いわき市保育所民営化についての本会議質疑
2008年 12月 17日
昨年の12月議会では、4施設の保育所の保護者会会長さんなどから「いわき市立保育所の民営化を性急に進めないことについて」の請願、市職員労働組合の委員長外29,654名の署名による「いわき市の子供が健やかに育つため、市立・私立を問わず保育予算を増額すること。市立保育所を市直営で維持・存続するとともに、子育て支援機能を充実し、保育事業を拡充すること。」の請願が出され、わたくしも請願紹介議員として採択の討論を行いましたが、少数否決された経緯があります。
民営化取り消し訴訟で民営化時の保護者説明や手続きなど、性急すぎる民営化手続きが違法と判断された横浜市の民間移管検証結果報告では、「3ヵ年で2億7700万円、約18%の運営費縮減、156人の職員定数削減」とされ、その裏で移管先法人は単独で赤字。公立の人件費削減が私立の安い人件費に依存している実態があります。
人を育てる児童福祉は、新自由主義による行き過ぎた市場原理主義や民営化万能論では片付けられない事業です。
保育所運営費を一般財源化するなど国の保育予算削減の中で、2006年のいわき市社会福祉審議委員会の答申以来、第一に、保育所整備方針の決定過程で子供の未来がかかっている重要施策の具体化について、市民意見を求め、市民参画をはかって、地域の歴史と社会的背景を踏まえてこなかったこと。第二は、保育現場の意見が十分に反映されなかったこと。第三は、質の高い保育を公平に提供する保育の公的責任について不十分であることなど、保育所の民営化は、国の保育所財政縮減の直撃を受けた自治体の財政的事情によるもので、子どもの利益が最優先された施策とはいい難いものです。
12月1日付けで好間保育所父母の会から「平成21年度にいわき市立好間保育所を民営化する計画を撤回するよう求める陳情書」が提出され、民営化の必要性さえ納得していない、保護者の了解が前提となる約束が守られていない、三者協議会での移譲条件の要求が認められないことなどを訴えております。
先に紹介した横浜市の民間移管検証結果は「移管園の保護者に十分な理解が得られなかったこと」を指摘しました。児童福祉法では親の選択権が認められており、横浜地裁判決も「保護者には保育所を選択する権利と、同じ保育所で継続した保育を受ける権利がある」と判断しました。このことは在園中の子どもたちを無視した民間移管は法的に問題があり、厳に戒めたものです。
保育所の民営化は、主権者である保護者の合意がすべての前提であることを、行政が否定することはできません。保育所民営化は、強行ではなく、慎重に対処すべきです。
以下は、議案第5号いわき市保育所条例の改正について、質疑応答です。
⑴ 保育所民営化事務の経緯について
ア 本年4月以降の保護者説明会や地区説明会、保護者・移譲先法人・市の三者協議会などでだされた市民の意見は、施策にどう反映されたか。
答弁 保健福祉部長:本年4月以降、移譲対象保育所ごとに、移譲先として内定した法人も交えた保護者説明会を開催するとともに、改めてそれぞれの地区の行政嘱託員や民生児童委員に対する説明を行ってきたところであります。
また、平成19年度に開催した「いわき市立保育所民営化等検討会」においてとりまとめられた36項目の移譲の条件を担保するため、保護者の代表、移譲先法人、そして、市による三者協議会を移譲対象保育所ごとにそれぞれ3回にわたり開催して参りましたが、これらの中で出された「延長保育を実施してほしい」「新たな行事を実施してほしい」などの意見があったことから、移譲条件の具体化にあたり、開所時間や延長保育、
さらには園外活動や行事などについて、可能な限り保護者の意見を反映してきたところであります。
イ 臨時保育士の雇用継続は担保されたのか。
答弁 保健福祉部長:臨時保育士の雇用継続につきましては、36項目の移譲の条件の一つとして、「移譲を受ける法人は、平成21年3月31日前6か月以上、当該保育所において勤務する臨時保育士から2人以上を移譲後も引き続き雇用するよう努める」としたところであります。移譲先法人におきましては、既に募集を行い、試験や面接等も終え、年内には採用を決定する見込みと聞き及んでおりますことから、臨時保育士の雇用継続は、担保されるものと考えております。
