風のたよりー佐藤かずよし :時評
2024-03-25T14:51:16+09:00
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佐藤かずよし
Excite Blog
重要経済安保情報の保護及び活用法案への日弁連声明、学習会
http://skazuyoshi.exblog.jp/30868474/
2024-03-25T14:50:00+09:00
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時評
日本弁護士連合会は、「国民の知る権利及びプライバシー権が侵害されないための制度的な保障はなされていない」などとして、経済安全保障分野に秘密保護法並みの厳罰を伴う秘密保護法制が拡大されることの問題点を指摘して、「問題点が解消され、また、その是正策等について国民的議論が尽くされない限り、本法案に反対する」とする会長声明を3月13日に公表しました。
また、この問題点について、検討する院内学習会・第二弾を以下の通り開催します。
3月27日(水) 11時45分~13時00分
【会場参加】 定員180名(先着順)衆議院第一議員会館1階多目的ホール 開場は11時30分を予定。
【オンライン配信】Zoomウェビナー
【事前申込制】会場参加(定員180名)・オンライン参加とも icon_page.png事前申込をお願いします。
【申込期限】 2024年3月25日(月)https://form.qooker.jp/Q/auto/ja/secugakusyu2m/20240327/
重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案についての会長声明
本年2月27日、政府は「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」(以下「本法案」という。)を閣議決定し国会に提出した。本法案には以下の内容が含まれている。
①
重要経済基盤保護情報のうち特に秘匿する必要性がある情報であって法所定の要件を満たすもの(重要経済安保情報)を政府が秘密として指定することができるようにすること(本法案第3条)。
②
重要経済安保情報を漏洩した者と不正に取得した第三者を、最高5年の拘禁刑に処すこと(本法案第3条、第22条以下)。
③
重要経済安保情報を取り扱う業務は、適性評価により、重要経済安保情報を漏洩するおそれがないと認められた者に制限すること(本法案第11条)。
④
行政機関の長は、重要経済安保情報を取り扱う民間の企業の従業員ら、大学・研究機関の研究者らに対しても、内閣総理大臣による調査の結果に基づき、漏洩のおそれがないことについての評価(適性評価、セキュリティ・クリアランス)を、特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」という。)の下で主として公務員に対して実施されていた適性評価と統一的なシステムを構築して実施すること(本法案第12条)。
当連合会は、本法案の基となった経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議における議論と「中間論点整理」(2023年6月6日)に基づいて、2024年1月18日付けで「経済安全保障分野にセキュリティ・クリアランス制度を導入し、厳罰を伴う秘密保護法制を拡大することに反対する意見書」を取りまとめ、既に公表している。
本法案には、この意見書で指摘した、「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(ツワネ原則)に則した、①違法秘密の指定禁止、②公共利害にかかわる情報を公表した市民とジャーナリストが刑事責任を問われない保障、③適正な秘密が指定されているかどうかを政府から独立して監督できる制度、④秘密指定された情報が期間の経過によって公開される制度などが欠けており、国民の知る権利及びプライバシー権が侵害されないための制度的な保障はなされていない。
さらに、本法案については、基本的人権の保障の観点から、以下の問題点を指摘することができる。
第一に、本法案は、第3条第1項において、重要経済基盤保護情報中に秘密保護法上の特定秘密が含まれることを前提に、重要経済安保情報には特定秘密は含まれないとしている。そして、「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準」(閣議決定)の見直しにより、経済安全保障に関連する情報を秘密保護法上の特定秘密に含まれると明記する方針だと言われている。秘密保護法が経済安全保障に関連した情報を対象として明示していないにもかかわらず、秘密保護法上の特定秘密に、経済安全保障に関連した情報を含める実質的な改正・拡大を法改正によらず行うものであり、罪刑法定主義等の観点から疑問がある。
第二に、漏洩等が処罰の対象となる重要経済安保情報の範囲が、法文上不明確であるため、罪刑法定主義との関係で問題が生じ得る。処罰法規の不明確さは大川原化工機事件のような捜査権等の濫用や企業の萎縮効果を招きかねず、営業の自由との関係でも問題がある。政府は重要経済安保情報の範囲が恣意的に拡大されることはないと説明しているが、本法案は、別表を用いて指定対象となる情報をある程度特定する形式さえとっておらず、いかなる情報が重要経済安保情報となるかを予測することは困難である。
第三に、重要経済安保情報については、衆参両院の情報監視審査会による監督、国会への報告制度も適用されないこととされている。監督措置が秘密保護法における特定秘密の場合に比しても脆弱となっており、恣意的な秘密指定が抑止されず、知る権利等に悪影響を及ぼす可能性がある。
第四に、適性評価は各行政機関が実施するが、評価のための調査はほぼ一元的に内閣総理大臣が実施する仕組みとされている。適性評価の対象とされる多くの官民の技術者・研究者について、内閣総理大臣の下に設けられる新たな情報機関が、重要経済基盤毀損活動との関係に関する事項(評価対象者の家族、同居人の氏名、生年月日、国籍、住所を含む。)、犯罪及び懲戒の経歴に関する事項、情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項、薬物の濫用及び影響に関する事項、精神疾患に関する事項、飲酒についての節度に関する事項、信用状態その他の経済的な状況に関する事項について調査を行うこととされている(本法案第12条)。その結果、内閣総理大臣の下に設けられる新たな情報機関に適性評価対象者の膨大な個人情報が蓄積されることとなる。
第五に、適性評価については、本人の同意を得て実施するとされているが、同意しなければ、その者は当該研究開発等の最前線から外されたり、企業等の方針に反するものとして人事考課・給与査定等で不利益を受けたりする可能性も否定できない。適性評価のための調査の行き過ぎを抑止するための仕組みも想定されていないようであり、プライバシー保障の観点から疑問がある。
よって、当連合会は、秘密とすべき情報のみが秘密として保護される仕組みが整備されるなどして前記の問題点が解消され、また、その是正策等について国民的議論が尽くされない限り、本法案に反対する。
2024年(令和6年)3月13日
日本弁護士連合会
会長 小林 元治
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問題の多い地方自治法改正案に反対、日弁連の声明
http://skazuyoshi.exblog.jp/30861588/
2024-03-18T09:12:00+09:00
2024-03-20T09:26:54+09:00
2024-03-20T09:26:54+09:00
kazu1206k
時評
政府の改正案が根拠とする大規模災害及びコロナ禍については、「災害対策基本法や感染症法などの個別法で国の指示権が規定されているのであるから、さらに地方自治法を改正する必要性があるのかが疑問であり」、「法案は、現行法の国と地方公共団体との関係等の章とは別に新たな章を設けて特例を規定するとして、この点において法定受託事務と自治事務の枠を取り払ってしまっている」、さらに法案は「『国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合』、『地域の状況その他の当該事態に関する状況を勘案して』など曖昧な要件で指示権を認め、『緊急性』の要件を外してしまっており、濫用が懸念される」として、「2000年地方分権一括法が『対等協力』の理念のもと法定受託事務と自治事務とを区別して、自治事務に関する国の地方公共団体への指示権を謙抑的に規定した趣旨を没却するものであり、憲法の規定する地方自治の本旨から見ても問題である」として、法案の一部削除などを求めました。
地方自治法改正案に反対する会長声明
政府は、2024年3月1日、地方自治法の一部を改正する法律案(以下「法案」という。)を閣議決定し、法案を国会に提出した。
当連合会は、本年1月18日付けで「第33次地方制度調査会の「ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申」における大規模な災害等の事態への対応に関する制度の創設等に反対する意見書」(以下「意見書」という。)を公表し、答申に基づく法案の国会提出に反対した。
意見書では、答申の「第4」で示された「大規模な災害、感染症のまん延等の国民の安全に重大な影響を及ぼす事態への対応」に関する「国の補充的な指示」の制度の創設は、2000年地方分権一括法により国と地方公共団体が「対等協力」の関係とされたことを大きく変容させるものであるとともに、自治事務に対する国の不当な介入を誘発するおそれが高いなどの問題があることを指摘した。
すなわち、答申の「第4」は、その根拠とする大規模災害及びコロナ禍についての実証的な分析検証が行われていない点、法定受託事務と自治事務を区別せずに国の指示権を論じている点、及び現行法では国の地方公共団体への「指示」は、個別法で「緊急性」を要件として認められているのに対し、一般法たる地方自治法を改正して、自治事務についても、個別法の根拠規定なしに、かつ「緊急性」の要件も外して、曖昧な要件のもとに国の指示権を一般的に認めようとする点で、地方分権の趣旨や憲法の地方自治の本旨に照らし極めて問題があるものである。
しかし、今回出された法案は、これらの問題点を解消するものとは到底言えない。
すなわち、その根拠とする大規模災害及びコロナ禍については、災害対策基本法や感染症法などの個別法で国の指示権が規定されているのであるから、さらに地方自治法を改正する必要性があるのかが疑問であり、その点が法案提出に際して、十分に検討された形跡はない。また、法案は、現行法の国と地方公共団体との関係等の章とは別に新たな章を設けて特例を規定するとして、この点において法定受託事務と自治事務の枠を取り払ってしまっている。さらに、法案は「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合」、「地域の状況その他の当該事態に関する状況を勘案して」など曖昧な要件で指示権を認め、「緊急性」の要件を外してしまっており、濫用が懸念される。そして、2000年地方分権一括法が「対等協力」の理念のもと法定受託事務と自治事務とを区別して、自治事務に関する国の地方公共団体への指示権を謙抑的に規定した趣旨を没却するものであり、憲法の規定する地方自治の本旨から見ても問題である。
以上から、当連合会は、法案について、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における国と地方公共団体との関係等の特例」に関する章のうち、「事務処理の調整の指示」を定めた第252条の26の4における「指示」を「要求」に改めること、「生命等の保護の措置に関する指示」を定めた第252条の26の5を削除すること、「都道府県による応援の要求及び指示」に関する第252条の26の7の標題を「都道府県による応援の要求」に改めた上で、同条第2項以下を削除すること、及び第252条の26の8の標題を「国による応援の要求」に改めるとともに、各大臣の指示権を規定する同条第4項以下を削除することを求める。
2024年(令和6年)3月13日
日本弁護士連合会
会長 小林 元治
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旧統一教会の財産保全、与党法案「全く不十分」、全国弁連の声明
http://skazuyoshi.exblog.jp/30498840/
2023-11-23T22:58:00+09:00
2023-11-25T19:16:54+09:00
2023-11-25T19:16:54+09:00
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時評
11月14日に、自由民主党と公明党による与党「実効的な被害者救済の推進に関するPT」の取りまとめた「実効的な被害者救済の推進に関する緊急提言」が公表され、16日には法案の概要がまとめられました。しかし、「統一教会による被害の実態に即した実効性のあるものとは評価できない。真に実効的な被害者救済のため、特に財産散逸を防ぐためには本法案では全く不十分であり」「包括的な財産保全を可能とする特別措置法の立法が必要不可欠である。」としています。
その上で、「今般の文化庁の調査により旧統一教会について全国で『相当甚大』な規模での被害が確認され、文部科学大臣により宗教法人法に基づく解散命令請求が行われた以上は、もはや被害者救済のための財産保全も、基本的には個々の被害者の自助努力に委ねられるべきものではない。国として正面から法整備をして対応すべきものである。
そして、解散命令請求された宗教法人に対して包括的な財産保全措置を可能にする特別措置法は必要不可欠であって、かつ、憲法上も十分に可能である。
よって、当連絡会としては、全ての被害者の実効的な救済のために、与野党が党派を超えて速やかに協議を行い、包括的な財産保全措置を可能とする特別措置法を成立させていただくよう改めて強く求める。」としています。
以下に紹介します。
声 明 与党PTによる提言及び法案概要について
2023年11月17日
全国霊感商法対策弁護士連絡会
代表世話人 弁護士 平岩敬一(横浜)
代表世話人 弁護士 郷路征記(札幌)
代表世話人 弁護士 中村周而(新潟)
代表世話人 弁護士 河田英正(岡山)
代表世話人 弁護士 山口 広(東京)
事務局長 弁護士 川井康雄(東京)
1はじめに
本年11月14日に、自由民主党と公明党による与党「実効的な被害者救済の推進に関するPT」(以下、「与党PT」という。)の取りまとめた「実効的な被害者救済の推進に関する緊急提言」(以下、「本提言」という。)が公表され、16日には法案の概要がまとめられた(以下、「本法案」という。)。
本提言では、世界平和統一家庭連合(統一教会)の被害者の実効的救済のために、法テラスによる民事法律扶助業務の拡充、資産流出防止のための宗教法人法の改正、外為法の規制強化、及び、被害者に寄り添った相談・支援体制の構築等の施策が講じられるべきであるとされ、本法案は3年の時限立法とされている。
当連絡会は、統一教会に対する解散命令が確定するまでの間の財産散逸を防ぐため、本年5月16日、速やかに財産保全の特別措置法を成立させる必要がある旨の声明を発出し、同年7月7日、9月30日、10月13日、10月27日の各声明でも繰り返し同法の成立を求めてきた。特に、10月27日の声明においては、民事保全法に基づく保全や外為法による規制強化では財産散逸を十分に防ぐことはできず、被害救済がないがしろにされかねないことから、財産保全のための特別措置法の立法を改めて強く求めた。
