2018年 11月 05日 ( 1 )

汚染水、流したらどうなるの? 市民シンポ開く

 11月4日午後、「汚染水、流したらどうなるの? 海と私と命と暮らし 市民シンポジウム」がいわき市鹿島公民館大講堂で開催されました。
 福島第一原発事故の汚染水について、何が問題で、わたしたちのいのちや暮らしにどういう影響を与えるのか。福島県漁連会長の野崎哲さん、おしどりマコ・ケンさん、地元の鮮魚店のママ・松田幸子さんがシンポジストととして、一緒に話し考えました。
 シンポジストの皆さんの予稿集を以下に紹介します。
 当日の動画は、下記からご覧ください。
 2018.11.4 海と私と命と暮らし 市民シンポジウム~汚染水、流したらどうなるの?~
 https://youtu.be/68n3qp5_3Hk

●おしどりマコ&ケン(ジャーナリスト)  タンク汚染水の問題点

 2011年12月21日に公表された「中長期ロードマップ」にはこう記されている。
「汚染水の海への安易な放出はしないものとする」
「海洋への放出は関係省庁の了解なくして行わないものとする」 
 
 2011年から原発事故の取材を続けて、東京電力や国の規制当局の姿勢にはいくつも疑問がある。汚染水に関するものでは、地下水バイパス、サブドレン、K排水路、フランジタンク、地下貯水槽、アレバ…様々な問題を解決せず、「仕方がないのだから」と強引に計画を進めて、そして反省の振り返りをしない。なので、今も発生する問題の原因として、東京電力があげてきているのが「ヒューマンエラー」「コミュニケーション不足」などである。

 海外では、そして日本の他の地域では、トリチウムを海洋投棄している、日本の排水の告示濃度限度は6万Bq/Lである、という論拠は、福島第一には当てはまらない。それは地下水バイパスやサブドレンのときに、作った1500Bq/Lの考え方を無視するものである。この重要な論点を委員が把握しないまま、「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」
は進んでいっている。

 この小委員会を取材していて、2017年4月21日の第4回当該委員会において、外部有識者として招かれた北海学園大学の濱田教授の発表が興味深かった。抜粋する。
「社会的影響というのは、恐らく福島県の漁業だけに限らない。そのことを踏まえると、ALPS処理水を希釈後に放水するということを進めることになれば、太平洋側の全漁業者を説得する必要があろうかと思います。当然、漁業者だけではなくて卸業界、小売業界、もっといえば国民に対しても説得が必要。こういった説得が無ければ、たたかれるのは恐らく漁業者になります。地下水バイパスとかサブドレンのときも、福島の漁業者が了承したことで放水が行われたということで、これに対する批判が非常に強かった。やはり説得の範囲は影響する全範囲だと思います。」
「リスコミで何とか買い控えは払しょくできないかということ、それは恐らく無理だと思います。魚は科学的に大丈夫だとしても、1Fの過酷事故と海洋汚染の事実は消えないわけで、そこから連想して危ないものは買いたくないと考える人が一定程度いるというのはこれは否定できない。」
「必ずしも科学的に大丈夫だといっても、頭で理解できても科学者でもないから本当に大丈夫だと確信できるわけじゃない。それは私だってそうで、どこで確信できるかはなかなかできないわけです。基本的に一度、高濃度に汚染されたものはもうイメージが悪いと。
 例えば不動産で新しい部屋を決めるときに、その部屋で殺人事件があったら、科学的に大丈夫でもそこに住みたくないのと同じだと思う。1回床に落ちた食べ物を科学的に大丈夫だといっても食べたくないのと同じで、それは人間としてそういう反応するのは生き物として普通だと思います。」
「私が会議に出ている感覚でいうと、漁業者側からすれば、タンクを作ってためといてほしいと。海に流すことに努力するよりも、汚染水を減らして早く燃料デブリをとってくれと。」
 今年8月末の三か所であった公聴会でも、タンク保管の意見が相次ぎ、小委員会ではタンク保管についても選択肢に入れて今後検討する見解が出されたが、ずっと取材をしていると、保管案は何度も出されるが、海洋放出ありきで議論が進んでいるように思える。
 小委員会の議論では、委員は必ずしも海洋放出ありきではなく、疑問の意見も出されるが、国、経産省、規制委員会が元々出している結論が先にありきで、形だけの議論になっている感もある。

