市立病院の改善と「切り捨て御免」の公立病院改革ガイドライン
2008年 03月 18日

全国約9千弱の病院のうち12%近くが公立病院で、その7割が赤字です。その原因の多くは、国による医療費削減策にあります。それにより、報酬単価と交付税の引き下げ、臨床研修医制度導入による勤務医の偏在、医業収入の激減、結果して地域医療の崩壊が現出しました。
この局面での総務省の公立病院改革ガイドラインは、自治体財政の側面から、公立病院の再編統合、赤字病院の切り捨てをめざすガイドラインの他なりません。
国の公立病院改革ガイドラインは、再編・ネットワーク化による整備費、不良債務解消措置としての公立病院特例債の創設、一般会計出資債など、経営の効率化のために財政支援措置を受けたければ、平成20年度内に当該自治体が病院改革プランを策定せよ、というものです。
私たち地方は、必死になって地域医療を守ろうと、もがいてきました。
本市も、市立病院の病院事業中期経営計画をたて、中核病院である磐城総合共立病院を守ろうとしています。
以下は、3月6日の一般質問のやりとりの一部です。
●質問:公立病院改革ガイドラインの経営指標と比較して、本市市立病院の病院事業中期経営計画の進行状況はどうか。
■病院局長答弁
公立病院改革ガイドラインにおきましては、収支改善、経費節減等の各項目毎に公立病院改革プランに盛り込む経営指標が例示され、また、全国の公立病院、民間病院等の病床数別の平均値が示されております。
これらのうち、公立病院改革プランにおいて、数値目標を設定することが義務付けられている経常収支比率、職員給与費対医業収支比率、病床利用率について、平成19年度決算見込みによる数値を、現時点で比較可能である総務省の「平成18年度地方公営企業決算状況調査」の平均値との比較で申し上げますと、
まず、本院については、許可病床500床以上の公立病院全体の平均値と比較いたしますと、経常収支比率につきましては、平均の97.4%に対し、90.2%となっております。次に、職員給与費対医業収支比率につきましては、平均51.5%に対し、66.6%となっております。次に、病床利用率につきましては、平均の84.8%に対し71.1%となっております。
分院については、許可病床300床以上400床未満の公立病院全体の平均値と比較いたしますと、経常収支比率につきましては、平均の93.6%に対し86.0%となっております。次に、職員給与費対医業収支比率につきましては、平均の57.2%に対し、92.3%となっております。次に、病床利用率につきましては、平成19年2月からの療養病床60床休床の影響により、平均の76.4%に対し52.5%となっております。
いずれの数値も平均値と比較して、さらなる経営努力が必要であると考えております。
●質問:公立病院の提供すべき医療機能として、本市病院は何を確保するのか。
■病院局長答弁
市立病院改革に係る基本方針及び市病院事業中期経営計画において、本院は、地域の中核病院として高度医療・政策医療を中心とし、急性期医療を担う紹介型の病院としての医療機能を、分院は、本院の役割・機能を補完しながら、救急医療やリハビリテーション医療を担うとともに、精神医療については、精神疾患のほか、内臓疾患などを有する患者に対する医療を中心とした医療を提供することとしており、引き続きこれら役割・機能を担っていく必要があるものと考えております。
●質問:常磐病院の機能、あり方については、時をおかず、決めるべきではないか。
■病院局長答弁
中期経営計画と比較して、平成19年度においては、収益面では、医師が16名から13名に減となったことにより、入院・外来いずれにおいても減少していること、費用面では、定年退職者に加え、予測を上回って普通退職者が増加したことなどにより、経営が悪化しております。このことから、昨年9月に、病院局内の内部組織として「常磐病院のあり方に係る検討チーム」を設置し、経営改善策や経営形態及び経営手法に関することについて検討を進めております。平成20年度においては、この結果を引き継ぐとともに、公立病院改革プランの策定作業の中で、常磐病院のあり方についてもさらに検討を進めて参りたいと考えております。
●質問:長時間勤務の緩和や職場環境の改善など、医師確保に向けた整備は進んでいるか。
■病院局長答弁
医師の負担軽減に向けましては、医師の確保が最も重要でありますことから、病院事業管理者をはじめ院長や各診療科の主任等が様々な機会を捉え、大学医局や福島県への働きかけを行うとともに、臨床研修医につきましても、大学が学生向けに行います臨床研修病院説明会に本市からも指導医等が出席するなど、積極的に学生への働きかけを
行っているところであります。
しかしながら、主たる医師の供給源である大学医局等においても新医師臨床研修制度の影響などにより、医師が不足しており、医師不足に対する抜本的な改善策が見当たらない現状におきましては、医師確保が困難な実情にあります。
このような厳しい状況にはありますが、医師の負担軽減を図るための対応として、診療記録への代行入力や,診療に関するデータ整理などを行う事務補助職員を試行的に配置し、新年度からは8名に拡大するなどの取組みを進めているところであり、今後も引き続き、可能なものから速やかに実施して参りたいと考えております。
●質問:経営責任者としての病院事業管理者の実質的権限は発揮されているか。
■病院事業管理者答弁
私が、昨年4月に病院事業管理者に就任して以降の具体的な成果といたしましては、まず、人事面において、優秀な人材を確保するため、医療職職員採用候補者試験を前倒して実施したほか、経営感覚に富む人材を確保するため、新たに平成20年4月から民間等実務経験者を採用することとしたところであります。
患者サービスの向上につきましては、本院において、患者さんの待ち時間の短縮を図るため、昨年9月から採血開始時間を40分早めて午前7時50分から実施しているところであります。
また、経営全般につきましては、私が議長となり、幹部職員で構成する病院事業経営会議を毎月開催し、経営情報の共有化や経営に関する重要事項の審議を行っております。さらに、平成20年度の当初予算編成にあたりましては、病院局において、独自に予算編成方針を定め、予算原案を作成したところであります。
これら人事、財政、業務運営などの面において実施した新たな取組みにつきましては、地方公営企業法の全部適用によって、実態に応じた迅速な対応が可能となったものであり、病院事業管理者として与えられた職責を果たすべく、全力を挙げて取り組んできたものと認識しております
●質問:20年度中に策定する本市の病院改革プランは、「再編・ネットワーク化」や「点検評価公表のシステム」などを含め、どのようなものを提出する考えか。
■病院局長答弁
市立病院の経営方針につきましては、既に、市立病院改革に係る基本方針及び市病院事業中期経営計画を策定しております。一方、公立病院改革ガイドラインにおいては、既存の計画に位置づけられていない経営指標の設定や、再編・ネットワーク化に係る計画の明記などが求められておりますことから、ガイドラインに沿った内容となるよう、既存の計画に必要な修正を加えた形で策定することとしております。