与党PTにおいて統一教会被害者の救済に向けた検討がなされたことに対しては敬意を表する。しかし、本提言は、統一教会による被害の実態に即した実効性のあるものとは評価できない。真に実効的な被害者救済のため、特に財産散逸を防ぐためには本法案では全く不十分であり、以下に述べるとおり包括的な財産保全を可能とする特別措置法の立法が必要不可欠である。
2統一教会による被害の実態について
(1)与党PTによる被害実態及び被害救済活動についての分析
本提言は、解散命令請求にあたってなされた調査に基づき、統一教会の組織的不法行為によって過去40年以上の期間で少なくとも被害者1550名に総額約204億円に上る被害が生じたことを指摘する。一方で、現在は124名合計39億円の民事調停、示談交渉が行われているだけであって、民事訴訟に至っている事例は極めて少なく、民事保全手続に至っている事案はないことを指摘する。
その上で、本提言は、このように民事訴訟や民事保全手続が極めて少ない原因として、①被害者への法律相談体制が十分ではないこと、②訴訟や保全を行うための費用を捻出することが困難であること等を挙げる。
しかし、このような本提言の分析は、統一教会による被害の実態や救済の困難さを十分理解していないものと言わざるを得ない。
(2)潜在的被害の大きさについて
過去の消費者庁の調査によっても、一般の消費者被害事件において実際に被害の声を上げられる者は被害者の氷山の一角に過ぎないとされている。それにもかかわらず、文化庁宗務課の調査では、少なくとも1550人に対し約204億円もの被害賠償がなされてきたことが明らかになっている。また、統一教会は過去数十年にわたって組織的に不当な手段で献金を集めてきたものであるところ、統一教会が実際に集めた献金額は年数百億円に上り、累計の金額は計り知れない。これらの事実からすれば、統一教会による潜在的被害は、被害者本人の経済的被害だけでも優に1000億円を下らないと推測される。
(3)被害救済が困難な理由
現時点ではこのような甚大な潜在的被害者のうちの一部しか統一教会に対して損害賠償請求ができていないのは、法律相談体制が不十分であったり、訴訟費用等の問題があったりするからだけではない。
統一教会による被害の最大の特徴は、正体隠しや不安を煽った勧誘により信仰選択の自由を奪われた状態で、統一教会の教義を信仰させられ、文鮮明に絶対的に服従させられた上で、経済的・肉体的に搾取されるという点にある。
そのため、そもそも脱会しなければ自らの被害を被害と認識することはできない。また、脱会できたとしても、被害者は精神的に深い傷を負っている。統一教会の違法行為に加担させられてしまったことが、被害者として振る舞うことを躊躇わせることも少なくない。しかも、伝道教化過程で先祖因縁の恐怖を強く植え付けられており、脱会した後であっても統一教会及びその教祖文鮮明に背くことで災いが起きるのではないかという現実的な不安にさいなまれる状態が続いている者も多くいる。被害者が法律相談に赴き、さらに一歩進んで統一教会に対する損害賠償請求を決意するためには、このような精神的な傷や恐怖を乗り越えなければならない。このような理由で、被害者は、そもそも損害賠償請求ができなかったり、できるようになるまでに相当長期間を要するのが実情なのである。
被害者の実効的救済を図るためには、このような被害実態を十分踏まえた施策が講じられなければならない。
3法テラスによる民事法律扶助業務の拡充や宗教法人法上の公告や財産目録等の提出義務の特例を設けるだけでは不十分である
(1)民事法律扶助業務の拡充の不十分さ
本提言では、民事訴訟及び民事保全手続が極めて少ない原因についての上記の与党PTの分析に基づいて、「被害回復のために最も効果的かつ確実な方法は、個別の被害について具体的な証明手段を有する被害者が、1日も早く民事訴訟の提起等、具体的な請求手続を講じることである」とし、法テラスによる民事法律扶助業務の拡充を図るべきであるとする。
しかし、統一教会を相手とする民事訴訟は、過去の例をみても最低5年はかかり、数千頁からときに数万頁に及ぶような膨大な量の書面・証拠提出が必要になり、被害者の負担は極めて大きい。そもそも法的手続を決断すること自体が、一般の消費者事件に比べても被害者にとって極めてハードルが高いのである。そのため、弁護士も可能な限り交渉段階での解決を図ってきたというのが、これまでの救済現場の実情であった。
前記のような被害者の実態からしても、被害者に早期に民事訴訟または民事保全手続を講じることを求めることは余りに酷であり、極めて困難である。被害に遭ったものの現時点では脱会しておらず、自身の被害に気付けていない場合はもちろんのこと、脱会した被害者が精神的な傷や恐怖を乗り越えて統一教会に対して損害賠償請求を決意するには数年から十数年かかることさえある。このように、現時点ですぐに民事訴訟や民事保全手続をとることができない被害者が多数存在するのである。
このことからすれば、民事訴訟や民事保全手続を利用しやすくすることに一定の意義はあるものの、民事訴訟の提起や民事保全の申立を支援するだけでは、被害者の実効的な救済にはつながらない。
(2)民事保全手続の限界
民事保全手続は、飽くまで私人間での財産保全を図る手続に過ぎない。
そのため、原則として、被害者がそれぞれ別個に仮差押え手続を講じなければならない。また、申立をしても仮差押えできるのは「特定の財産」に限られてしまうため、それ以外の財産は自由に処分できてしまうことになる。既に100名を超える被害者が損害賠償請求をしているにもかかわらず、個別の仮差押えによって、それぞれ個別に特定の財産を差し押さえなければならないのは、被害者に過大な負担を強いるものであって妥当ではない。
継続的、組織的不法行為によって多数の被害者が発生している以上、個別の民事保全手続ではなく、包括的な財産保全ができる制度が必要不可欠である。
(3)宗教法人法上の公告や財産目録等の提出義務の特例は直接財産保全の効果を有するものではない
宗教法人法上の公告や財産目録等の提出義務の特例は、いずれも解散命令請求された宗教法人の財産や財産処分行為を現状よりも把握しやすくするものにすぎない。
具体的な財産散逸行為が確認されたとしても、結局、民事保全法に基づく保全を一部で講じる機会を得るだけであり、財産散逸行為を包括的に防止することはできない。
(4)このように、本提言の施策では、統一教会による財産散逸行為を防止することはできず、被害者救済策として不十分である。
4包括的な財産保全を可能とする特措法の必要性、合憲性について
(1)必要性
前述の被害実態からすれば、被害の声を上げる者が時間の経過とともに新たに多数顕在化することは明らかである。実際、法テラスや全国統一教会被害対策弁護団には相談開始から1年が経過した現時点でも継続的に被害相談が寄せられ続けている。今後、統一教会に対する解散命令請求手続が進展するにつれて、さらに被害相談が寄せられる可能性は高い。そのため、統一教会に対する解散命令が確定した時点では、現在の124名合計約39億円をはるかに超える被害者が声を上げているという事態は容易に推測される。
また、統一教会に対する解散命令確定後の清算手続が終了すると法人が消滅するため、清算手続は、被害者が声を上げる最後の機会となる。そのため、清算手続において、被害の声を上げる者が相当増えることも容易に予想される。
仮に、現時点で、被害者がみな民事保全手続をとったとしても、保全される財産は統一教会の財産のごく一部に限られる。そのため、統一教会が民事保全によって仮差押えされた財産以外の財産を散逸させた場合には、清算手続においてこれから増え続けることが優に予想される被害者全てに対して十分な賠償をすることはできなくなってしまう。そのため、全ての被害者の実効的な救済を行うためには包括的な財産保全措置を可能にすることが必要不可欠である。
(2)合憲性
本提言では、会社法等の解散命令申立ての対象法人に対する保全処分と同様の法整備については、信教の自由との関係で厳格な合憲性審査基準が適用され、慎重に検討することが必要であるとされ、包括的な財産保全措置に関する具体的提言はなされなかった。
しかし、信教の自由、特に内心に留まらない宗教活動の自由は、他者の人権との調整を図るため一定の制約に服さざるを得ない。この点、厳格な合憲性審査基準が適用される精神的自由権の一つとして集会・結社の自由(憲法21条)がある。一般社団法人は、集会・結社の自由を享有しているが、そのような団体であっても、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」で、解散命令請求を受けた場合には包括的な財産保全措置が講じられ得るものとされている(同法262条)。同法は、内閣提出法案(閣法)であり、内閣法制局の厳格な憲法審査を通り、国会の審議を経て成立している。このことからすれば、包括的な財産保全措置の規定は、内閣法制局及び国会において厳格な合憲性審査基準によっても合憲であると判断されていたことになる。このような合憲と判断されている規定が、宗教法人との関係では憲法違反となる理由は見当たらない。
5結語
10月27日の声明でも述べたところであるが、今般の文化庁の調査により旧統一教会について全国で「相当甚大」な規模での被害が確認され、文部科学大臣により宗教法人法に基づく解散命令請求が行われた以上は、もはや被害者救済のための財産保全も、基本的には個々の被害者の自助努力に委ねられるべきものではない。国として正面から法整備をして対応すべきものである。
そして、解散命令請求された宗教法人に対して包括的な財産保全措置を可能にする特別措置法は必要不可欠であって、かつ、憲法上も十分に可能である。
よって、当連絡会としては、全ての被害者の実効的な救済のために、与野党が党派を超えて速やかに協議を行い、包括的な財産保全措置を可能とする特別措置法を成立させていただくよう改めて強く求める。
以上
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旧統一教会に対する解散命令請求に伴う財産保全、全国弁連の声明
http://skazuyoshi.exblog.jp/30487877/
2023-11-08T22:06:00+09:00
2023-11-10T16:19:09+09:00
2023-11-10T16:19:09+09:00
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時評
以下に紹介します。
声明
旧統一教会に対する解散命令請求に伴う財産保全について
2023年10月27日
全国霊感商法対策弁護士連絡会
代表世話人 弁護士 平岩敬一(横浜)
代表世話人 弁護士 郷路征記(札幌)
代表世話人 弁護士 中村周而(新潟)
代表世話人 弁護士 河田英正(岡山)
代表世話人 弁護士 山口 広(東京)
事務局長 弁護士 川井康雄(東京)
1 盛山正仁文部科学大臣は、本年10月13日、世界平和統一家庭連合(旧世界基督教統一神霊協会。以下「旧統一教会」という。)に対し、宗教法人法に基づく解散命令請求を行った。
当連絡会は、今後、旧統一教会に対して解散命令が言い渡されることは確実であると考える。旧統一教会の財産が適切に保全されていれば、解散命令確定後の清算手続において被害者が救済を受けられる可能性がある。
ところが、現在のところ、宗教法人法上、解散請求を受けた宗教法人について、解散命令が出るまでの間にその財産の流出を防止するような規定は存在しない。
旧統一教会の収入源のほとんどが献金であることからすれば、同法人の財産のかなりの部分は預貯金ないし現金といった流動資産であると考えられる。しかし、その財産流出を防止する制度がなければ、旧統一教会は、解散命令が出されるまでの間に、その財産を関連団体や信者に移転させ、あるいは海外に流出させるおそれが高い。また、国内に有する不動産を関連団体や信者に移転させるおそれもある。これらの場合、上記清算手続を通じた被害者救済は極めて困難になってしまう。
旧統一教会の被害者の多くは、長年、同法人に対する解散命令請求がなされず放置されてきたことにより生じ、あるいはその被害が増大したというべきである。それにもかかわらず、ようやく解散命令に至ってもなおそれらの被害救済が図られないということになれば、一体何のための解散命令だったのか、ということになってしまう。そうした事態は断固として避けなければならない。
2 当連絡会は、本年5月16日に速やかに財産保全の特別措置法を成立させるべき旨の声明を発出し、7月7日、9月30日、10月13日の各声明でも繰り返し同法の成立を求めてきた。
そして、立憲民主党、日本維新の会は今月20日に特別措置法案、宗教法人法の改正案を国会に提出し、自民党、公明党の両党は同月25日に財産保全等の被害者救済について議論するプロジェクトチームの初会合を開催した。同チームは来月中旬を目処に具体策をまとめる考えであると報じられている。
当連絡会は、与野党がこうした取り組みを行っていることについては評価し、実効性のある立法のために協力を惜しまない考えである。
3 ただ、現在までの報道によれば、上記プロジェクトチームでは、新法の検討ではなく、まずは現行法での対応を検討する、具体的には民事保全法の活用、外為法(外国為替及び外国貿易法)による対応、法テラスの相談窓口の拡充による対応、といった議論がされているようである。
しかし、上記のような対応だけでは現実的な財産保全は著しく困難であり、以下の実情を踏まえて立法に向けた検討を行っていただく必要がある。
(1)民事保全法では被害救済のための財産保全は極めて限定的になってしまう
まず、民事保全法の場合、保全されるべき債権(損害賠償請求権)の存在を疎明(一応確からしいという程度まで事実を明らかにすること)し、なおかつ相当額の保証金をまず被害者側で準備する必要がある。
しかし、旧統一教会は、献金等に対して領収証等を発行しておらず、献金記録の開示にも一切応じず、被害事実の調査も十分に行わない姿勢を示していることから、特に長期にわたる被害の場合、損害賠償請求権の疎明のために過大な負担を強いられることになる。また、霊感商法・高額献金等の被害によって多くの財産を収奪された結果、保証金を準備できる余力もない被害者がほとんどである。
仮に上記の疎明の問題や保証金の問題を乗り越えて保全命令が下されても、その保全の範囲は、疎明された債権に必要な範囲に限定されてしまうことから、差し押さえられるのもその範囲の「特定の財産」だけに限られることになる。
この点、当連絡会が長年にわたり受けてきた相談件数、被害額の規模からしても、あるいは解散命令請求の際に行なわれた文化庁の説明によっても、旧統一教会の被害は全国的に同様の内容で発生しており、かつ、その規模は「相当甚大」であることが判明している。このことからすれば、現時点でもまだ被害の声を上げることのできない被害者は、現役の信者の方も含めてかなりの数に上ることが優に想定される。
こうした被害者の多くは、脱会後に時間が経ち、それに伴い少しずつ心の整理がついて行き、ようやく自らの被害事実を認識してはじめて声を上げることができるものであるところ、民事保全法の枠組みでは、こうした被害者の債権は一切保全されないことになってしまう。全国的に同様の被害が多数発生しているという実態からしても、財産保全の必要性について個々の債権のみに着目するのではなく、被害の全体像を把握した上で検討されるべきである。
(2)外為法及び関税法の改正では海外への資産移転しか対応出来ない
外為法による対応は、その具体的な内容が現時点では明らかにされていないものの、同法が財産凍結に向けた法整備をしたのはテロリストを対象にするものに限られている。これを旧統一教会にまで拡げるような改正を行うことができたとしても、同法の性質上、海外に財産を移転させる点に限っての対応しかできず、十分な財産の流出を防止するような制度とはならない。この点は関税法による対応でも同様である。
(3)法テラスの相談窓口拡充は、財産保全にはあまり有効な方法とは言えない
法テラスの相談窓口の拡充は、まだ被害の声を上げていない被害者の声を受けとめやすくするものであり有意義なものである。しかし、財産保全との関係では大きな意味を有するものではない。
