東邦亜鉛小名浜製錬所による高濃度亜硫酸ガス放出で公害被害
2007年 08月 30日
これは定期修理の試運転後に起きたといい、高さ120mの煙突排煙中の二酸化硫黄濃度が警報設定値の250ppmをこえ、一時は通常の20倍以上の560ppmという高濃度の放出となったという。
原因は排脱吸収塔の不具合によるものとされるが、高煙突排煙中のSO2濃度が警報設定値250ppmを超え警報が出ているにもかかわらず、2時間以上運転を継続して高濃度亜硫酸排ガスを放出し続けた。
いわき市と事業者が結んでいる公害防止協定では、事業者は不測の事態により公害が発生する恐れがある場合、「直ちに応急の処置を講じ、かつ、その事態を速やかに復旧させる」とされており、問題が残る。2時間以上運転を継続し高濃度亜硫酸排ガスを放出して被害を出したのは、基本的な誤りだ。
放出された二酸化硫黄の毒性は、呼吸器を刺激し、せき、気管支喘息、気管支炎などの障害を引き起こす。
代表例は、足尾銅山鉱毒事件、四大公害事件の一つ四日市ぜんそくだ。
1970年代以降は、工場等の発生源での脱硫装置により対策が進んできたが、今回の高濃度の放出は波紋を呼び、市民から抗議の声が寄せられている。
公害防止協定上、公害発生時の連絡通報の遅れも、大きな問題だ。
今回の事故は、翌日の8月2日に、市の環境監視センターへ住民の被害通報があって初めて、事業者側が公表したもので、公害防止協定に基づく、事業者からの市に対する通報は住民の通報により市が事業者に問い合わせた後からだった。
行政は、公害防止協定基づく住民の被害補償についても事業者に解決を指導するとともに、立入調査において、事故原因やシステムのチェックなど再発防止対策を十分検証しなければならない。
また、今回の公害発生に基づき、起動時に排出するばい煙濃度の硫黄酸化物K値を管理指針に定めるなど、公害防止協定の見直しも必要だ。
市は市民の立場に立って、今回の公害発生に教訓に、公害防止協定締結事業者に対し、公害の防止と公害発生時の迅速な対応や連絡通報など協定遵守を申し入れるべきではないか。