5E+09Bqが漏洩し、法令報告対象に該当した。
自動的に空気を抜く特殊な弁「オートベント弁」は、水の放射性分解で水素が出る。水素が溜まれば自動的に排出される。ドレン弁は通常閉まっている。サリーが停止したため、運転管理部門で操作してドレン弁を空けた。この状態で注水洗浄してしまったため、建屋の下に流れるはずだった系統水が、流れ出てしまった。
【問題点】
 (1)現場に即した手順書になっていなかったこと。当該弁を「『閉』を確認する」ではなく「『開』から『閉』に操作する」とすべきだった。
 (2)現場の作業段階の問題点もあった。現場の作業で、指差し確認や声出し確認は行っていたが、弁が「閉」であることの確認に至らなかった。この弁は開いていることを知らせる「注意札」も、作業員は見落としていた。
【対策】
(1)管理面の対策として、系統管理は現場に精通している運転管理部門に一元管理することとした。保全部門も現場状況をタイムリーに把握し、手順書を作成し、運転部門に依頼する。運転部門は作業前の系統構成を一元的に実施し、保全部門へ引き継ぐ。
(2)組織面での対策として、水処理に関する設計と保全を担うグループを整理・統合して一元的に管理する「水処理センター」を作ることを規制庁に申請中。
(3)協力企業にも対応を求める。現場作業員にまで浸透させる。
(4)設備面の対策として、ベント口については建屋内の管理された区域に排出する構造に変更する。
なお、規制庁から指示を受け、汚染された外側の土壌も回収した。また、その他経産大臣と規制庁から指示を受けているので、それについても対応している。

[市民質問]高線量下での作業時におきた事故だったという認識でよいか。
[東電回答]1・4号機の汚染水を4号機左下に溜めて、サリーに流して処理している。地下に降りていくことはできない。サリーⅡは中央上のサイトバンカー2階部分。左下にプロセス主建屋があり、ゼオライト等がある。
[市民質問]「高線量の作業だから早く終わらせたかった」と表記があるが、どのくらいの線量だったのか。
[東電回答]一番高い所で1mSv/h。建屋内の空間線量率については2022年4月1日~2023年3月31日に測定されたデータを集約し、2023年9月29日に公開しており、それを参考にすると一番高い所で1mSv/h。
線量の低減はしてきており、建屋内で高線量の汚染水を処理するところの外側はまだ高いので、通常作業しているところと比べると線量が高いので気にかけていたという事だと思う。
[市民質問]作業員の線量限度は。
[東電回答]東電の限度で言うと、1年間50mSv、5年間で100mSv(ICRP90年勧告に基づく法令改正がH.13にあり、決まった。それ以前は、毎年50 mSvだった。)。
20 mSvを超えると仕事ができなくなるなど支障が出るので、大体18mSvまでという事で運用されている企業が多い。
建屋の中すべてが1mSv/hではないので、線量がばらつく。線量が高い所を意識するとなるべく時間をかけないようにという事がある。きちんと確認しつつも短時間で終わらせたいという心境だったのでは。
[市民質問]管理は各社で違うだろうが、仕事ができなくてお金がもらえなくなる、あるいは別の職場に移動しないといけないといったことがあるのか。
[東電回答]そうならないように、他の建屋の外側で作業したり、うまく線量と作業内容を企業の方でうまく回している。誰にどのような仕事をお願いするかは、元請け企業の判断となる。
[市民質問]危険なところほど作業が粗相になる、焦って作業しているという状況ではないか。また、写真を見ると注意札が小さい。これで良く注意ができると思う。
[東電回答]注意札は、運転員が運転操作上、「通常ではない状態」となっていることを知らせるためのもの。当直の方では「通常と異なる状態」にしているとわかるが、作業員は黄色いタグを見て、手順書に書いてあるタグがあると把握してしまった。
[市民質問]オートベント弁は故障していたら水素爆発の危険性があるのでは。対策後のベント口が建屋内に入っているが、水素が滞留して水素爆発しないのか。
[東電回答]水は落ちるが、水素は建屋外に出る。二重配管にして建屋内で水素と水を分離できるようにした。(ベントの開口に傘をかけ、水は配管を通るようにしている。水素は建屋の外に排出することで水素と水が分離できるようになっている。)
[市民質問]従来通り、作業の状態で開け閉めしたら必要ない措置なのですね。
[東電回答]作業員がいつでも100%の仕事ができるかといえば間違いも起こすので、ミスが起こっても大丈夫なような。設備があるからミスして下さいという事ではなく。二度と起こらないということが誰も確証できないので、やはり人がやる事なので日常の生活でもスイッチを間違えるという事もあるので、作業についてはその都度新しい場所かもしれないので設備を改良していかないといけないというのが一つの教訓。