4 したがって、政府及び与野党は、上記問題点について速やかに確認の上、それを踏まえて、財産保全のために実効性のある特別措置法を作るべきである。
この点、上記プロジェクトチームでは、財産保全の法整備は憲法の保障する財産権や信教の自由との関係で難しいとの意見が出されたと報じられている。また、旧統一教会からも一部議員に対して、同様の理由により法整備をしないように求める書面が提出されている。
しかしながら、裁判所の判断による財産保全手続として、解散命令後の清算手続に支障が生じないようにするために必要最低限の方策を採ることは、何ら財産権及び信教の自由の侵害となるものではない。
すなわち、当然のことながらこれらの憲法上の権利・自由も全く無制約なものではなく、他者の人権との関係で制約を受けるものである。憲法違反となるかはその制約の程度による。例えば、保全する財産の上限を定めたり、宗教活動に必要な支出については一定の限度で許容したり、または、一定の行為(例えば、正当な理由のない海外への財産移転や国内での不動産移転等)に限って規制したりするなど、工夫の余地はいくらでもある。財産権及び信教の自由との調整を図りつつ、適切に財産を保全し被害者救済を図っていくことは十分に可能である。
5 文化庁の調査により旧統一教会について全国で「相当甚大」な規模での被害が確認され、文部科学大臣により宗教法人法に基づく解散命令請求が行われた以上は、もはや、被害者救済のための財産保全も、基本的には個々の被害者の自助努力に委ねられるべきものではない。国として正面から法整備をして対応すべきものである。このタイミングで適切に法整備が行われ被害救済が図られなければ、オウム真理教の場合のように、被害者や弁護団が被害救済のために数十年も活動を続けることにもなりかねない。
そして、被害者救済を実効性のあるものにするという目的においては、与野党は一致しているはずである。当連絡会は、与野党が党派を超えて速やかに協議を行い、今臨時国会中に実効性のある財産保全の特別措置法を成立させていただくよう、改めて強くお願いする次第である。
以上
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旧統一教会への解散命令の請求に関する実効的な被害の救済を求め、日弁連声明
http://skazuyoshi.exblog.jp/30485030/
2023-11-03T22:42:00+09:00
2023-11-06T15:56:47+09:00
2023-11-06T15:56:47+09:00
kazu1206k
時評
「宗教団体の財産保全については、当該団体の財産権や宗教活動を行う権利との関係が問題となり得る。宗教法人に対する財産保全に関する規定はないものの、旧統一教会に対する解散命令請求が行われたことを踏まえて、保全のための管理や監督の方法については、特別の規定を設けることで、制限的でない手段を講ずるなど、様々な方策も考えられる。」「国には、被害の回復に向けて最大限努力する責任と義務がある。当連合会は、国に対し、被害者の救済を確実かつ実効的なものにするための法整備を迅速に検討することを求める。」としています。
旧統一教会に対する解散命令の請求に関する実効的な被害の救済を求める会長声明
本年10月13日に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令の請求が行われたことを受け、与党は財産保全等の被害者救済について議論するプロジェクトチームを結成した。また、野党からも財産保全等を可能とするための法案が複数提出されている。
霊感商法等の悪質商法及び宗教問題による被害の実効的な救済のためには、当該宗教団体の財産散逸を防止しなければならず、財産保全等を現実的に可能とする仕組みが必要である。既に全国統一教会被害対策弁護団が被害総額約39億5000万円にも上る集団交渉や集団調停申立を行っており、これらは更に増える可能性もある。これほどの被害の訴えが現に存在することは、解散命令請求が行われたことと合わせて重く受け止めなければならない。今般の与野党の動きは、同様の問題意識によるものと思われ、迅速な対応を期待する。
そもそも財産の保全方法として、現行の民事保全制度の活用も一応考え得るが、本件については有用とはいえない。すなわち、民事保全法上の手続では、被保全債権及び保全の必要性について疎明を求められるほか、相応の保証金を求められることが通常である。長期にわたり被害を受けている被害者にとってこれらの要求は過大な負担となる。また、日本司法支援センター(法テラス)の民事保全手続等の代理援助決定を受けた者については、立担保援助制度の利用も考え得るが、別途審査が必要となり、利用できるのは一部の被害者に留まる。そのため、保全できる財産の範囲も限定的なものとなる。
令和4年度版法テラス白書によれば、昨年11月に開設された霊感商法等対応ダイヤルに本年3月末までに累計3,796件の相談が寄せられ、うち旧統一教会を相手方とするものは約2割に相当する754件にも及ぶとのことである。同ダイヤルが今なお継続していることからすれば、被害の全体像はいまだ把握しきれていないというべきである。解散命令の請求を契機として、ようやく被害を認識して声を上げる被害者もいると思われ、その数は今後も増える可能性がある。また、当連合会が実施したフリーダイヤル等により受け付けた無料法律相談においても、旧統一教会による財産的被害額を申告する相談のうち、1000万円以上の被害額を訴えたものが約4割もあり(arrow_blue_1.gif霊感商法等の被害に関する法律相談事例収集第2次集計報告)、被害総額の規模は甚大であることも予測される。このような状況に鑑みれば、現行法での対応に限界があることは明らかである。
宗教団体の財産保全については、当該団体の財産権や宗教活動を行う権利との関係が問題となり得る。宗教法人に対する財産保全に関する規定はないものの、旧統一教会に対する解散命令請求が行われたことを踏まえて、保全のための管理や監督の方法については、特別の規定を設けることで、制限的でない手段を講ずるなど、様々な方策も考えられる。
国には、被害の回復に向けて最大限努力する責任と義務がある。当連合会は、国に対し、被害者の救済を確実かつ実効的なものにするための法整備を迅速に検討することを求める。
2023年(令和5年)11月2日
日本弁護士連合会
会長 小林 元治
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旧統一教会に対する解散命令の請求、日弁連の談話
http://skazuyoshi.exblog.jp/30469774/
2023-10-16T21:47:00+09:00
2023-10-17T07:56:12+09:00
2023-10-17T07:56:12+09:00
kazu1206k
時評
旧統一教会に対する解散命令の請求についての会長談話
本日、文部科学省は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令の請求を東京地方裁判所に行った。文化庁が質問権の行使を含む調査を行った上で、解散命令請求という大きな決断に至ったことについて、当連合会としても重く受け止め、今後を注視していく。
もっとも、宗教法人に対する解散命令請求は、それ自体が直接に霊感商法等の被害救済につながるものではなく、今なお多くの被害者がいる現実があることを忘れてはならない。
当連合会は、霊感商法等の悪質商法及び宗教問題による被害の深刻さが改めて顕在化する中で、関係機関と連携をするとともに、全国の弁護士会等の協力を得てフリーダイヤル等による無料法律相談受付を行ってきた。寄せられた約1500件もの相談から、事例を収集し分析する中で、旧統一教会による高額な財産的被害の申告が相当数あり、深刻な被害が長期間にわたり存在し続けてきたことを目の当たりにした。このような中で、当連合会は、全国から約350名もの弁護士が参加している全国統一教会被害対策弁護団の活動を支援している。同弁護団の集団交渉や集団調停申立等は始まったばかりであり、一日も早く被害者が救済されるよう、当連合会として、同弁護団と積極的に連携し、その支援を継続していく決意である。
宗教法人に対する解散命令は、宗教団体の法人格を失わせ、税制上の優遇措置をなくすなど、その事業活動に大きな影響を及ぼすものであり、裁判においては、慎重かつ適正な審理が求められることは当然である。もっとも、過去に法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと(宗教法人法第81条第1項第1号)を理由として行われた解散命令に係る裁判では、その確定までに長期間を要している。裁判が長期化すれば、その間に当該宗教団体の財産散逸の可能性があることなどから、迅速な進行が求められる。さらに実効的な被害救済を実現するためには、解散命令請求に合わせて当該宗教団体の財産保全等を現実的に可能とする仕組みが必要である。宗教法人法上にこのような規定がないことが課題として指摘されており、法改正又は特別法等の立法措置を検討することが望まれる。宗教団体には宗教的活動を行う権利が認められているとはいえ、個人の権利と自由を侵害することは許されない。国は、毅然とした態度で臨むべきである。
当連合会は、人権擁護を使命とする法律家団体として、信教の自由、個人の尊厳を守るべく、引き続き関係機関及び関係団体等との連携を緊密に図り、実効的な被害の救済及び防止に向けた提言と活動を行っていく所存である。
2023年(令和5年)10月13日
日本弁護士連合会
会長 小林 元治
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日弁連、霊感商法等の悪質商法及び宗教問題による被害顕在化から1年を迎えて会長談話
http://skazuyoshi.exblog.jp/30381333/
2023-07-11T22:02:00+09:00
2023-07-14T13:10:06+09:00
2023-07-14T13:10:06+09:00
kazu1206k
時評
霊感商法等の悪質商法及び宗教問題による被害の顕在化から1年を迎えるに当たっての会長談話
いわゆる「旧統一教会」問題をはじめ、霊感商法等の悪質商法及び宗教問題による被害の深刻さが改めて顕在化してから、およそ1年が過ぎようとしている。
これらの問題は、約1年前に、安倍晋三元内閣総理大臣が銃撃された事件を契機に、大きな社会的関心を集めることとなったが、その被害救済や防止のためには、なお数々の課題が残されている。私たちは、この深刻な社会問題を再び風化させてはならない。
この1年の間に、国は、「旧統一協会」問題関係省庁連絡会議の開催や、消費者庁が主催した霊感商法等の悪質商法への対策検討会での有識者による検討と提言を行うなどし、当連合会もそれに積極的に連携と協力をしてきた。また、日本司法支援センター(法テラス)の市民向け相談・情報提供窓口(霊感商法等対応ダイヤル)との関係では、当連合会も、2022年9月5日から本年2月28日まで、全国の弁護士会等の協力を得てフリーダイヤル等による無料法律相談受付を行ってきた。寄せられた約1500件もの相談から事例を収集しarrow_blue_1.gif分析する中で、旧統一教会による高額な財産的被害をはじめとする深刻な被害実態を改めて目の当たりにした。
具体的な被害救済を求めて、2022年11月には、当連合会がその体制構築を支援する全国統一教会被害対策弁護団が結成された。現在、全国から約350名の弁護士が参加し、旧統一教会に対する集団交渉等の申し入れを行うなど、その活動はこれからが正念場といえる。当連合会として、全国の弁護士及び弁護士会と共に、引き続き同弁護団の活動を支援するとともに、積極的に連携をしていく。
また、既に6回を数える文部科学省による旧統一教会への宗教法人法に基づく質問権行使、解散命令請求の行方も注視している。
2022年12月10日の臨時国会においては「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」等が成立し、同法律は本年1月に一部を除き施行され、6月から全面施行された。寄附及び寄附を集める団体について一定の規制を設けるなど、今後の被害の救済及び防止に向けた姿勢を示したものといえ、消費者庁の発表によれば、本年4月から5月までの2か月間で48件の違反が疑われる事例の情報が寄せられているとのことである。しかしながら、取消しができる寄附行為等が限定的であることや、寄附の勧誘を行う際の配慮義務、債権者代位権の行使に関する特例の要件など、同法律等ではまだ不十分との指摘もあり、改善に向けて検討すべき課題も数多く、成立時には施行2年後の見直し規定が置かれている。
当連合会は、人権擁護を使命とする法律家団体として、現存する被害実態や被害の救済に関わる今後の情勢に鑑みながら、同法律等において見直すべき検討課題に取り組んでいく。あわせて、宗教活動を契機とした家族の問題、心の悩み、とりわけ宗教二世を含む子どもが抱える問題等や、信教の自由と団体の責任などについて、あらゆる観点から検討した上で、より実効的な被害の救済及び防止に向けた具体的な提言と活動を引き続き行っていく所存である。
2023年(令和5年)7月6日
日本弁護士連合会
会長 小林 元治
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マイナンバー促進の法改正の再検討を、日弁連声明
http://skazuyoshi.exblog.jp/30283732/
2023-03-30T17:16:00+09:00
2023-03-30T17:16:28+09:00
2023-03-30T13:47:59+09:00
kazu1206k
時評
政府は、今国会で、①国家資格等に関する事務にマイナンバーを利用できるようにする利用分野の拡大、②行政手続における特定個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号)別表第1に限定列挙されていた利用事務を、それらに「準ずる事務」であればマイナンバーを利用できるようにし、また、番号法別表第2に限定列挙されていた情報照会・提供が認められる機関と事務も政省令で定められるようにする、③公金受取口座について、名義人が不同意の回答をしない限り、国がマイナンバーとひも付けて登録する制度を創設するなどの、マイナンバー(個人番号)の利用促進を図る法改正を行おうとしています。
これらについて、「マイナンバーは、悉皆性、唯一無二性を持つ、原則生涯不変の個人識別番号であることから、その利用分野・事務を拡大すれば、より広範な個人情報が番号にひも付けられた上、漏れなく・他人の情報と紛れることなく名寄せされデータマッチング(プロファイリング)されてしまう危険性が高まる」として、「マイナンバーの利用分野・事務の拡大や法規制の緩和などを行うべきではなく、上記の法改正は再検討されるべきである。また、政府等によるマイナンバーカードの普及・利用促進策も、任意取得の原則に反しないよう見直されるべきである。」としました。
マイナンバー(個人番号)利用促進の法改正の再検討を求める会長声明
政府は、今国会において、マイナンバー(個人番号)の利用促進を図る法改正を行おうとしている。その内容は、①国家資格等に関する事務にもマイナンバーを利用できるようにするなど利用分野を拡大すること、②行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号)(以下「番号法」という。)別表第1に限定列挙されていた利用事務を、それらに「準ずる事務」であればマイナンバーを利用できるようにし、また、番号法別表第2に限定列挙されていた情報照会・提供が認められる機関と事務について、政省令で定められるようにすること、③公金受取口座について、名義人が不同意の回答をしない限り、国がマイナンバーとひも付けて登録する制度を創設することなどである。同時に、マイナンバーカードの券面に氏名のローマ字表記を追記できるようにすることなども目指されている。