ウ 民営化対象4保育所の保護者合意は形成されたのか。
答弁 保健福祉部長:三者協議会におきましては、保護者の代表の方々に会議やアンケート等により保護者の意見をとりまとめていただき、より良い保育の実施に向けて、開所時間や延長保育、さらには園外保育や行事など移譲の条件の具体化を図ってきたところであり、その協議内容につきましては、各保育所の保護者にチラシを配布するなどして、理解の促進に努めてきたところであります。
また、三者協議会に参加していない保護者の皆様からのご意見につきましても、チラシにより呼びかけを行ったところでありますが、これまで、これらの取組みへの反対を含む意見等が寄せられておりませんことから、概ね合意形成が図られているものと認識しております。
エ このまま好間保育所を民営化して禍根を残さないのか。
答弁 保健福祉部長:公立保育所の移譲にあたりましては、保護者や地域住民のご理解をいただくため、平成18年8月から現在まで、移譲対象保育所の保護者や役員をはじめ、いわき市保育所保護者会連合会や各地区保護者会連合会の役員に対し、延べ46回の説明を重ねて参りました。更に、行政嘱託員や民生児童委員など地域の方々にも延べ15回の説明を行って参りました。
また、平成19年度には、移譲の条件を取りまとめるため「いわき市立保育所民営化等検討会」を延べ8回、平成20年度には、それらを具体化するための「三者協議会」をこれまでに延べ12回開催してきたところであります。
特に、「いわき市立保育所民営化等検討会」や「三者協議会」、更には、移譲先法人を選考した委員会など、より良い保育の継承にかかる重要な場面や段階においては、保護者の代表の方々に御参加をいただき、保護者の意見反映に努め、理解を得ながら事務を進めて参りました。
これらに加え、好間保育所におきましては、父母の会の代表の方からの要望を受け、内定した社会福祉法人による説明会を本年7月12日に開催したほか、11月22日には、三者協議会の経過や内容についての説明会を開催したところでありますが、社会福祉法人への移譲に反対との意見はありませんでした。
また、合同保育に先立ち、去る12月6日のお遊戯会終了後に行われた移譲先法人から派遣される4人の保育士紹介におきましても、保育士一人ひとりに保護者から温かい拍手が贈られ、12月8日から開始した合同保育も順調に進んでおりますことから、
引き続き三者協議会をはじめ、保護者の皆様の御参加をいただきながら、万全を期して事務を進めて参る考えであります
⑵ 今後の課題について
ア 合同保育の態勢は、移譲後に子供たちが不安に陥らぬ万全なものとなっているか。
答弁 保健福祉部長:合同保育につきましては、現在の移譲対象保育所における保育内容等の継続性を確保することを目的として、移譲先に内定している社会福祉法人より、
4人の保育士を派遣していただき、1歳児から4歳児の各クラスをそれぞれ現在の公立の保育士と一緒に担当していただくこととしております。これは、移譲後の来年度には、各保育士がそれぞれ1歳上の2歳児から5歳児の各クラスを継続して受け持つこととしたもので、移譲後に子供たちに不安を与えることのないよう万全を期しているところであります。
イ 移譲対象施設で、耐震改修の必要な施設はどこか。
答弁 保健福祉部長:移譲対象保育所のうち、耐震診断の対象となる昭和56年以前に建築された保育所は、愛宕、植田、好間の3保育所でありますが、このうち、耐震診断を実施している保育所は、第二次避難所に指定されている好間保育所のみであり、震度7程度の地震を基準とした診断によると、「耐震性に疑問がある」とされております。
ウ その移譲対象施設の耐震改修の実施は、どうなるのか。
答弁 保健福祉部長:このたび移譲する4保育所につきましては、現状のまま移譲することとしておりますが、今後、移譲を受けた社会福祉法人が耐震補強や改築等の耐震改修を行う場合には、国の「次世代育成支援対策施設整備交付金」の対象となり、その費用のうち、国が2分の1相当額を、また、市が4分の1相当額を負担することとなりますことから、法人からの申請に基づき、協議することとなります。