[市民質問]このような高線量下の作業は多いのか。1mSv/hだと同じ人が年間何度も作業できない。危険な作業を初めての体験としてやることの多い現場なのか。
[東電回答]作業は一つの班で行い、全員が初めてといことにはならないようにしている。前回関わっている作業員に出てきてもらう等、全員が初めての現場・装置だとミスの可能性が大きくなるので、我々からはあまりそこまでは言えないが、企業の方で、経験されている方にやってもらうのが一つの。経験されている方が入れ替わって。
[市民質問]今回の場合はどうだったのか。
[東電回答]類似の作業として、Csを除去する吸着棟のバルブ点検を2~3か月に1回行っている。そのような意味では、現場へ行くのが初めてだったわけではないと思っている。
[市民質問]作業は1社でか。
[東電回答]サリーの通常のメンテナンスは一つの会社にお願いしており、その業者の下請けが行っている。
[市民質問]前の事故の時もそうだが、そこが一番の問題ではないか。請負だったりして、作業する人に対して直接指導できない。そういうところから結局今の事故が起きていると考えてしまうが。
[東電回答]安全を確保するためのバルブの開閉操作ははすべて東電がやって、作業する人には絶対にいじらないでくださいと言っている。増設ALPSでも開閉する予定のないバルブを閉めて詰まってしまったこともあるため、作業員には、自分たちが予定している作業以外は禁止するようにしている。そのことを各社から作業員にお願いするようにしている。
[市民質問]今回、弁を開けたのは東電か。
[東電回答]東電の運転員。作業するのに閉まっていることを確認すべきは、本来は東電の保全部門の管理員。しかし作業を行っている内に、「作業員さんお願い」「元請けさんお願い」という風になり、だんだん曖昧になってしまった。ベントの開閉の確認は、改めて東電社員が見ていくことにした。その上で、自分たちが作業する条件が整っていることを、作業員も点検する。
今までの作業は、系統が止まってすぐ洗浄作業をするため、常に閉まった状態で作業していた。今回は2日間あくということだったため、当直が、「水素が出てくるかもしれないから」といってドレン弁を空けてしまっていた。
[市民質問]そうすると、責任をどこが撮るのか曖昧になる。一次、二次請負作業員が点検している場合もある。東電が点検しても、他企業が動かしてしまう可能性もあるのでは。
[東電回答]13年前は、当直の運転員が全部の作業にあたってしまうと被曝限度を超えてしまうので、保全の方で責任をもって行う事にしていた。その中で、いつもと異なって弁を開けてしまったらそれを報告するといったコミュニケーションをとることもしなかった。今回を機に、サリーの対策としては、バルブ開閉の責任は当直の運転員と明確にした。
[市民質問]当直の仕事を増やしたら大変ではないか?
[東電回答]事故後は線量が高く、資格を持つ人間だけでは回らないので一度作業員に割り振ったが、対策としては汚染系統の系統構成を運転員が見るという昔の体制に戻した。実際に現場での作業というよりは作業の開始前に系統のチェックをすること。一次の仕事が全部乗っかってくるわけではない。
[市民質問]現場に行けば被曝量はまた上がるし、担当としてはとんでもないことだと思うが、手当はあるのか。
[東電回答]検討したい。水処理に関する当直部門も新たに設置する。汚染水処理、サブドレン・地下水バイパス等の設備に関連する人員を補充する。ALPSはほとんど被曝しないため、トータルで考えると、サリーでの作業が入っても、線量の負荷はあまり心配しなくて良いと考えている。
[市民質問]水処理センターが弁の開閉の確認をやるのか?
[東電回答]作業の計画をする部門と、管理をする部門が今までは別組織であったが、一つにし、運転側との窓口を一つにしてセンター側で計画した通りの系統構成で合っているかを確認し、系統構成して作業の準備をする。
[市民質問]そうしたら今度、馴れ合いになっていくのでは。それをくり返しているような気もする。本当にそれでいいのか。実際の作業を安全にすることに力が入っていないような気がする。
[東電回答]今後は社外から、メーカーで経験した方や元請けで受注して現場を管理していた方にも来てもらい、外部の目を行き渡らせたい。
[市民質問]汚染度土30トン、どこに保管?
[東電回答]コンテナに詰めて、廃棄物保管庫に保管。
[市民質問]問題のあった手順書については、第三者チェックはするのか。
[東電回答]実際に現場で作業する方が、その手順書で安全性と設備に影響がないか確認したうえで作業してもらう。手順書2〜3社の目を通す。