しかし、マイナンバーは、悉皆性、唯一無二性を持つ、原則生涯不変の個人識別番号であることから、その利用分野・事務を拡大すれば、より広範な個人情報が番号にひも付けられた上、漏れなく・他人の情報と紛れることなく名寄せされデータマッチング(プロファイリング)されてしまう危険性が高まる(本年3月9日のマイナンバー制度に関する最高裁判所判決においても、具体的な法制度やシステムの内容次第では、このような危険が生じ得ることが指摘されている。)。それゆえに、番号法は、その利用分野を社会保障制度、税制及び災害対策の3分野に限定し(第3条第2項)、かつ、それらの分野内の利用事務についても国会の審議に基づいて法律で定めた事務についてのみ認め(第9条)、マイナンバー付き個人情報の提供を厳格に制限し(第19条)、それらの制限違反について通常の個人情報の場合よりも重い罰則を科す(第9章)など、厳格な規制を行ってきたのである。
それにもかかわらず、上記の法改正に対する事前のプライバシー影響評価(PIA)手続すら行わないまま、利便性や効率性のみを追求して法改正を急げば、2021年5月に成立したいわゆるデジタル改革関連法で「自己情報コントロール権」の保障が実現されていないことともあいまって、プライバシー保障上の危険性が極めて高まるものといわなければならない。マイナンバーの利用分野・事務を拡大すべきではなく、利用事務については、少なくとも国会での十分な審議を行って法定する手続が必要である。
また、公金受取口座とマイナンバーのひも付け登録には、名義人の積極的な同意を求めるべきであり、名義人が知らないうちにひも付けされてしまうような方法をとるべきではない。マイナンバーカードの券面の記載に関しても、記載事項を増やすことではなく、マイナンバーや性別の記載を削り、プライバシーや性同一性障害者の人権保障に資するよう見直すことこそ必要である。
法改正と併せて、政府は、マイナンバーカードの普及・利用促進のため、健康保険証の廃止によって事実上マイナンバーカードの取得を義務化するような施策を進めている。これを受けて、地方自治体においても、例えば岡山県備前市が給食費等の免除を継続するために児童生徒の世帯員全員のマイナンバーカード取得を要件とする条例を制定するなど、事実上マイナンバーカードの取得を強制する施策が相次いでいる。
しかし、当連合会が「個人番号カード(マイナンバーカード)普及策の抜本的な見直しを求める意見書」(2021年5月7日)等で指摘したとおり、このような施策はプライバシー保障上の問題があるばかりか、番号法が定める任意取得の原則にも反するものであって中止すべきである。
以上のとおり、マイナンバーの利用分野・事務の拡大や法規制の緩和などを行うべきではなく、上記の法改正は再検討されるべきである。また、政府等によるマイナンバーカードの普及・利用促進策も、任意取得の原則に反しないよう見直されるべきである。
2023年(令和5年)3月29日
日本弁護士連合会
会長 小林 元治
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「緊急事態に関する国会審議を求める意見書(案)」の不採択を求め、県弁連が声明
http://skazuyoshi.exblog.jp/30199643/
2022-12-17T20:17:00+09:00
2022-12-18T09:28:28+09:00
2022-12-18T09:28:28+09:00
kazu1206k
時評
声明は、意見書案が、「国においては、緊急事態における憲法の在り方について、建設的かつ広範な議論を促進するとともに、国民的議論を喚起するよう強く求める」としていることが、「いわゆる国家緊急権の規定を新設する内容の憲法改正を目指す動きと呼応するもの」として、「自然災害等からの救済は、政府に権力を集中させるための法制度を新設したり憲法を改正することよりも、むしろ、事前の対策を十分に行った上で、万一災害等が発生したときには、既存の法制度を最大限に活用して対応することが何よりも重要である」「過去の災害と災害対応についての具体的かつ詳細な検討を踏まえて行われるべきものであるとともに、人権保障と権力分立を旨とする立憲主義を適切に踏まえて行われるべきものである」として、福島県議会に対して、意見書案を採択しないよう求めています。
「緊急事態に関する国会審議を求める意見書(案)」を不採択とすることを求める会長声明
現在開会中の福島県議会令和4年度12月定例会に、「緊急事態に関する国会審議を求める意見書(案)」(以下、「意見書案」という。)が提出されている。
意見書案は、新型コロナウイルス禍における深刻な被害や医療崩壊の危機、また東日本大震災の際の対応の遅れなどを指摘し、「現在の法体系では緊急事態への対応に限界がある」「国民は、緊急時に国民の生命と財産を守るための施策と法整備、さらにはその根拠規定たる憲法について国家が建設的な議論に取り組むことを期待している」などとした上で、「国においては、緊急事態における憲法の在り方について、建設的かつ広範な議論を促進するとともに、国民的議論を喚起するよう強く求める」としている。
意見書案は、明言は避けているものの、いわゆる国家緊急権の規定を新設する内容の憲法改正を目指す動きと呼応するものと言える。
当会は、2015年(平成27年)4月20日付「国家緊急権を設ける日本国憲法の改正に反対する会長声明」を発出している。この会長声明では、①国家緊急権は、立憲的な憲法秩序の停止を伴うものであり、歴史上、国家緊急権が濫用されたり国家緊急権の下で人権侵害がなされてきたことを踏まえ、あえて憲法には国家緊急権の規定を置かず、非常事態については平時からこれに対応するための法制度を整備していること、②我が国の災害対策法制は精緻に整備されており、政府が私権の制限を含む様々な措置をとることができるとされていること、③東日本大震災における政府の初動対応の不十分さは、法制度に問題があったからではなく、事前の対策が不足し、法制度を十分に活用できなかったからであることなどを明らかにし、「災害対策を理由として国家緊急権を創設することは、既存の災害法制に対する理解を著しく欠くものである」として、国家緊急権の創設に反対する意思を表明したものである。
これらは、現下の新型コロナウイルス禍においても基本的に妥当するものである。我が国においては、感染症の流行については感染症法や新型インフルエンザ等対策特別措置法(法改正により新型コロナ禍に適用)が存在し、十分対応することは可能であった。新型コロナウイルス禍に対する対応の遅れや混乱等は、法制度自体に内在する問題というよりは、むしろ、国が専門家の意見を正しく汲み取って効果的な政策形成を図るシステムが整備されていなかったことや、現場で対策にあたる医療機関や保健所等の体制が不十分なまま放置されてきたことによるものというべきである。
当会は、東日本大震災や東京電力福島第一原発事故、そして新型コロナウイルス禍など、県民の命と暮らしが危険に脅かされているときに、法律相談などの被災者・被害者支援活動を行ってきたが、これらの支援活動を通じて感じてきたことは、自然災害等からの救済は、政府に権力を集中させるための法制度を新設したり憲法を改正することよりも、むしろ、事前の対策を十分に行った上で、万一災害等が発生したときには、既存の法制度を最大限に活用して対応することが何よりも重要であるということである。
当会は、緊急事態に備えるための法整備やそのための議論を否定するものではないが、これらは、過去の災害と災害対応についての具体的かつ詳細な検討を踏まえて行われるべきものであるとともに、人権保障と権力分立を旨とする立憲主義を適切に踏まえて行われるべきものであると考える。
以上の理由により、当会は、福島県議会に対して、意見書案を採択しないよう求めるものである。
2022年(令和4年)12月13日
福島県弁護士会
会長 紺 野 明 弘
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不十分な旧統一教会新法の成立、全国弁連が声明
http://skazuyoshi.exblog.jp/30195200/
2022-12-12T16:50:00+09:00
2022-12-12T16:50:45+09:00
2022-12-12T16:50:45+09:00
kazu1206k
時評
全国霊感商法対策弁護士連絡会は、「『法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律』の成立に対する声明」を公表して、「当会は、同法案の不足点、問題点を指摘する声明を発出し、これに対する若干の修正は見られたものの、重大な不足点については最後まで解消されませんでした」「新法は被害防止という観点からも被害者救済という観点からも、余りに不十分なものとなった」として、「特に政府・与党において、被害者の生の声を聞いた時間・量は圧倒的に少なかったと言わざるを得ない」「家族被害、二世問題の様々な被害実態に対処するためにも、法案成立後、できるだけ速やかに、行政府である政府内と立法府である国会内の双方に、協議会ないし検討会を設置した上で、こうした被害者や関係者の声を聞き、それを適切に分析して、法的支援に留まらず様々な角度からの支援や新たな実効的な法制度の創設が行われるよう、速やかに対処すべきである」と指摘。
統一教会の問題について、「その本質が、正体を隠した違法な伝道活動による信教の自由への侵害という点にあることを改めて検証した上で、同様の被害が繰り返されることのないよう、かかる伝道活動に対する規制を併せて行うべきである」と求めています。
「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」の成立に対する声明
2022年12月10日
全国霊感商法対策弁護士連絡会
代表世話人 弁護士 郷路征記(札幌)
代表世話人 弁護士 中村周而(新潟)
代表世話人 弁護士 河田英正(岡山)
代表世話人 弁護士 平岩敬一(横浜)
代表世話人 弁護士 山口 広(東京)
事務局長 弁護士 川井康雄
1.本日、「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」(以下「新法」という。)が成立した。当会はこれまで、本年11月19日、29日と同法案の不足点、問題点を指摘する声明を発出し、これに対する若干の修正は見られたものの、重大な不足点については最後まで解消されなかった。
2.新法の問題点の内、重要なものは以下の通りである。
(1)家族被害の救済が図られないこと
新法では、家族被害の救済について、債権者代位権行使の特例(第10条)により行うものとされているが、この制度は要件が狭く、取消の範囲も狭く、家族被害の救済にはならない。特に未成年者である二世が権利行使するのが極めて困難な制度になっており、この点は衆議院の付帯決議でも「親権者が寄附をしている場合には未成年の子が債権者代位権を行使することは困難である」とされているところである。
消費者庁の霊感商法検討会でも成年後見制度の改正を含めた財産管理制度を設けるべきとの意見が出されているように、家族被害を抜本的に救済し、かつ、被害者本人の保護を図っていくためには、家庭裁判所の監督の下で第三者が本人に代わって寄附を取り消し管理する制度が必要である。このように、家庭裁判所の監督の下で第三者が権利行使をする制度であれば、家族間の対立が生じにくく、家族問題で苦しんでいる二世にとっても利用しやすいものと考えられる。
(2)行政処分による救済可能性が不明なままであること
新法で現実的に家族被害の救済を図りうるものとしては、行政処分(勧告・命令)しかないが、その内容について新法は「遵守すべき事項を示して、これに従うべき旨」(第6条1項)、「当該行為の停止その他の措置をとるべき旨」(第7条2項)を勧告ないし命令できるとしているに留まり、当該法人へ寄附の返金を求めるところまで含まれるのかが明らかでない。
この点は所轄庁における今後の運用において、特に深刻な被害の事案については積極的に寄附の返還まで踏み込んでいくことを強く要望したい。
(3)禁止行為等の範囲、適用対象が狭いこと
新法では、禁止行為や取消権等の対象となる行為の範囲が狭すぎ、統一教会被害について言えば被害救済にほとんど役立たないものとなってしまった。
特に、寄附の勧誘に関する禁止行為(第4条)の「寄附の勧誘に際し」「困惑」「必要不可欠」といった文言は、裁判において禁止行為の範囲が限定される可能性が高く、統一教会の寄附勧誘手法を捕捉できないため、当会は繰り返しこれらの文言の修正や削除を求めてきたが、受け入れられないままとなった。
ただし、こうした不足点については、岸田首相をはじめ、政府答弁でかなり広い解釈となる旨が明らかにされた。同法の逐条解説においてはこれらの答弁を基に、少しでも被害防止・救済に有用な解釈を明記して頂きたい。
配慮義務(第3条)については最後の修正で「十分に」との文言が入り、勧告・公表に結びつけられたものの、被害防止・救済の実効性という観点からは不十分なものに留まったと言わざるを得ない。この点は改めて議論を重ね、被害実態に即した具体的な規定にした上で、見直し(附則第5条)の際には禁止行為に改められるべきである。
(4)個人への寄付が対象から外れていること
新法の適用対象は法人や代表者若しくは管理者の定めのある社団・財団に対する寄附に限られたままとなった。統一教会は、今後解散命令により法人格を失ったとしても、その幹部信者が個人として、あるいは代表者等を定めないまま宗教団体として違法な寄附勧誘を継続するおそれが高いが、新法ではそうした事態に対処できない。遅くとも見直しの際には対象範囲を個人にまで広げるべきである。
(5)いわゆる「二世」の支援に関して
新法では家族被害がほとんど救済されないことは前記の通りである。
ただし、衆議院の附帯決議では、いわゆる「二世」(以下単に「二世」という。)問題に関し、「こどもが抱える問題」等の解決に向け、法的支援・精神的支援・児童虐待や生活困窮問題の解決に向けた支援などの支援体制を構築する、とされた。
こうした支援体制の構築には当会としても異論は無い。
二世問題の本質は、こどもの信教の自由が、父母及び父母を支配するカルト的団体によって侵害されている点にある。父母は、こどもが信教の自由を行使する際には「発達しつつある能力に適合する方法で指示を与える義務」(児童の権利条約第14条2項)を負っている。自らの信仰をこどもに無条件に継承させることは認められていない。二世問題に対して支援体制を構築する際にはこの点を明確にしておく必要がある。
現在、こども政策の推進に係る有識者会議において検討が進められている「こども大綱」では、子ども施策に関する重要事項として「二世問題」を取り上げ、問題解決に向けた施策を講じられたい。
また、二世問題はカルト宗教に限った問題ではなく、特異な思想、信条、価値観に支配された親を持つこどもも同じ問題を抱えている。
さらに、二世問題は「こども」だけが抱える問題ではなく、成人した二世でも、かつて受けた虐待などにより、様々な肉体的・精神的な苦痛や葛藤、生活苦を抱えている方も多い。そうした二世への精神的・経済的な支援体制も併せて構築いただきたい。
3.今後行われるべきことについて
以上のとおり、新法は被害防止という観点からも被害者救済という観点からも、余りに不十分なものとなった。
この間、特に政府・与党において、被害者の生の声を聞いた時間・量は圧倒的に少なかったと言わざるを得ない。
前記家族被害、二世問題の様々な被害実態に対処するためにも、法案成立後、できるだけ速やかに、行政府である政府内と立法府である国会内の双方に、協議会ないし検討会を設置した上で、こうした被害者や関係者の声を聞き、それを適切に分析して、法的支援に留まらず様々な角度からの支援や新たな実効的な法制度の創設が行われるよう、速やかに対処すべきである。
