「平和の推進、趣旨は計画素案に盛り込む」ー市国民保護計画で市の回答
2007年 01月 25日
この「市国民保護計画」は、憲法の平和主義の原則に反し戦争を想定した有事法制の地方自治体への押しつけであるため、昨年2月議会での条例制定の際も、賛成28対反対11で賛否が分かれていた。
しかし条例成立後、市国民保護協議会の検討部会での作業は進み、昨年12月には素案のパブリックコメントが実施されている。
このため、市議会市民クラブとして、昨年11月に「いわき市国民保護計画」についての「市民の意見を聞く会」を開催して市民の意見・要望を取りまとめ、昨年12月22日に「平和の推進、基本的人権、国際人道法」の明記を市長に対して求めた要望書を総務部長に提出した。
1月17日に、第3回目の「市国民保護計画」検討部会が開かれ、前回までの提出意見に基づく修正内容の報告、各関係機関の意見照会への対応とパブリックコメントの結果とそれへの考え方の協議後、「市国民保護計画」の事務局素案が了承された。
提出した要望の内容は、「平和の推進」や「原子力災害」などが加筆修正されて事務局素案として一部反映されたが、課題も多く残された。
19日、担当の総務部消防防災課より、以下の通り、要望書に対する回答があった。
<いわき市国民保護計画の策定についての要望書に対する回答>
項目/回答
1 いわき市国民保護計画(以下「計画」の策定にあたり、平和の推進が前提であることを明記していただきたい。
(1) 「はじめに」の項を起こし、「戦争はあってはならないこと、戦争を防ぐため最大限努力することは当然です。いわき市は、恒久の平和を願い、国際交流などを通じて相互の理解を深めるよう努めるとともに、万一有事が発生したときのことを考えて、住民の安全と基本的人権を最大限確保するため国民保護に取り組むものです。」「国民保護は万一の有事等の際に住民の生命、身体、財産を守るものであり、戦争を肯定するものではありません。」と明記していただきたい。
●回答●平和の推進については、「市民の意見を聞く会」での意見を参考に、総論の冒頭において、非核都市宣言に基づく、平和社会を今後も築いていくことを明記したことから、本意見の趣旨は計画素案に盛り込まれているものと考えております。
2 計画では、基本的人権への配慮をより実効性のあるものとしていただきたい。
(1) 市民が、研修や訓練への参加を強制されないことを計画に明記していただきたい。
●回答●国民保護法(以下「法」という。)第42条第3項は、「住民に対し、当該訓練への参加を要請することができる」と明記されていることから、あえて計画に意見のとおり明記する必要はないと考えております。
(2) 「国民保護に関する啓発」の項では、3 国際人道法、有事における民間人の保護の普及啓発の項を起こし、その内容を明記していただきたい。
●回答●民間人の保護に関する第4条約だけでも、150条以上に昇り、内容の説明は膨大になるため、根拠条約のみの表現に止めたいと考えております。
(3) 要援護者支援ガイドラインの策定に当たっては、消防団・自主防災組織・民生委員・要援護者などへ説明会を開催し、障がい者、高齢者、入院患者、乳幼児の養育者、外国籍市民などの要援護者から意見を聴取して、それを反映させていただきたい。
●回答●要援護者支援プランの策定については、行政側で関係部局が情報を共有する各人ごとのプランを作成するのが主な目的であることから、支援者となる消防団等への説明会は実施しますが、要援護者からの意見は各人のプラン作成の過程において対象者の意見を聞くことにより、反映させて参りたいと考えております。
3 国民保護措置(以下「措置」)に従事する者の安全を確保していただきたい。(1) 市は、措置を行なう際、自らが雇用する臨時、派遣等の非正規労働者及び請負事業者に対し、措置に従事する意思を確認することなしに措置に従事させない旨を、計画に盛り込んでいただきたい。
●回答●法第22条において、市は国民保護措置に係る業務に従事する者の安全確保に配慮しなければならないとされております。
このことから、当該業務に従事する臨時職員や委託業者については、業務従事の際に、業務内容を事前に説明したり、あらかじめ業務委託契約に盛り込むことによって、意思確認を行って参りますので、あえて計画に盛り込む必要はないものと考えております。
(2) 市は、措置への従事に伴い次の者が死傷した際には補償することを計画に盛り込んでいただきたい。
① 自らが雇用する臨時、派遣等の非正規労働者
② 自らが委託契約した請負事業者に雇用された者
●回答●非正規労働者や請負事業者については、措置業務と死亡が因果関係にあるときは、通常の業務の場合と同様に、労働災害補償や業務委託契約の中で、補償を図るものと考えますので、計画に規定を盛り込む必要はないものと考えます。
4 市が避難誘導を実施する際、その危険度を独自に判断できるよう、自衛隊の下級部隊から直接情報を収集可能とする規定を計画に盛り込んでいただきたい。
●回答●市計画において、武力攻撃事態等発生の場合には、関係機関の活動調整機関として現地調整所を設置することとしております。
現地調整所のこのような機能からすれば、現地調整所において、自衛隊と調整を行なうなかで、避難誘導に参考となる情報を得ることは可能であると考えますので、計画に直接情報収集を可能とする規定を盛り込む必要はないものと考えます。
5 原子力発電所への攻撃に伴い大気中に放出される核分裂生成物の降下による被害を軽減するため、その被害の予測及び防災体制の整備、ハザードマップの作成に努めていただきたい。
●回答●被害の予測やハザードマップの作成については、市単独では困難であるため、県に対し、国による対応を要望して参りたいと考えます。
なお、防災体制の整備についても、国等の予測やハザードマップが作成されるまでは、現行の地域防災計画等の規定を準用して対応して参りたいと考えております。
6 避難民が他県から押し寄せてきた時、反対に他県に逃げる時の対応を計画に盛り込んでいただきたい。
●回答●避難についての具体的な方法については、計画中に盛り込むのではなく、今後策定予定の避難実施要領のパターン(避難実施マニュアル)の対象として、検討して参りたいと考えております。
以上