*市民より東洋経済の記事紹介。https://toyokeizai.net/articles/-/22253
[市民質問]かつて東電と共同開発した「炭酸塩沈殿法」。これに、わずかな改良を加えると、放射性ストロンチウムは数百ベクレル/リットルの濃度まで除去できるとのこと。配管にも活用できるのではないか。
東電の2023年資料「多核種除去設備出口の放射線濃度」によれば、Sr90は0.1-10Bq。除去が難しいのではないか。
また、ALPSの増設と高性能が動いていないのはなぜか。キュリオン、サリーⅡも15日しか動いていない。前処理はかろうじてやっているけれど、本格稼働が既設ALPSのみ。ALPSは動いていないと私は思うのだがどうか。
[東電回答]特に動かしっぱなしにしなければいけない理由が無い。高性能も400トン/日で容量が多いので動かしていない。1日100トン出ると、2~3日に1回で処理できる。
[市民質問]2次処理が必要なのが70%あるのになぜ動かさないのか。
[東電回答]2次処理は放出する時に行うが、基準を満足している3割を優先的に放出している。2次処理はまだ必要ないので稼働していない。
[市民質問]2次処理は同じ設備を使うのか
[東電回答]告示を微量に超えているものはROという逆浸透膜を使用する。2次処理は検討している。
[市民質問]前処理が無くなったのは高性能。増設を使ったほうがよさそうなのになぜ既設を使うのか。
[東電回答]A系とB系を使っていない理由は、Aは改造中。Bは身体汚染事案の影響で昨年夏に点検して止まっている。長い期間をみていただくと、既設を点検しているときはA系B系も稼働している。
高性能は、処理量は多いが一日400トンを溜めて高性能を使うかというと…既設の1系統250が運用しやすい。朝に稼働して夜に停止するなど。運転計画との兼ね合いを含めて既設を使っている。
[市民質問]高性能は、前処理が必要ないから今回のような事故も起こさず、良さそうだが。
[東電回答]一定の時間を安定して運転することも必要。400トンを2時間で動かしても、装置して通水しはじめは除去効率が不安定。

[市民質問]2022年7月28日、Sr90濃度に告示濃度基準超えがあったが、その理由が書かれていない。なぜか。Sr90の処理は難しいはずだ。沈殿するから硝酸で溶かそうとしているだろう。こんな設備があってよいのか。
多核種除去設備出⼝のSrの告示濃度が基準超えになった理由をご回答いただきたい。
参考:「多核種除去設備出⼝の放射能濃度」p.5
参考:「22年10月19日 第3回廃炉安全監視協議会資料 ALPS処理装置出口水のストロンチウム90濃度の告示濃度限度超えについて」
[東電回答]次回、回答