最後に、統一教会の問題については、その本質が、正体を隠した違法な伝道活動による信教の自由への侵害という点にあることを改めて検証した上で、同様の被害が繰り返されることのないよう、かかる伝道活動に対する規制を併せて行うべきである。
以上
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統一教会被害者救済の新法案等に声明、全国弁連
http://skazuyoshi.exblog.jp/30180265/
2022-11-24T13:32:00+09:00
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kazu1206k
時評
全国弁連は、「政府案は、世界平和統一家庭連合による加害行為の実態に即していないため、その被害救済のためにはほとんど役に立たないものとなっている」「その被害防止や救済にほとんど役に立たないのでは意味が無く、政府は被害に関する実態把握が未だ不十分であると言わざるを得ない」「宗教法人ないしこれに類する団体の正体を隠した勧誘方法そのものを正面から規制する立法がなされるべきであるし、高額献金について必要な規制を設ける場合には、立憲民主党・日本維新の会が既に提出している法律案を、実態に合致したものに修正して検討すべきである」として、法人に限らず信徒団体なども規制対象に含め、困惑だけでなく「正常な判断ができない状態に乗じた」と修正する必要があると指摘。消費者契約法の改正案には、「献金受領時の記録作成・開示を義務づける規定を求めている。政府案は実態に即しておらずほとんど役に立たない。正体隠しによる勧誘方法そのものを規制すべきだ」と早期修正を求めました。
記者会見では、家族が取り消せる寄付の範囲が狭く「これでは家族の被害が救えない」とし「被害者の実態を踏まえた法整備をしてほしい」と訴えました。
声 明
統一教会被害者救済に関する「新法概要」と「消費者契約法等改正案」の問題点について
2022年11月21日
全国霊感商法対策弁護士連絡会
代表世話人 弁護士 郷路征記(札幌)
代表世話人 弁護士 中村周而(新潟)
代表世話人 弁護士 河田英正(岡山)
代表世話人 弁護士 平岩敬一(横浜)
代表世話人 弁護士 山口 広(東京)
事務局長 弁護士 川井康雄
1 はじめに
(1)政府は、本年11月18日、統一教会の被害者救済等に関し、「被害救済・再発防止のための寄附適正化の仕組み(概要)」を発表し、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部改正法案)について閣議決定した(以下、前者を「新法概要」、後者を「消費者契約法等改正案」、両者あわせて「政府案」という。)。
(2)政府案は、世界平和統一家庭連合(以下「家庭連合」という。)による加害行為の実態に即していないため、その被害救済のためにはほとんど役に立たないものとなっている。
対処すべき家庭連合の加害の実態は、献金をさせる意図の下、被勧誘者に対して、正体を隠して長期間の働きかけを加えることにより、献金をすることが自分や家族の不幸を避けるために必要なことだと思い込ませ、以後はその思い込みを刺激することによって寄附をさせるという方法である。
したがって、献金をする時点だけを見ると、新法概要が寄附勧誘の際の禁止行為とする、消費者契約法第4条第3項に規定する行為によって「個人を困惑させる」ことはさほど多くないのである。
家庭連合の問題を解決するためのこれまでの議論が行われてきたにも拘わらず、その被害防止や救済にほとんど役に立たないのでは意味が無く、政府は被害に関する実態把握が未だ不十分であると言わざるを得ない。
(3)上記のような加害実態に対処するためには、宗教法人ないしこれに類する団体の正体を隠した勧誘方法そのものを正面から規制する立法がなされるべきであるし、高額献金について必要な規制を設ける場合には、立憲民主党・日本維新の会が既に提出している法律案を、上記の実態に合致したものに修正して検討すべきである。
以下、この根本的な問題点があることとは別に、政府案の個々の内容についての問題点を指摘する。
2 新法概要について
新法概要の内容は、添付資料1の通りであるところ、その問題点は以下の通りである。
(1)「対象」について
個人から法人への寄附、だけを対象とするのでは範囲が狭すぎる。金銭収奪を図ろうとするカルト的な団体は法人格を有しないもの、個人に近しいものも存在するのであり、少なくとも団体ないし団体幹部個人に対する寄附は規制対象に含めるべきである。
(2)「寄附に関する規制」について
ア 「寄附の勧誘に関する一定の行為の禁止」について
前記の通り、家庭連合による被害は、「困惑」しないで行う献金が多く含まれるのであり、困惑類型として規制だけでは不十分であり、「正常な判断ができない状態にあることに乗じた」勧誘も規制対象とすべきである。
また、禁止行為対象として、「健康不安商法」を規制する消費者契約法4条3項5号が脱落しているのは承認しがたい。家庭連合の場合、高麗人参商法が現にあり、実際に薬事法違反で摘発され有罪となったケースすらあることを看過している。同号と同様の規定が不可欠である。
さらに、不利益を回避するために当該寄附を行うことが「必要不可欠」である旨告知されることを要件とするのは余りに厳格に過ぎ、これでは実務上、結局被害救済に用いることが今以上に困難となる。
加えて、霊感商法では、単に不安を煽るだけでなく、それに乗じて、当該契約締結により運が向上する、良い結果が生じると告知するような事例も多い。したがって、「不安の告知」のみならず、不安に乗じた「開運等の告知」も規定に盛り込むべきである。
また、「不安を抱いていることに乗じて」に関し、当該不安と財産上の利益の供与の間の因果関係について推定規定を設けるべきである。
イ 「借入れ等による資金調達の要求の禁止」について
「居住する建物等の処分により寄附資金の調達を」「要求する」行為だけでは狭すぎる。「勧誘する」行為も禁止すべきであるし、居住用不動産に限らず、本人や家族にとって重要な不動産を処分して献金するよう勧誘する行為や、それらの不動産をそのまま寄附する行為も禁止すべきである。
更に、土地建物を売らず借金もせずとも重要な財産を寄付して本人及び家族の生活を破綻させるような行為についても、一定の制限を設けるべきである。
同様に、生命保険金も故人が家族のために遺した重要な財産であり、残された家族にとって必須の生活手段であることが多いことから、それを原資とする献金も明示的に禁止すべきである。
また、本人が家族または第三者の財産から献金するよう勧誘する行為も禁止すべきである。
最後に、こうした「借入れ等による資金調達の要求の禁止」に違反した場合、勧告等の措置や罰則対象(新法6項、7項)になっているものの取消権の対象(同3項)とされていない。こうした重要財産を原資とする過度な献金は類型的に自由な意思に基づくものとは考え難いものであり、同違反の献金についても取消権が付与されるべきである。
(3)「寄附の取消し」について
準用される消費者契約法の取消権が霊感等の場合追認できるときから3年、意思表示の時から10年とされているが、被害者保護に欠ける。少なくとも民法に準じて意思表示から20年とするか、取消権の付与ではなく無効とする規定を検討すべきである。
(4)「子や配偶者に生じた被害の救済を可能とするための特例」について
債権者代位権構成において、被保全債権を扶養義務等に係る定期金債権に限ることは、特に二世信者にとって余りにも射程が狭く、救済にならない。
扶養義務の限度でしか取り戻せないようでは貯金すらできなくなる可能性もあり、また、本来は公的年金や社会保険など国が用意した社会保障制度に支払われるべき金銭を献金に使ってしまうことに対する歯止めにならない。
そうした歯止めがなければ、信者家族は、介護に必要な資金も取り返せずに介護資金に困窮極まることになるし、老後資金が2000万円必要とも言われる中、そうした財産を確保することも到底できない。
そうした困窮者が増加すれば、最終的には、国民の税金で賄われる生活保護対象者が増えることにもなる。結果として、家庭連合への献金で失われ、取り戻すことのできない介護費用や老後資金を、国民の税金で補填することになるのであり、救済の範囲が不当に狭いことは明らかである。
また、債権者代位権構成を用いているため、信者本人の無資力が要件となるが、それでは信者本人が献金し尽くして経済的に破綻した場合しか取消しができないことになり、狭すぎる。
さらに、信者本人が取消権を有することも要件となるため、家族は、信者本人が困惑させられて禁止規定に該当する寄附をしたことも立証しなければならないが、それ自体かなりハードルが高い。しかも、未成年の二世が親による寄附に対して取消を図ろうとする場合、親権者である親が信者である以上、事実上裁判ができない結果となり、救済が著しく困難である。
3 消費者契約法等の改正案等について
同改正案等の内容は添付資料2の通りである。
(1)不利益を回避するために当該消費者契約を締結することが「必要不可欠」とする要件が厳格に過ぎるなどの点は、新法概要と同様である。
(2)取消権の期間が伸長されたことは被害救済の途を拡げることにはなるものの、脱会後、時間をかけて精神的にも回復して初めて被害救済を求めることができるという実情に鑑みると、追認をすることができる時点から5年は必要であるし、前記の通り、意思表示そのものを無効とすることを検討すべきである。
4 献金等の受領金銭の記録の作成・開示義務規定の創設
家庭連合は、信者に献金等の財産的給付をさせる際に、領収書に相当する書類を交付することがほとんどない。そのため、長年にわたって多額の金銭給付をさせられた信者が、後年、被害を認識した場合であっても、いつ、いくら、何の理由で金銭給付をさせられたのかが不明となり、元信者及び家族が、被害の全体像を把握することができず、その結果、被害救済が著しく困難になるケースが少なくない。新法概要及び消費者契約法等改正案は、上記の点について、被害者救済の視点が欠けている。
したがって、一回あたり、一定額(例えば10万円)以上の献金等の財産的給付を受けた宗教法人ないしこれに類する団体は、信者ごとに、給付を受けた年月日、金額、給付を受けた理由を明記した帳簿を作成し、信者等から請求を受けた場合には、帳簿の開示することを義務とし、これを履行しない場合の罰則規定を設けるべきである。
5 結語
以上から、当連絡会は、上記不足点を解消できる法案の作成と今臨時国会での成立を強く求めるものである。
◆資料-1(pdf)https://www.stopreikan.com/seimei_iken/2022.11.21_seimei_s01.pdf
◆資料-2(pdf)https://www.stopreikan.com/seimei_iken/2022.11.21_seimei_s02.pdf
以上
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文科大臣らに解散命令の請求を求める公開申入書、全国弁連
http://skazuyoshi.exblog.jp/30145520/
2022-10-14T22:58:00+09:00
2022-10-15T17:41:17+09:00
2022-10-15T17:40:20+09:00
kazu1206k
時評
これは、所轄庁の文化庁宗務課が、教団の宗教法人格を剝奪する解散命令の請求を行うことに対する消極的意見を随所で明らかにしているのを受けたもので、当該意見が誤りで、不当であることを指摘しています。
申入書では、教団による多額の献金勧誘行為や正体を隠した伝道活動が依然続いており、「財産権などへの侵害は多数かつ深刻だ」と指摘。会見した代表世話人の山口広弁護士は、「教団が反社会的な活動をしていたと公的にはっきりするのが一番大きい」と解散命令を求める意義を強調。政府の「解散請求は難しい」との態度に対し、「旧統一教会は全国各地の組織にノルマを課し、献金が続いている」として、解散命令の請求の妥当性を訴えています。
解散命令が出れば、宗教団体としての活動は継続できるものの、税制優遇を受けられなくなります。
以下に、公開申入書を紹介します。
公 開 申 入 書
2022年10月11日
文部科学大臣 永岡 桂子 殿
法務大臣 葉梨 康弘 殿
検事総長 甲斐 行夫 殿
全国霊感商法対策弁護士連絡会
代表世話人 弁護士 郷路征記(札幌)
代表世話人 弁護士 中村周而(新潟)
代表世話人 弁護士 河田英正(岡山)
代表世話人 弁護士 平岩敬一(横浜)
代表世話人 弁護士 山口 広(東京)
事務局長 弁護士 川井康雄(東京)
第1 申入れの趣旨
1 文部科学大臣は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対し、速やかに、宗教法人法第81条1項に基づき解散命令を請求されたい。
2 法務大臣は、検察官を通じ、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対し、速やかに、宗教法人法第81条1項に基づき解散命令を請求されたい。
第2 申入れの理由
1 はじめに
世界平和統一家庭連合(以下「旧統一教会」という。)に対し解散請求をすべきである理由は、当連絡会が本年9月16日に採択し、文部科学大臣、法務大臣に対しそれぞれ同月21日付で送付した声明文の、声明の趣旨2項及びその理由のとおりである。
しかしながら、これと前後し、文化庁宗務課から、解散請求を行うことに対する消極的な意見が随所で明らかにされたので、当該意見が誤りであり、不当であることを指摘する必要がある。
また、上記声明後に行われた旧統一教会による動きについても、解散請求との関係で説明を行い、さらに、解散請求については文部科学大臣と検察官とが共同して行うべきであると考えるのでその理由も明らかにする。
2 文化庁宗務課の消極意見について
(1)オウム高裁決定について
文化庁宗務課が「解散請求が難しい」とする理由は、宗教法人法第81条1項の「法令に違反」の解釈について、オウム事件の高裁決定(平成7年12月19日、判例タイムズ894号43頁)が「刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反」することであると判示しているところ、ここでいう「禁止規範又は命令規範」に民法が含まれるのかどうか判然としない、というものである。
しかし、これは旧統一教会に対する解散請求を消極的に解する理由にはならない。
ア 同高裁決定は、たしかに「解散命令制度が設けられた理由及びその目的に照らすと、右規定にいう『宗教法人について』の『法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為』(1号)、『2条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為』(2号前段)とは、宗教法人の代表役員等が法人の名の下において取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を利用してした行為であって、社会通念に照らして、当該宗教法人の行為であるといえるうえ、刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するものであって、しかもそれが著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為、又は宗教法人法2条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱したと認められる行為をいう」としている。
