小名浜火力発電所の建設計画、環境影響の回避と公害防止を
2008年 08月 02日
(仮称)小名浜火力発電所は、日本化成株式会社とダイアモンドパワー株式会社の共同出資による「小名浜パワー事業化調査」が日本化成小名浜工場コークス炉跡地に建設を予定しているもので、石炭を燃料にして20万kW2機を建設、1号機は平成24年7月に、2号機は平成26年7月に運転開始の計画です。
石炭は化石燃料の中でCO2排出量が最も多く、LNG(液化天然ガス)火力の2.8倍と極めて環境負担の大きい電気燃料ですが、燃料コストは最も安いという特徴を持っています。
平成16年、本計画は環境影響評価方法書まで進んだものの、京都議定書のCO2排出量削減義務の履行が今年から始まることが圧力となっていました。
同じ特定規模電気事業者(PPS)のシグマパワー山口が山口県宇部市に計画していた100万キロワット級の石炭火力発電所が、平成16年に建設を断念したのと対照的に、今回、洞爺湖サミット開催と機を同じくして、環境影響評価準備書の手続き開始が公になりました。
そこで、本件計画はいわき市民にとって、どのような影響があるのか、基本的な情報を7月28日の一般質問で聞きました。
また、7月24日に開かれた環境影響評価準備書の住民説明会で、大気質などの環境汚染を心配する声や温室効果ガス排出削減策、循環水温度の環境影響へのデータ不足などの市民の不安の声が聞かれたことから、環境影響評価準備書に対する市長意見の提出にあたっては、環境影響の回避措置の確実な実施を保証するよう強く求めることを要望するとともに、本市との公害防止協定の締結にあたっては、市民に不安を与えない実効ある協定の締結が必要であることを訴えました。
以下は、その内容の一部です。
1点目は、本件事業計画と本市の産業政策について、です。
●質問:復水器冷却水設備は、海水冷却式によらず1日当り最大33,000㎥の工業用水を使い「湿式強制通風式冷却塔による循環冷却方式」とされますが、これは発電コストをおしあげ、他の電気事業者の首都圏周辺火力発電所との競争上、十分競争力のある発電事業として成立するのか
■商工観光部長答弁:
当該事業の具体的な収支見込につきましては、明らかにされておりませんが、民間企業が行うものであり、一定の採算性を見通した上で、新規参入するものと思われます。
●質問:地球温暖化対策の温室効果ガス排出削減策に国を挙げて取り組んでいる中、本件事業計画は、本市の産業政策上どのような位置づけになるのか
■商工観光部長答弁:
当該事業計画につきましては、石炭を燃料とした40万kwの火力発電所を小名浜地区の臨海部に建設するものであり、現在採用し得る環境対策技術を可能な限り反映させた発電設備を用いるとともに、地球温暖化の対策の一環として発電所構内に大規模な太陽光発電設備を設置するものとなっております。
現在、地球温暖化対策が世界規模での課題となっている中、電力は産業活動や国民生活と密接な関係にあり、国におきましても、長期的には、技術革新等を通じ、大幅な二酸化炭素排出量の削減を目標としながらも、短期的には、省エネルギー対策の拡充や新エネルギーの普及促進を図るなど、一定の時間的な幅の中で、両者のバランスを考慮しながら、政策展開しているところであります。
このようなことから、本事業の実施にあたりましても、地球温暖化対策を所管する環境省とエネルギー政策を所管する経済産業省との間で事前に調整を図った上で進められているものであります。
また、本事業は、国の電力料金自由化政策の一環としても行われており、電気事業の参入規制を緩和し、競争原理の導入により、電気料金の低廉化や電気事業の効率化を図るものであるとともに、本市の地域経済においても、施設建設に伴う直接的な効果や雇用及び小名浜港の取扱貨物の増加といった間接的な効果など、一定の効果があるものと考えております。
2点目は、環境影響評価準備書と温室効果ガス排出等について、です。
●質問:環境影響評価方法書で、本市が福島県知事に提出した市長意見は準備書に反映されたのか
■生活環境部長答弁:
環境影響評価方法書に対しましては、大気や水の環境等に関し、21件にわたる市長意見をとりまとめ、県に提出したところ、18件が県知事意見として採用されました。
このうち、準備書に取り上げられたものは、低周波音を評価項目として追加することなど13件であり、一方、取り上げられなかったものは、計5件であります。
なお、県知事意見に採用されなかった市長意見3件は、環境に排出される化学物質の把握など、事業者の見解を踏まえて県が判断したものであり、市長意見を全体としてみると、おおむね準備書に反映されたものと考えております。
●質問:環境影響評価結果は、石炭粉塵の大気質への影響や低周波騒音、有害物質や温排水による海水温の変化、生態系への影響、アクアマリン等観光拠点であるウォーターフロント景観の変化など各評価項目毎に環境保全上十分なものとなっているか
■生活環境部長答弁:
環境影響評価準備書によれば、大気質、騒音、水質や温室効果ガスなどの各項目の総合的な評価としては、当該事業は、本地域の環境基準等の維持・達成に支障をきたすものではなく、適正なものとされております。
市といたしましては、現在、当該準備書について、事業者が講じる環境保全対策が適切かどうかなどの検討を、全庁的に行っているところであります。
●質問:温室効果ガス排出事業所として二酸化炭素の直接排出量は年間228万tですが、地球温暖化対策の温室効果ガス排出削減策上、整合性はあるのか
■生活環境部長答弁:
国が策定した京都議定書目標達成計画においては、今回の火力発電所のようなエネルギー転換部門が取るべき対策として、「自主的な排出削減計画の策定」や、「新エネルギー等の導入」などを掲げております。
自主的な排出削減計画については、今回の発電電力の供給先となる特定規模電気事業者が他の同業種企業とともに「特定規模電気事業者自主行動計画」を策定しているところであり、また、新エネルギー等の導入については、事業者において、今回の発電所構内に、本市では最大級となる1,000キロワットの太陽光発電設備を設置するとのことであり、準備書では、これらの対策などにより、京都議定書目標達成計画と整合性が図られているとしております。
●質問:環境影響評価方法書について、「できるなら反対をしたい」「大気汚染のおそれ充分」「小名浜の空気は汚さないで欲しい」「住吉地区は煙害の被害を受ける地域、有害物質が絶対飛散しないよう配慮願います」「住民に対してリスクアセスメントの説明会を開くこと」などの市民意見が出されましたが、こうした環境汚染への市民の不安について、市はどう受け止めているか
■生活環境部長答弁:
市といたしましては、方法書に寄せられた市民からの意見も十分に精査し、先ほど答弁しましたとおり、21件の市長意見としてとりまとめ、県に提出してきたところであります。
●質問:7月24日の住民説明会でも大気質などの環境汚染を心配する声や温室効果ガス排出削減策、循環水温度の環境影響へのデータ不足など評価書の不十分さも指摘された。本計画による環境汚染への市民の不安があるなか、本市としては準備書に対する市長意見をどのように提出するのか
■生活環境部長答弁:
準備書の内容について、現在、全庁的に検討を行っているところでありますが、今後、住民から意見が提出された場合には、それも十分に踏まえ、精査した上で、準備書に対する市長意見をとりまとめていく考えであります。