福島県知事辞職とプルサーマル、原子力政策の行方
2006年 10月 01日
「権力は腐敗する」というが、福島県発注工事の談合事件で、知事の実弟や元福島県土木部長を逮捕されたのを受けたものだ。
前日の記者会見では、国策の原発政策に真っ向から対峙して来たことを振り返って、悔しさも滲み出ていた。
9月30日、東京地検特捜部は、福島県庁に家宅捜査を行い、「官製談合」の実態解明と前知事及び県幹部の責任追及の構えである。しかし、捜査の端緒であり、知事の実弟等ときり結んでいく導入部である水谷建設と前田建設工業、東京電力の関係には、いっさい手を触れようとはしてしない。
1994年、東京電力は、福島第一原発7.8号機の増設計画とともに、サッカーナショナルレーニングセンター「Jヴィレッジ」建設を福島県に申し出た。「Jヴィレッジ」を福島県に寄贈する事前の話し合いで「東電のメッセンジャー的なことをしていた」とされるのが、起訴された水谷建設元会長である。
その後、水谷建設は前田建設工業の下請けとして、「Jヴィレッジ」建設の造成工事、福島第二原発浚渫土砂構外搬出工事、県発注の木戸ダム工事へと進んでいった。
電力業界では「佐藤知事の在任中は、福島でのプルサーマル実施は不可能」との共通認識があった。しかし、佐藤栄佐久知事の辞職で、凍結されていた東京電力のプルサーマル計画が再び動きだすとの期待感が電力関係者の間で高まっているという。
11月12日に予定される出直し知事選に対して、自民党県連の中には「官僚などから清新な人材を擁立したい」という意向もあると報じられている。
国策に歯向かい、国策捜査によって、辞職した知事に変わって、霞ヶ関の中央官僚が国策推進のために落下傘部隊よろしく登場するようなことになれば、何をか言わんや、である。
県民の安全・安心を最優先とする原子力政策、プルサーマル計画の白紙撤回、核燃料サイクル政策の見直しは、福島県政にとって継承しなければならない重要施策である。