ただし、同判示よりも前の判断を見ると、「同法が81条1項1号及び2号前段において宗教法人に対する解散命令制度を設けたのは、宗教団体が、国家又は他の宗教団体等と対立して武力抗争に及び、あるいは宗教の教義もしくは儀式行事の名の下に詐欺、一夫多妻、麻薬使用等の犯罪や反道徳的・反社会的行動を犯したことがあるという内外の数多くの歴史上明らかな事実に鑑み、同法が宗教団体に法人格を取得する道を開くときは、これにより法人格を取得した宗教団体が、法人格を利用して取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を濫用して、法の定める禁止規範もしくは命令規範に違反し、公共の福祉を害する行為に出る等の犯罪的、反道徳的・反社会的存在に化することがありうるところから、これを防止するための措置及び宗教法人がかかる存在となったときにこれに対処するための措置を設ける必要があるとされ、かかる措置の一つとして、右のような存在となった宗教法人の法人格を剥奪し、その世俗的な財産関係を清算するための制度を設けることが必要不可欠であるとされたからにほかならない」(下線は当職らによる加筆)としている。
すなわち、同決定は、前記判示後半の禁止規範又は命令規範の例示である刑法「等」に対応する内容として、「反道徳的・反社会的行動」「法人格を利用して取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を濫用して、法の定める禁止規範もしくは命令規範に違反し、公共の福祉を害する行為に出る等の犯罪的、反道徳的・反社会的存在」に化したことを挙げているのであり、「法令」を犯罪行為に対応する刑法に限定せず、反道徳的、反社会的行動をも対象として含めるものとしていることが明らかなのである。
そもそも、宗教法人法第81条1項の「法令」が刑法に限定されるのであればそのことが明記されるはずであるから、文言解釈上も、「法令」を狭く解する理由は無いのである。
イ この点、旧統一教会は、その伝道活動や献金勧誘行為について、司法の場で繰り返し民法第709条の不法行為責任または民法第715条の使用者責任を負うとの判決を受けている。そして、京都大学の故潮見佳男教授によれば、民法の「不法行為とは、私的生活関係において他人の権利を侵害する行為であって、法秩序がその権利を保護するために、行為者の権利にも配慮しつつ設定した禁止・命令規範に違反すると評価されるものをいう」とされている(潮見佳男著「不法行為法Ⅰ(第2版)」信山社出版)。また、民法が「実定法規」に該当することも明らかであるから、民法上の不法行為責任及び使用者責任が認められている旧統一教会については、オウム高裁決定の「刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反」したという宗教法人格解散の要件を満たしていることは明白である。
ウ これに加え、旧統一教会の伝道活動や献金勧誘行為が違法であるとされた多くの民事判例の判示は、いずれもこれらの行為が「社会的相当性を逸脱」したものであることを理由として民法上の不法行為に該当する、としている。
少なくとも上記の「社会的相当性逸脱」を理由とする不法行為が社会に対して繰り返されている場合には、「反社会的行動」に該当するものとして「法令に違反し」たものと判断すべきである。
よって、旧統一教会は、前記判示にあるように、「法人格を利用して取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を濫用して、法の定める禁止規範もしくは命令規範に違反し、公共の福祉を害する行為に出る等の犯罪的、反道徳的・反社会的存在に化」していることが明らかである。前記オウム高裁決定はむしろ、旧統一教会の解散を認めるべき根拠とさえ言えるのである。
エ さらに言えば、上記高裁決定の「刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反」との判示部分は、判例として確立したものではない。
同事件の解散請求に対してはオウムからの特別抗告により最高裁の判断が下されているが(最高裁判所第1小法廷決定、平成8年1月30日、判例タイムズ900号160頁)、そこでの判断は、解散命令が内部信者の信教の自由を侵害することになるかに関するものに限られており、前記高裁決定による宗教法人法第81条1項の解釈に関する判断ではない。
オウム事件では解散請求の前提として地下鉄サリン事件の発生、そしてサリン生成による殺人予備罪が既に刑事事件として係属していたという特殊性があり、前記オウム高裁決定はそうした事案であることを踏まえて下された事例判断に過ぎない。
同決定の文言に拘泥し、刑事事件が無い限り解散請求はできないとするのは、被害者となった多くの国民の側の信教の自由、財産権の保護を蔑ろにする不当なものといわざるを得ない。
かかる観点からすると、現在までに解散請求の検討すらしてこなかった文化庁宗務課の対応は極めて問題といわざるを得ない。このような対応は、旧統一教会の被害について初めて国(実質的には宗務課)の不作為の責任を問うた裁判(鳥取地方裁判所米子支部平成21年(ワ)第170号)の和解調書(但し更正前)に記載された「被告国においても、従前の宗務行政の適法性・妥当性に対する疑問の余地がないわけではない」との裁判所の指摘、そして国が「宗教法人法の趣旨目的に則り、適切にその職務を行っていく」と同和解調書で約束した内容を反故にしているも同然の態度であって、猛省すべきである。
オ 文化庁の上記主張・姿勢には、宗教法人に対する税制上の優遇=事実上、国から宗教法人への助成金となっている、という視点が欠如しているとしか思われない。現行法制では宗教法人格と税制上の優遇は区別されていないため、宗教法人格を維持する限り、税制上の優遇も続くことになる。旧統一教会について解散請求を検討する際には、前述の刑事事件の有無といった条文にない要件を加えて解散請求を消極に解するのではなく、「旧統一教会は税制上の優遇措置を受けるに値するか」という観点から積極的な検討を行うべきである。
(2)社会通念に照らし、当該宗教法人の行為であるといえるといえること
ア 前記オウム高裁決定では、問題となる行為が当該宗教法人による行為でない場合でも、社会通念に照らして、当該宗教法人の行為であるといえる場合には、解散請求の要件である「宗教法人について」に該当する、としている。
この点、当連絡会のホームページでは、旧統一教会の責任を認めた28件の民事裁判情報を掲載している。これらのほとんどは、信者による伝道活動、献金勧誘行為に対し、旧統一教会の使用者責任が認められたものであるものの、これほど多数回、長期間に亘り、各地における違法な勧誘行為について使用者責任が認められているということ、そして本来、伝道活動や献金勧誘活動は宗教法人の目的に沿った活動であることに鑑みれば、「社会通念に照らして」(前記オウム高裁決定の判示参照)、いずれも旧統一教会による行為であると判断されるべきである。
また、同掲載のNo27、東京地判平成28年1月13日、東京高判平成28年6月28日は、旧統一教会の組織的不法行為を認定し、民法第709条に基づく法人の不法行為責任を認めている。
イ さらに、2007年から2010年にかけて相次いだ、特定商取引法違反11件、薬事法違反2件の全国的な刑事摘発では、販売目的を告げずに販売店舗に客を連れてきてその不安を殊更煽って商品を購入させたり、高麗人参液の効能を謳って販売したりするなど、手口の共通性が認められる。とりわけ2009年の新世事件の東京地裁判決では「役員も販売員も全員が統一教会信者」「手法が信仰と渾然一体となっているマニュアルや講義」「統一教会の信者を増やすことをも目的として違法な手段を伴う印鑑販売を行っていた」「相当高度な組織性が認められる継続的犯行の一環」などと認定されている。
ウ これに加え、最近までに当連絡会に寄せられた旧統一教会の内部資料においても、旧統一教会が全国各地の地方組織に献金ノルマを課し、同様の手口、説得方法により過大な献金を搾取し続けたりしていた実態が明らかとなっている。こうしたノルマを達成するために全国で手口を共通にした正体隠し伝道活動、献金勧誘行為がなされていることからすると、これらの行為が旧統一教会による行為と評価されるべきであることは明らかである。
エ 通常、宗教と信者の間に雇用関係はないので、宗教団体は信者の違法行為について使用者責任を負わない。統一協会の場合は、ア、ウで述べたとおり、統一協会の指揮命令下において違法行為を行っていたことまで認定されているから使用者責任を負うものであり、判決の結論が統一協会の不法行為責任が使用者責任を理由とすることは宗教法人上の解散命令を否定する理由にはならない。
3 著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為であること
(1)被害の程度が重大であること
ア 信教の自由の侵害
旧統一教会の最大の問題は、勧誘されて信者になった方々の信教の自由が侵害されている、ということである。少なくとも、1980年代に霊感商法の問題が広く報道されて社会に注目されて以降、統一教会の名称を予め知りながら入会した信者というのは、いたとしても極めて少数であったはずである(旧統一教会自身が、そうした社会的な悪評を理由に、正体隠しの伝道をしていたことを認めている。)。逆に言えば、大多数の信者は、旧統一教会による勧誘であったことを知らされないまま勧誘され、それが旧統一教会の教義であることを知らされないままその教義を事実だとして植え付けられて信者にさせられたもの、ということになる。
信仰はその人の人生にとって極めて大きな意味を持つ。まして、それが旧統一教会のように、一旦入信してしまうと、万物復帰の教義の下で多額の財産を収奪されたり、教祖が定めた相手と結婚させられたり、新たな被害者を生み出す伝道活動に従事させられたりといった活動に従事させられる場合、そして脱会すると地獄に落ちるというような内容を教えこまれるため自らの判断で脱会することが極めて困難である実情に鑑みると、その人の人生に与える影響は計り知れないものとなる。
そうすると、そのような宗教に入信するかどうかに際しては、団体名は勿論のこと、それが宗教団体の勧誘であることや入信後の中核的活動を予め説明されることはその人の信教の自由を保護する上で極めて重要なものとなる。その説明がされず、あるいは意図的に嘘の説明がされて信仰を持たされたということは、その人の人生にとって致命的ともいうべき重大な侵害を生み出す信教の自由への侵害があったことになるし、そのようにして持たされた信仰が、その後の多額な財産被害を含め多くの被害を生み出しているのである。
こうした正体を隠した伝道活動が違法であることは、平成12年9月14日広島高裁岡山支部判決(民事裁判情報No8)、平成13年6月29日札幌地裁判決(同No10)、平成14年8月21日東京地裁判決(同No12)、平成14年10月28日新潟地裁判決(同No14)、平成15年5月21日大阪地裁判決(同No15)、そして平成24年3月29日、平成26年3月24日札幌地裁判決(同No24、26)と、長期間に亘り全国各地で認められている。なお、資料1にある通り、こうした正体隠し伝道は、旧統一教会の2009年コンプライアンス宣言以降も続けられているのである。
このような重大な人権侵害が長期間に亘り全国各地で多数人に対し行われてきたことは、旧統一教会が「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」をしてきたものと認められる。
イ 財産権の侵害
旧統一教会による違法な献金勧誘行為、物品購入勧誘行為に対する違法性が認められた主な判決としては平成6年5月27日福岡地裁判決(民事裁判情報No1)、平成9年10月24日東京地裁判決(同No2)、平成9年4月16日奈良地裁判決(同No3)、平成8年1月23日高松地裁判決(同No4)、平成11年3月23日仙台地裁判決(同No5)、平成11年12月16日福岡地裁判決(同No6)、平成12年4月24日東京地裁判決(同No7)、平成12年9月14日広島高裁岡山支部判決(同No8)、平成13年11月30日大阪地裁判決(同No11)、平成14年10月25日京都地裁判決(同No13)、平成15年6月26日大阪地裁判決(同No16)、平成18年10月3日東京地裁判決(同No17)、平成19年5月29日東京地裁判決(同No18)、平成20年1月15日東京地裁判決(同No19)、平成21年12月24日東京地裁判決(同No20)、平成22年3月11日福岡地裁判決(同No21)、平成22年12月15日東京地裁判決(同No22)、平成23年2月28日福岡地裁判決(同No23)、平成27年3月26日東京高裁判決(同No25)、平成28年1月13日東京地裁判決(同No27)、令和2年2月28日東京地裁判決(同No28)、がある。
これらの裁判で認められた損害額だけでも合計15億円を超えるが、訴訟提起したものの和解で解決した事例での和解金は資料2の通り114億円以上に上る。さらに、この他に、交渉で和解して解決した事例も甚大な量、金額に上る(ただし交渉による和解の統計データは無い)。
旧統一教会の被害者は、信者であった際に「脱会すると地獄に落ちて永遠に苦しむことになる」などと信じ込まされていることから、脱会した後も、その恐怖が抜けきらなかったり、家族にさえも相談できなかったりするケースも多く、弁護士に相談して献金等の返還請求をするのはごく一部に限られる。
そうした実情も加味すると、前記の多額の被害金額でさえも、旧統一教会の被害の一部に過ぎないということになる。
なお、旧統一教会の、日本から韓国への送金実績表という内部資料によれば、1999年は653億円、2000年は640億円、2001年は322億円、2002年は520億円、2003年は606億円、2004年は669億円、2005年は668億円、2006年は469億円、2007年は750億円、2008年は600億円、2009年は585億円、2010年は575億円、2011年は594億円とされている(但し2007、2008年は推定、とされている)。これら巨額の金員のほとんどが日本人からの、違法な献金勧誘や物品販売勧誘で集められた金員であることが容易に推認されるのである。
このような莫大な金額が日本人から搾取されていた点だけからしても、日本人の財産権の侵害が重大であることは明白であって、旧統一教会が「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」をしてきたものと認められる。
(2)長期的に亘り継続されてきたこと
上記のような信教の自由、財産権に対する重大な侵害行為は長年に亘り継続されてきたものである。前記の通り、これらの行為を違法と断じた裁判例が多数存在するが、伝道活動の違法性は平成12年9月14日広島高裁岡山支部判決(民事裁判情報No8)で最初に認められたにも拘わらず、旧統一教会は、以後少なくとも約16年に亘り、正体隠しの伝道を継続してきた。
また、献金勧誘行為の違法性は平成6年5月27日福岡地裁判決(民事裁判情報No1)で最初に認められたが、旧統一教会はそれ以降少なくとも約22年間に亘り、同様の献金勧誘を続けているのである。
(3)小括
以上の通り、旧統一教会による信教の自由、財産権に対する侵害の程度は全国に及び多数かつ深刻である。しかも、これを長期間継続することで、多くの国民の信教の自由、財産権を侵害してきたのであって、旧統一教会が「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」をしてきたと優に認められる。
4 今後の改善が見込まれないこと
(1)旧統一教会は、2009年に「コンプライアンス宣言」を行い、また、2022年9月21日以降「教会改革」と称し、上記コンプライアンス宣言を徹底した上、今後、裁判で問題とされたような献金勧誘はせず、伝道活動では家庭連合の名称を明示し、被害を訴える方に誠意を尽くして対応する、などと主張している。
かかる主張は、解散請求があった際に、「解散事由にかかる事情変更があった」と言うための布石であろうと考えられるが、以下の通り、旧統一教会のこれらの主張は到底信用出来ない。
