制御棒脱落は、市民への警告ー臨界事故の衝撃
2007年 04月 16日
衝撃は、日本最初の臨界事故が、東京電力の福島第一原発で起きていたことだ。大熊町の第一原発三号機で七八年に発生した臨界事故が二十九年間も隠され続けてきた。
原子炉の安全保護系の中心は制御棒である。車のブレーキだ。そのうち五本が引き抜け脱落して、核燃料の核分裂反応が連続しておこる臨界に達し、七時間半も原子炉をコントロールできなかった。一歩間違えば大事故に発展する可能性があったが、日本初の臨界事故は隠された。それ以降五つの原子炉で制御棒脱落事故が頻発。九九年には、東海村の臨界事故で多数の死傷者を出すに至る。最初の臨界事故が公表されていれば、東海村での臨界事故と犠牲は防げたと考えられ、東京電力の事故隠しが人命を奪う一因になった。
専門家からも、東京電力の臨界安全技術と運転管理に懸念が強まる。一方、重力に逆らって炉心底部から上部方向に挿入する沸騰水型原子炉の制御棒駆動機構と制御システムの欠陥や制御棒一本の落下事故しか想定していない国の安全審査の欠陥も指摘されている。
既に八八年、米原子力規制委員会は、制御棒脱落の可能性を沸騰水型原子炉メーカーに警告していたという。それを知りながら、東京電力と東芝や日立、国は、沸騰水型原子炉という欠陥炉を騙し騙し使い続け、国民を危険にさらし続けてきた。その罪は深く重い。
制御棒脱落は、市民への警告であろう。チェルノブイリ原発事故で、今も三〇キロ圏内に人は住めない。同じ環境のいわき。大事故の前に欠陥炉を止めよう。まだ間に合う。
(日々の新聞4月15日号「私の見方」)