[市民質問]ベータ線の除去は難しい。今、浪江で大学が訓練しているが国家的対策として進めなければならない程、難しい仕事。2019年、特定原子力施設監視・評価検討会でも話題になっている。
[東電回答]処理水放出の検査について、増員を行っている。
[市民質問]分析体制について次回、ご回答いただきたい。
[東電回答]次回、回答する。

*質問に対する文書による回答について
[市民質問]聞き取って書くのが困難なため、事前に書面で質問をするので書面での回答もいただきたい。
[東電回答]1か月以内に書面で回答するのは困難。すべて公開の情報でもあるので、それを東電で事前に回答として送らなくても良いと考えている。文書で回答した後、市民側の意にそぐわない回答だったとウェブサイト上で公開されると困るため、文書での回答は控えたい。

*海洋投棄について
[市民意見]何か問題があって放出を止めた後に再放出となった際、「問題なく放出しました」と言うのはやめていただきたい。作業員達にとっては大変な作業だと思うので。

*以下は、時間切れのため次回に続く。

2、「理解と合意なき汚染水の海洋放出の中止を求める要請書」(2023年3月16日提出)への再質問への回答と質疑

② 放出する全放射性核種の濃度、総量などの全情報を公開し、海底土や海浜砂、生物への吸着・濃縮による放射能の蓄積とフィードバックを再評価すること。
[市民質問] 漁業者にはどのような利益になるのか?
[東電回答] 放射線リスク、ALARAの原則に従い、できるだけリスクを低減させる方針。国の基本方針を踏まえ国際法や国の汚染水対策委員会に基づき、安心して帰還できる環境を整え、廃炉に向けた取り組みを進める必要。地域および国民のみなさまに対し、貯蔵に伴うリスクが明確にされているので処分を先送りできない。
[市民質問] 漁業に特定して答えられない。次回、再回答を求める。
[市民質問] IAEAの正当化プロセスを踏まえているか?
[東電回答] 2023年7月公表の包括的報告書において、正当化の責任は日本政府にあり、IAEA安全基準のアプローチによって、日本政府が正当化の意思決定プロセスを進めたと評価されていると認識。
[市民質問] IAEAが評価する前に日本が決めてしまっており、決めたのは政府で、IAEAは聞かれていない。日本が決めた。アドバイスはしたと言っているのか?正当化の根拠を、簡潔に示して欲しい。
[東電回答] 次回、回答。
[市民質問] 便益と弊害というが、現時点で1400億円の費用支出があり、国民の税金ではないか?国民負担はいくらか?
[東電回答] 放出設備構築維持や風評対策に1400億円かけた費用支出があるとは、当社としては承知していない。当社として答える立場にない。関与しない。国に聞いて欲しい。
[市民質問] 自社が起こした事故で、「政府予算だから知らない」という、言いぐさはひどい。そうやって生きながらえている企業という自覚がない。再回答を求める。
[東電回答] 次回、回答。

③地下水の止水、トリチウム分離技術の実用化、大型タンク保管案やモルタル固化保管案等の検討、スラリー安定化処理設備の設置など汚染水についての抜本対策を確立する事。
[市民質問] 27年3月、安定化処理施設の運転開始までの工程は?
[東電回答] 2026年末にできるよう検討中→次回再回答

3、22年5月12日付「理解と合意なき汚染水海洋放出設備工事の6月着工の中止などを求める要請書」への東京電力の回答など、これまで質問事項への未回答への回答
○質問ースラリーの放射性物質は?前処理で出た沈殿物。処理後のストロンチウム等。
[東電回答]・次回、回答。
○質問ーろ布交換作業の線量、ろ布の濃度は?
[東電回答]・次回、回答。

4、22年11月16日付「福島第一原発1号炉の原子炉圧力容器を支えるペデスタルの損傷に関する早期の詳細調査と緊急安全対策を求める要請書」への再回答と質疑




















by kazu1206k | 2024-05-27 19:19 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


by kazu1206k