(2)韓国本部の指示に対する言及が無いこと
旧統一教会の献金集めや伝道は、現在の教団総裁である韓鶴子及びその周辺幹部からの指示によってなされている。コンプライアンス宣言や教会改革のとおりの方針が仮に実施された場合、従前のように多額の献金を日本の組織で集めて韓国に送ることができないことは明らかである。2009年の「コンプライアンス宣言」の際も信者の生活状況に比して過大な献金をさせないことを各教会指導者に徹底させるとの指示がなされたにもかかわらず、韓国への送金指示は変わらず、上記のとおり、2009年以降も従前とほぼ変わらない送金がなされてきたのである。このような経緯や、その資金が世界各国での活動資金となっているという実態からして、韓国本部が韓国への送金指示を止めたり、大幅に減額したりすることは到底考えられない。
しかも、アベルカインの教義上、日本は韓国本部からの指示に逆らえないのであるから、上記のような主張をするのであれば、韓国本部としての方針変更が明確にされない限り信用することはできない。
(3)過去の被害に対する対応
上記の通り、過去の被害についての旧統一教会の対応は、被害の声が上がってはじめて対応する、というものである。旧統一教会は、2009年の「コンプライアンス宣言」以降も、少なくも資料1(特に53番以降)にあるように、正体隠しの伝道や過大な献金勧誘について損害賠償を求める通知書を多数受けて来たにもかかわらず、本年に至るまで伝道や献金勧誘のあり方について自ら顧みることはなかったのである。
この点、「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議における「旧統一教会」問題合同電話相談室には、本年9月5日から22日までの僅か18日の間に、旧統一教会の金銭的トラブルの相談が919件も寄せられており、現在も同相談が継続していることから、旧統一教会は現在も多数の金銭トラブルを抱えていることになる。
もとより、前記の通り、旧統一教会の伝道勧誘や献金勧誘の違法性を認める判決が長期間に亘り各地で下されていることからして、現役信者、あるいは元信者で被害の声を上げていない者であっても、実際にはその多くが正体隠し伝道や違法な献金勧誘をされていた可能性が高いのであるから、旧統一教会として取るべきなのは「被害の声があれば対応する」という臭い物に蓋をするという対応ではなく、積極的に、現在の信者、過去に信者であった者に対し、正体隠しの伝道や先祖因縁等を用いて不安を煽った献金実態の有無を調査し、その結果を公表する、という対応である。
この点は、当連絡会の本年9月16日付声明でも明示したところであり、当連絡会は同声明を同月22日に旧統一教会へ送付し、同年10月7日までに、同要求に応じるかどうかを求めているが、期限を過ぎた現在でも回答は無いままである。
以上の事実からすれば、旧統一教会は過去の被害に対する積極的な調査を行う意向を有していないことが明らかであり、このような姿勢は到底、法令遵守(コンプライアンス)に値するものとはいえない。
(4)発表の時期
前記コンプライアンス宣言が出された時期は、2009年3月のことである。
既に述べた通り、伝道活動の違法性は2000(平成12)年9月14日広島高裁岡山支部判決(民事裁判情報No8)で最初に認められ、献金勧誘の違法性は1994(平成6)年5月27日福岡地裁判決(民事裁判情報No1)で最初に認められた。しかし、旧統一教会はこうした司法の判断に従わず、少なくとも上記コンプライアンス宣言までの期間、違法な伝道活動、献金勧誘行為を繰り返していた。
コンプライアンス宣言は、2007年から相次いだ刑事摘発に危機感を持った旧統一教会が、それ以上の刑事摘発を抑えるために発表した、言わば刑事事件対策に過ぎないのである。
同じく、今回の「教会改革」も、旧統一教会の被害実態に対し社会が注目し、法規制や解散請求の声が上がってきたため、それを回避する目的で出されたものに過ぎないのである。
内省的な経緯で発せられたものでなく、上記の通り外部要因により発せられたものに過ぎず、「教会改革」なるものは全く信用性が無い。
(5)内部に向けられた内容
さらに、上記「教会改革」は、過去の行いの過ちを認めて真摯に反省したものでは全くないことが、以下の事実から明らかである。
すなわち、旧統一教会機関誌である「世界家庭」2022年10月号の5頁で、旧統一教会の現教祖である韓鶴子は、本年8月18日に韓国・清平で行われた「ビジョン2027神統一韓国安着勝利~在韓日本宣教師会40周年記念特別集会」において、日本国内の旧統一教会批判の状況について「陣痛」と表現した上で「恐れてはいけません。強く大胆に進み出なさい。必ずや陣痛は過ぎ去ります。」などと、過去の違法行為に対する反省が全く見られない発言をしたことが掲載されている。同11頁では、同日行われた「2022世界平和宗教人連合総会」で日本の統一教会の幹部信者である近藤徳茂氏が、日本の状況について「マスコミは、家庭連合批判を繰り広げています。家庭連合を悪と決め付け、家庭連合に対する献金を即、被害と決めつけるような報道がまん延し、国民に無神論的観点からの批判を刷り込むような報道の毎日です。家庭連合関連の団体等に祝電を送った議員を次々とつるし上げて反省の弁を強いる魔女狩り的な報道が繰り返され、はなはだしくは、安倍晋三元総理が『シンクタンク2022』にビデオメッセージを送ったこと自体も問題視しています」と述べたことが掲載されている。
さらに、同22頁以下では、田中富広会長が「安倍晋三元首相が銃弾に倒れて以来、容疑者の犯行動機やその背景が検証・解明されないままに、メディアの論点は完全に当法人のバッシングにシフトされました。神と霊界を否定する共産主義思想を背景にした弁護士やコメンテーター、さらには人権派の仮面をかぶって登場する人たちに、今やメディア界は完全に踊らされています。」「中立的な識者は、メディアの論点が過激に誘導されることに危惧を感じ、当法人への宗教差別であり、信教の自由を軽んじる愚行であると論陣を張り、現代の『魔女狩り』とまで揶揄しています。」「このたびのメディア報道は、私たちを『反社会的団体』『カルト団体』であると断定し、当法人のみならず、友好団体である全ての関連団体を含め、『完全断絶」を図っています。正に現代の魔女狩りと言わざるをえません。」と述べたと掲載されている。
こうした内部信者向けの幹部らの「つるし上げ」「バッシング」「共産主義思想を背景にした弁護士やコメンテーター」等の発言は、前記コンプライアンス宣言や教会改革が、過去の自分たちの行為(しかも裁判で違法とされたもの)の誤りを認めたものではなく、真摯に反省してこれを抜本的に改めることにしたものでもない。現在上がっている世論の批判や、統一教会に対する規制や解散請求の声を弱めようとするためのものでしかないことを示すものである。
5 検察官が共同で行うべきであることについて
(1)上記述べた内、特に2007年~2010年にかけての刑事摘発の資料は、旧統一教会の組織性、悪質性を裏付ける上で重要な資料になるところ、これらの資料は宗務課には存在しないものと思われる。
(2)また、これらの資料を分析し、手口の共通性や、旧統一教会の組織性を立証するためには、検察官の目が欠かせない。
特に、当連絡会のホームページ掲載の刑事裁判情報No26の新世事件は詳細な内部資料を基に、「本件犯行は相当高度な組織性が認められる継続的犯行の一環」と認定しており、そうした組織性が旧統一教会の教義や教団としての目的に由来することを判断する上で重要な事件である。
また、No31の町田ポラリス事件は、被害者を直接勧誘した販売員だけが逮捕され、罰金の有罪判決を受けたが、その後同被害者に対し、夫の癌の原因は先祖の因縁のせいである、因縁解放が必要などと働きかけ、その後約800万円余りの被害を生み出した婦人部長には何らの処罰も無かったという、極めて不可解な事件処理がなされており、改めて旧統一教会の関与を含めた事件全容を解明する必要がある。
かかる趣旨から本申入書を念のため検事総長宛にも送付する。
6 立法府(国会)が求めている所轄庁の職責
立法府(国会)は、平成7年に宗教法人法を改正し(宗教法人法の一部を改正する法律(平成7年法律第134号、平成7年12月15日公布、平成8年9月15日全面施行)、宗教法人について法第81条(解散命令の請求)の事由に該当する「疑い」がある場合には、所轄庁が報告徴収、質問できる権限を与えた(法第79条の2)。
この改正の立法事実には、旧統一教会による不法行為も含まれていた。改正に向けて開かれた参議院宗教法人法等に関する特別委員会において、大臣が「霊感商法」と明言していたほか(平成7年11月29日)、当連絡会山口廣弁護士を招致した上で詳細な参考人質疑も実施されている(同年12月4日)。このように、立法府(国会)は、旧統一教会による不法行為への対応も含めて、宗教法人法が改正されたのである。
しかし、冒頭のとおり、文化庁宗務課は、自ら何も調査をしないまま、解散請求は難しいなどという見解を述べている。立法府(国会)が求めた職責を全く果たしていないというほかない。
7 結語
以上から、当連絡会は、文部科学大臣と法務大臣に対し、旧統一教会に対する解散請求を速やかに行うよう求めるものである。
なお、第6回霊感商法等の悪質商法への対策検討会の資料によれば、令和4年度における文化庁宗務課の定員は8名、予算は約4700万円とされている。このような陣容では、解散請求の準備がおぼつかないことが懸念されるので、必要に応じ、人材、予算双方の拡充を速やかに図られたい。
以上
添付資料
資料1 コンプライアンス宣言 前後の被害状況(2022/9/13時点作成)
https://www.stopreikan.com/kogi_moshiire/shiryo_20221011_1.pdf
資料2 霊感商法~既に解決した主な和解例(2018.3.1現在)
https://www.stopreikan.com/kogi_moshiire/shiryo_20221011_2.pdf
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自己情報コントロール権を確保したデジタル社会の制度設計を求める決議、日弁連の人権擁護大会
http://skazuyoshi.exblog.jp/30136816/
2022-10-05T16:09:00+09:00
2022-10-05T16:09:08+09:00
2022-10-05T16:09:08+09:00
kazu1206k
時評
デジタル社会において人間の自律性と民主主義を守るため、自己情報コントロール権を確保したデジタル社会の制度設計を求める決議
当連合会は、2010年の第53回人権擁護大会において、「デジタル社会における便利さとプライバシー~税・社会保障共通番号制、ライフログ、電子マネー~」と題するシンポジウムを開催した。私たちの行動の足跡がデジタル社会に残ってしまうライフログの実情に迫り、これを利用した行動ターゲティング広告の問題点を指摘し、また当時政府が創設を目指していた共通番号制度の問題点を明らかにしながら、デジタル社会における自己情報コントロール権の実効的な保障を提言した。
それから12年が経過し、スマートフォンが普及して、ツイッター(Twitter)、フェイスブック(Facebook)、インスタグラム(Instagram)などSNSを利用したり、ユーチューブ(YouTube)等のデジタル動画を視聴したりする頻度が高まるなど、市民の行動は変容を遂げている。行動ターゲティング広告の有効性が周知のものとなり、企業からすると、少ない宣伝コストで従前と同様の売上げが得られるようになっている。
他方で、デジタルプラットフォーマーは、利用者が入力した検索キーワード、閲覧した記事やユーチューブチャンネルの履歴、スマートフォンのGPS機能をオンにしていることにより蓄積されていく移動履歴など、当の本人では到底覚えておくことの不可能な膨大な情報を記録し、個人の将来の行動を予測するために活用し、収益を上げている。デジタル社会での行動履歴は丸裸と言っても過言ではないほどのプロファイリングに供され、プライバシーの危機を招いている。
私たち自身が、自律的な判断をするために必要な情報アクセスが確保されないといった問題もある。自分と似た興味・関心・意見を持つ利用者が集まるコミュニティが自然と形成され、自分と似た意見ばかりに触れてしまうようになる「エコーチェンバー」現象、自分好みの情報以外の情報が自動的にはじかれてしまう「フィルターバブル」などにより、偏った意見や真実ではない意見に囲まれてしまい、自然な意思形成ができないこともある。2016年のアメリカ大統領選挙で、プロファイリングに基づき分類したグループごとにきめ細やかな投票行動の誘導を行って、市民の投票行動に意図的に影響を与えた疑いのあるケンブリッジ・アナリティカ事件も明るみに出ている。一人一人の市民が自己決定するのに十分な情報へのアクセスを確保し、民主主義社会に参加できる制度が必要である。
このような中、2021年9月にデジタル庁が発足し、日本の「デジタル社会化」の司令塔として強力な権限を発揮しようとしている。その政策は、データの徹底的な利活用を図ることを目指し、個人番号カードの全国民への普及、個人番号(マイナンバー)の利活用促進を中心とした計画となっている。個人番号は、当初の税・社会保障の目的とは関連性の乏しい国家行政事務に利用範囲が広がり、個人番号カードを通じた民間事業者におけるデータベースの作成には制限がない。デジタル改革関連6法により個人情報保護法制も改正され、地方自治体による住民のプライバシー保護機能の低下が懸念される。
さらに、日本では、警察による捜査を始めとした顔認証システムの活用が、法律によるルールの策定もなく無限定に広がっている。中国では、約6億台の顔認証機能付きの街頭監視カメラにより、住民全員の個人情報データベースの検索がなされ、信用スコア(個人にひも付く様々なデータを基にAIが個人の信用力を評価し、点数化したもの)と連動して人々の行動を監視しているが、このままでは日本も類似した社会となることが危惧される。十分なプライバシーへの配慮を行わないままに顔認証システムを実用化することには重大な問題がある。
情報主体である私たち主権者は、行政機関や民間事業者によってデータを収集・分析・利活用されるただの客体に成り下がり、一人一人の市民の自己決定や自己実現が妨げられ、市民社会全体が萎縮するおそれすらある。
デジタル社会の制度設計にはあらかじめプライバシー保護措置を組み込んでおくことが必要である。その制度設計に市民自身が参加し、その意見を反映させることができなければ、事後的にプライバシー保護を図ることは困難である。
当連合会は、上記の第53回人権擁護大会において、「『高度情報通信ネットワーク社会』におけるプライバシー権保障システムの実現を求める決議」を採択したところであるが、その後、デジタルプラットフォーマーの活動が著しく広がったこと、政府の主導により、官民を横断するデータの利活用が強く推進されていることを踏まえ、以下のとおり、国に対しデジタル社会において人間の自律性と民主主義を守り、プライバシー権・自己情報コントロール権を確保するための法制度や原則の確立を求める。
1 デジタルプラットフォーマー(プロバイダ、通信事業者を含む)に対する自己情報コントロール権を確立し、民主主義の基盤を崩さないようにするため、以下の内容を含む法律を制定すべきである。
(1)クッキー(Cookie)を始めとした、市民のデジタル社会における行動履歴を同定し得る情報については、事前同意を要件として取得するものとし、同意が得られない場合にもサービスから排除しないこと。
(2)収集している個人情報のみならず、個人識別可能性のある情報についても、その種類、利用範囲を明示し、利用結果、第三者提供の結果についての公開を図ること。
(3)利用者に対して、プロファイリングされない権利、削除権、データポータビリティ権等、GDPR(一般データ保護規則)で規定される諸権利を保障すること。