●野崎哲(福島県漁連会長)   海洋放出が漁業者、社会にあたえる影響
福島県の漁業の復興について

 平成23年3月11日の東日本大震災の津波と地震で福島県の漁港は北は新地から南の勿来まで壊滅的被害を受けました。
 そして、その後の東京電力福島第一原子力発電所の全電源喪失により3月12日の東京電力福島第一原子力発電所1号機における水素爆発、3月14日の3号機の水素爆発、トレンチよりの高濃度の汚染水の海洋流失により福島県の海洋は汚染されました。
 福島県漁連は、これらを受けて3月15日に水産庁、県農林水産部水産課との協議の上、福島県の漁業を一時全面的に休漁することを決定しました。
 その後、国、県と協力して瓦礫処理、海洋モニタリングへの参加をすることで漁業の再開を模索してきました。
 平成23年9月より福島県漁業試験操業について企画して平成24年6月より試験操業を実施しました。
 試験操業は国の緊急時モニタリングの検査結果をもとに漁業者が試験操業計画(漁法、漁獲対象魚種、操業海域、参加者、検査体制、流通計画)を福島県地域漁業復興協議会(国、県、学識経験者、漁業者、流通業者)に諮問し福島県漁業協同組合長会で承認し福島県漁業協同組合連合会で実施することとしました。
最初は沖合底曳網漁業、N37度37分20~N37度53分40の水深150m以深、ヤナギダコ、ミズダコ、シライトマキバイの3魚種、参加漁業者9隻でした。
 現在は全ての漁法、東京電力福島第1原子力発電所より半径10km以外の全海域、国の出荷制限指示7魚種を除く全魚種を対象として行っています。
 国の緊急時モニタリングは54,587検体を行い平成28年以降は100Bq/kgを超えた検体は確認していません。
 その間、平成26年3月にバイパス事業、平成27年8月にサブドレン事業と東京電力福島第一原子力発電所の廃炉事業の安定化のため管理された地下水(地下水だけの管理であり他の水を持ってきて希釈は行っておりません)の海洋放出を認めてきました。
 福島県の漁業においては安全、確実な廃炉の完遂こそ根本解決案であると考えています。
 廃炉過程において議論を重ね、漁業の復興と廃炉とを両立させながら事態に臨むことが肝要かと思っています。
 
●松田幸子(さんけい魚店若女将)  母親として、トリチウムの放出について思うこと

私にとって海は【家族との思い出の場所】でした。
幼い頃、毎年夏になると当たり前の様に海水浴や磯遊び、そして魚釣りと家族でいわきの海を遊びつくしていた記憶があります。

震災当時、私には幼稚園の卒園式を目前に控えた6歳の長男と4歳の次男がいました。
彼らもまた、私と同じように夏になると海水浴や磯遊びをしていました。
原発事故後、幼いながらにも【ほうしゃせいぶしつ】という言葉を覚え、目に見えない何かに怯え
子供達自ら海で遊ぶ事から遠ざかって行ったように思います。
幼い彼らの頭の中では【海は危険な場所】と認識してしまい
浜辺のお散歩も海水浴もしないまま長男は13歳に、次男は11歳に成長してしまいました。彼らは、港町で生まれ育っていますが幼少期の海での思い出は作ってあげられないまま大きくなってしまいました。
今年の夏、震災も原発事故も知らない5歳の三男を初めて磯遊びに連れて行きました。
なんの抵抗もなく自らジャブジャブと肩まで海に浸かり、いわきの豊かな海を肌で感じ取ったのでしょう。
三男の目はキラキラと輝き、魚釣りをさせた時とは全く違った反応でした。
長男と次男も幼い時に同じ場所で遊んでいた事を思い出し、取り戻す事のできない彼らとの時間。母として、原発事故後の7年間を悔やみました。

ですが、三男が海での経験を楽しそうに話す姿に年頃になった長男と次男が
「来年の夏は俺も海に行きたい‼」
「俺、大人になったらサーフィンやってみたいんだよね!!」と
楽しそうに海への想いを言葉にしてくれたことに救われました。
彼らは決して、海が嫌いになった訳ではなかったのです。
海に憧れを抱き、7年かけて成長しながら、自分なりに解釈しながら心の傷を癒し、
目に見えない何かをも克服してきたようです。

今回の【汚染水放出】の問題。専門的な知識も何も分からない私にとっては子供達と同じく脅威としか感じる事が出来ません。
子供達には何の責任もありません。
それ故に、彼らに選択する権利も与えられていません。
私達の思い出の場所を取り戻す目途がたってきました。
海は決して危険な場所ではなく、豊かで素敵な場所です。
守らなくてはいけない場所です。
環境に恵まれたこの地で子育てをする選択をした多くの家族たちがいます。
7年の月日を振り出しに戻すことは絶対にできません。

海への信頼を取り戻し、私たちが幼い頃に当たり前に出来た事を子供達にも経験させてあげたいという想いは叶わないのでしょうか・・・。

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by kazu1206k | 2018-11-05 23:15 | 脱原発 | Comments(0)