(4)収集した情報に対して適用されるAIのアルゴリズム(ディープラーニング後のものも含む)及びその適用後のデータ処理について、少なくともその基本構造を公開し、説明すること。
(5)フェイクニュースに対する自主規制ルールの設定と実践を行うとともに、その結果を公開すること。
(6)信頼性の高い情報、多様な意見との接点の確保が図られるためのアルゴリズムの設定、実践を行うとともに、その結果を公開すること。
2 デジタル社会における市民のプライバシー権・自己情報コントロール権の保障を実質化するため、以下の点を現行法の改正又は新たな法律の制定によって具体化すべきである。
(1)個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)について、以下の諸点を改正し、プライバシー保護をGDPRと同水準に引き上げるべきである。
① 収集の必要性・相当性のない個人情報を処理しないこと。
② 他の情報と組み合わせれば個人識別が可能となり得るような個人識別可能性のある情報についても、保護の対象とすること。
③ プロファイリングされない権利、削除権、データポータビリティ権等を保障すること。
④ 個人情報保護委員会について、プライバシー保護に専念する機関とするようその存在目的を設定し直し、調査権限等を充実させて、プライバシー保護機能を強化すること。
(2)公権力が、自ら又は民間事業者を利用して、市民のデジタルデータを網羅的に収集・検索する方法で監視する行為を禁止すること。
(3)個人番号や個人番号カードが、行政機関や民間事業者による情報監視の基盤とならないよう、個人番号制度は抜本的な見直しを行うか、個人番号及びマイキーID等といった個人識別符号の利用範囲の大幅な限定等を行うこと。
(4)既存の政府の情報収集機関のほか、デジタル庁や警察庁サイバー局の設置等により、公権力による個人情報の収集管理が強化されている状況において、情報機関の監視権限とその行使について、厳格な制限を定め、独立した第三者機関による監督を制度化すること。
(5)顔認証システムについて、法律により、官民を問わずその利用を原則禁止とした上で、厳格な設置・運用条件を設定するとともに、その基礎データを供給し得る監視カメラについても厳格な設置・運用条件等に関する要件を明示し、さらに個人情報保護委員会の管理監督下に置くこと。
3 日本のデジタル社会の推進に当たっては、市民のプライバシー権・自己情報コントロール権の保障を実質化するとともに、デジタル政策を民主化するため、政府は、以下の諸点を遵守すべきである。
(1)市民のプライバシーを最大限保障することを大前提として、同意原則を十分に尊重し、不同意者に不利益を与えないように制度を設計し、その範囲で利便性や効率化等を図ること。
(2)プライバシー影響評価を事前に行った上でその結果を公表し、市民の意見を反映し、あらかじめプライバシー保護に配慮した制度設計を行うこと(プライバシー・バイ・デザイン)。
(3)行政の効率化を最上位の目標とすることなく、必要なシステムの設計においても、最大限に地方自治を尊重したものとし、また地方自治体レベルでの設計も許容することとし、かつ意思決定に際しては地方自治体の意見を十分に聴取して、これを反映させること。
(4)市民提案型の制度を採用するとともに、それが実現されるまでの間においても、制度設計について、行政機関、業界側だけでなく、消費者側、市民側の代表者を少なくとも半数程度は参加させ、その意見を反映させること。
(5)オンライン上で生成される個人情報の蓄積・管理、運用に関して、市民自らが個人データの秘匿や共有をコントロールできる仕組みを確立すること。
当連合会は、デジタル社会において人間の自律性と民主主義を守る決意である。
以上のとおり決議する。
2022年(令和4年)9月30日
日本弁護士連合会
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「故安倍晋三元内閣総理大臣の『国葬』に反対する会長声明」、第二東京弁護士会
http://skazuyoshi.exblog.jp/30090507/
2022-09-04T21:14:00+09:00
2022-09-05T07:09:11+09:00
2022-09-05T07:05:36+09:00
kazu1206k
時評
・国葬令は廃止されていて、法的な根拠がない。
・法的な根拠も判断の基準もなく閣議決定によって行うということは、時の内閣が特定の政治家の功績が偉大なものかどうかを専断することであって、個人の尊厳、法の下の平等を定めている日本国憲法の基本原理にはそぐわない。
・政治家の功績については、国民の間で評価が異なるのは自然なことであり、「国葬」を行うことは、後述のとおり、弔意の事実上の強制を伴いかねず、思想及び良心の自由(憲法第19条)を侵害するおそれがある。
・国葬令失効後、故吉田元首相を除き、「国葬」を行わず、新たな法律を定めることもしなかったのは、そのような事情を考えるならば適切であった。
・内閣府設置法第4条第3項第33号に、内閣府の所掌事務として国の儀式に関する事務に関することが明記されていることから、閣議決定によって国の儀式である「国葬」を行うことができるなどとの政府の説明には根拠がない。同法は、行政組織たる内閣府の所掌事務を定めたものにすぎず、国家の功労者かどうかを内閣が判断して「国葬」を実施することを根拠づけるものとはいえない。
・仮にこの規定が、前述のような経緯をもち日本国憲法の基本原理や国民の基本的人権の尊重に抵触しうるような問題をはらむ「国葬」の根拠となるものであるならば、その制定にあたっては国会において慎重な議論が必要とされるところ、内閣府設置法制定時の国会審議において、この規定により閣議決定による国葬を行うことができることになるという説明はされておらず、実質的な審議はなされていない。
・「国葬」が特定の政治家個人に対する敬意や弔意の強制につながる。
故安倍晋三元内閣総理大臣の「国葬」に反対する会長声明
2022年(令和4年)8月31日
第二東京弁護士会 会長 菅沼 友子
22(声)第7号
政府は、本年7月22日の閣議により、「故安倍晋三国葬儀」を本年9月27日に日本武道館で行うこと、岸田文雄首相が葬儀委員長を務め、必要な経費は国費とし、一般予備費を使用することなどを決定しました。
当会は、本年7月12日、安倍元首相の銃撃事件について、選挙応援演説中の政治家に対し銃器を使用して生命を奪うことは、選挙活動における言論活動を暴力をもって封殺するものであり断じて許されない旨の会長談話を発表しています。
しかしながら、当会は、故安倍元首相について、従来行われてきた内閣と自由民主党の合同葬などではなく「国葬」として行うことについては、以下のとおり疑義と懸念があり、反対の意思を表明するものです。
第一の疑義としては、国家に対する功労者としての「国葬」については、法的根拠がなく、日本国憲法の理念にも適合しないという点です。
戦前は、天皇の勅令である「国葬令」に基づき、皇族・王皇族のほか、「国家に偉功のある者」を国葬にすることが行われてきました。しかし、日本国憲法施行に伴い国会の審議を経て法律で定めるべき事項に関する勅令は失効するとされたことにより、「国葬令」は1947年12月末日の経過により失効しており*1、現在、法的根拠を有する国葬は、皇室典範による大喪の礼のみです。
1967年10月の故吉田茂元首相の「国葬」は、閣議決定により行われましたが、当時の大蔵大臣も、国葬令が失効している以上、国葬について法令の根拠がないことを認めています*2 。その後、佐藤榮作元首相の死去の際は、当時の中曽根康弘自民党幹事長が、「国葬については法律にもなく、法制局など法律家の意見も聞きみんなで総合判断した結果、国民葬ということになった」と説明し、内閣・自民党・国民有志の主催による「国民葬」として行われ*3、以後、大平正芳元首相から、岸信介、三木武夫、福田赳夫、小渕恵三、鈴木善幸、橋本龍太郎、宮澤喜一、中曽根康弘元首相に至るまでは、内閣・自民党合同葬として執り行われてきました。
戦前の「国家に偉功のある者」に対する国葬は、元首相や元海軍大将などに対し「特旨(天皇の思し召し)により」「賜う」ものとして行われてきました。それを法的な根拠も判断の基準もなく閣議決定によって行うということは、時の内閣が特定の政治家の功績が偉大なものかどうかを専断することであって、個人の尊厳、法の下の平等を定めている日本国憲法の基本原理にはそぐわないものです。また、政治家の功績については、国民の間で評価が異なるのは自然なことであり、「国葬」を行うことは、後述のとおり、弔意の事実上の強制を伴いかねず、思想及び良心の自由(憲法第19条)を侵害するおそれがあります。国葬令失効後、故吉田元首相を除き、「国葬」を行わず、新たな法律を定めることもしなかったのは、そのような事情を考えるならば適切であったといえます。 なお、政府は、内閣府設置法第4条第3項第33号に、内閣府の所掌事務として国の儀式に関する事務に関することが明記されていることから、閣議決定によって国の儀式である「国葬」を行うことができるなどと説明しています。しかし、同法は、行政組織たる内閣府の所掌事務を定めたものにすぎず、国家の功労者かどうかを内閣が判断して「国葬」を実施することを根拠づけるものとはいえません。仮にこの規定が、前述のような経緯をもち日本国憲法の基本原理や国民の基本的人権の尊重に抵触しうるような問題をはらむ「国葬」の根拠となるものであるならば、その制定にあたっては国会において慎重な議論が必要とされるところ、内閣府設置法制定時の国会審議において、この規定により閣議決定による国葬を行うことができることになるという説明はされておらず、実質的な審議はなされておりません。この点に関する政府の説明には重大な疑義があります。
第二に、「国葬」が特定の政治家個人に対する敬意や弔意の強制につながるという懸念です。
故吉田元首相の国葬に際しては、各省庁に対して、弔旗掲揚、黙祷の実施、職員の半休、公の行事、儀式その他歌舞音曲を伴う行事を控えるとの措置がなされ、各公署、学校、会社その他一般においても同様の方法により哀悼の意を表するよう協力が要望されました。
公立学校の入学式や卒業式における、国旗掲揚の下での国家斉唱に起立しなかったことを理由にする戒告処分が適法とされた最高裁判決(第3小法廷、平成23年6月21日)の多数意見においても、自己の歴史観や世界観と相違する行動を求められることは、思想及び良心の自由についての間接的な制約となりうることを肯定しています*4。同様に、特定の政治家に対する「敬意と弔意」を表明するかどうかは、国民の内心の自由に深く関わる問題です。
今回の「国葬」について、松野官房長官は、国民一人一人に喪に服することを求めるものではないと記者会見で説明し、また、本年8月26日には、地方公共団体や教育委員会等に弔旗掲揚等を求める閣議了解は見送る方針であると述べています。
しかし、岸田首相が本年8月6日の記者会見において述べたように、今回の国葬が「わが国としても、敬意と弔意を国全体として表す国の公式行事として開催する」ものである以上、官公署に限らず、国民各層に対しても、「自主的」の名の下に、事実上の弔意強制が様々な形でなされることが強く懸念されます。
以上の理由から、当会は、現在行われようとしている、故安倍元首相の国葬について反対の意思を表明するものです。
*1 日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律第1条。
*2 1968年5月9日、第58回国会衆議院決算委員会において、水田三喜男大蔵大臣が「国葬儀につきましては、御承知のように法令の根拠はございません。」と答弁。
*3 読売新聞昭和50年6月3日夕刊。なお、佐藤元首相に関しては、在任期間7年8か月で当時最長、戦後の経済発展やノーベル平和賞受賞、大勲位菊花大綬章の生前受賞(安倍元首相は没後受賞)などの点で吉田元首相と同等であると、自民党等では評価していました。
*4 この問題に関し当会は、2005年(平成17年)2月28日「東京都教育委員会の「国旗掲揚・国歌斉唱」の通達等についての会長声明」、2006年(平成18年) 9月27日「日の丸・君が代」強制予防訴訟東京地裁判決を支持する会長声明、2013年(平成25年)8月23日「国旗国歌の強制の問題に関わる教科書採択への介入に反対する会長声明」を発しています。
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顔認証システムの法的規制を、日弁連意見書
http://skazuyoshi.exblog.jp/29742039/
2021-11-08T22:44:00+09:00
2021-11-09T13:30:43+09:00
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kazu1206k
時評
日弁連は、2012年に「監視カメラに対する法的規制に関する意見書」を公表して、監視カメラの設置や運用に関し、プライバシー権や移動の自由、表現の自由、思想信条の自由等が不当に侵害されないよう、基準や要件を定めた法律を制定し規制する必要があること、特に、官民を問わず、データベースとの自動照合による個人識別機能を使用することの禁止等を提言。2016年の意見書でも、監視カメラ等で撮影された被写体の顔画像データから顔の特徴等を数値化した顔認証データを生成し、あらかじめ顔認証データを登録したデータベースと照合する顔認証システムについて、警察が利用するには法律の根拠が必要であることを指摘してきました。
しかし、現状は、顔認証データベースやこれを利用して照合する顔認証システムも、高度のプライバシー侵害性等に配慮する法律は制定されておらず、 警察による顔認証データベースや顔認証システムの利用が進み、さらに他の行政機関や民間にまで拡大している状況であることから、意見書を提出したものです。
意見書の趣旨は、以下のとおりです。
1 不特定多数者に対する顔認証システムの利用については、行政部門と民間等とを問わず、市民のプライバシー権等が不当に侵害されないように、国は、①明示の同意のない顔認証データベース等の作成及び顔認証システムの利用の原則禁止、②例外的に行政機関や民間事業者等が顔認証データベース等を作成し顔認証システムを利用することができる場合の厳格な条件、③個人情報保護委員会による実効的な監督、④顔認証システムに関する基本情報の公表、⑤誤登録されている可能性のある対象者の権利保護などを盛り込んだ法律を制定するなど、厳格な規制を行うべきである。
2 前項以外の場合、すなわち特定人に対する顔認証システムについても、また、顔認証データベースを作成しない記録媒体中の顔認証データと特定の照合希望者とのその場限りの照合についても、行政部門と民間部門とを問わず、市民のプライバシー権等が不当に侵害されないように、その利用は、以下の要件を満たす場合に限定されるべきである。
① それを許容する明確な法律が存在すること
② 同意していない者に対し、顔認証システムが適用されないこと
③ 同意に任意性があり、同意しなくても他の方法を選べることなどにより不利益を受けないこと
④ 設置者が、個人情報保護委員会に、顔認証システムを設置利用していることを届け出ること
3 少なくとも以下の施策が中止されなければならない。
① 重大組織犯罪の捜査の場合に限定した法律を定めることなく実施される、警察による顔認証システムを利用した捜査
② 医療機関受付での個人番号カードを用いた顔認証システムの利用
③ 個人番号カードを健康保険証、運転免許証等と紐付けることにより顔認証データの利用を著しく拡大させ、さらに顔認証システムの利用範囲を拡大させること
そして、行政一般について、顔写真による本人確認で用が足りるにもかかわらず、ことさらに顔認証データの収集及び照合利用をすることは、その取扱いの必要性がないから許されるべきではない。
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